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3章

5話 回りましょう

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旦那様に挨拶を終え,テントの外へと出ると僕たちはすぐに,目的の場所へと向かった。
屋台がたくさん並んでいる通りはどこも賑わっている。どこにいても美味しそうな匂いが漂っていてワクワクしたと同時にどれが食べたいとか選んでおかないとどれがいいか迷って,結局たくさん並んで食べたいと思ったもの全部は食べれなくなりそうだなと思った。
「ところで,今日は食べ歩きをする感じですか?」
気になって僕はメアリさんに尋ねた。
「そうですね。最初はそんな感じで周ってその後に座って食べるって感じがいいかなと…どうですか?坊ちゃん」
「僕もそれでいいと思う」
坊ちゃんは元気よくそう答えた。
「よかったです。で,まずは…」
メアリさんはそう言ってあるお店の前まで僕たちを引っ張ってやってきた。
美味しそうな匂いが漂ってきて,すでに空いていたお腹は鳴りそうだった。
「ここは…」
僕はお店の方を見て呟いた。
「そうですよ。美味しそうですよね。まずはがっつり食べたいなと思いまして…」
メアリさんは恥ずかしそうに話した。
「いいですね。僕も食べたいと思ってました」
「やっぱりこれにして正解でしたね」
「うん,正解だった」
坊ちゃんも楽しそうにしていた。
僕たちが1番最初に来たのは,焼かれたお肉が売られている場所ですでに,並んでいる人が多くいた。
それでも,早めて来たせいか僕たちの番は割とすぐにやってきてくれた。
「これを3つぶんください」
僕はそう言って,お金を取り出し支払った。
今日は坊ちゃんもいるということもあって,僕とメアリさんは仕事という名目で来ている。だから,お金は旦那様持ちだったりする。
「はい,兄ちゃんたちお待たせ」
「ありがとうございます」
僕は差し出されたお肉を3つ分受け取った。
お肉には,特製のソースがしっかりとかけられていて美味しそうだった。
「坊ちゃん,メアリさん」
僕は2人にお肉を渡した。
「やっぱり美味しそうですね…」
「美味しそう…」
2人のキラキラと輝く,瞳を見て,僕までもが余計に楽しい気分になる。
「じゃあ,食べましょう」
お店の前では邪魔になるだろうと思い,歩きながら食べる。
お肉は一口食べるたびに、口いっぱいにお肉の香ばしさと肉汁を感じた。
「おいしい…」
「うん,おいしい。レオも美味しい?」
「はい,もちろん,美味しすぎて頬が落ちそうです」
「僕もそう思う」
ニコニコの笑みを浮かべて,僕とメアリさんは来て良かったなと目で会話をする。
「今日は,どんどん食べちゃいましょうね」
メアリさんは坊ちゃんにそう促し,僕たちはしょっぱいもの甘いものを交互に食べていった。
そうして,お昼が過ぎ,ようやくパレードが始まる時間へとなる。
「あっという間でしたね」
時間がこんなにあっという間に経つなんて久しぶりのように思えた。
「うん,あっという間だった。僕,今日すごく楽しかった」
「坊ちゃん,まだ,パレード見てないですよ。しっかり旦那様の活躍も見ましょうね」
「そのつもり。でも,なんかパレードが1番見たかったはずなのに,食べ物美味しすぎて,満足しちゃった」
「そうですね。でも,お祭り本番はここからですから」
「うん。じゃあ,早く,場所とろうよ」
パレードの時間まであと1時間。少し早いなと思いつつ,僕たちは場所取りに向かった。
パレードの行われる通りはすでに人が来ていて早くきてよかったなと思う。
「こことかどうですか?」
メアリさんが,僕と坊ちゃんに話しかける。
「いいですね」
「うん」
僕と坊ちゃんはメアリさんが指さす方を向いて,同時に答えた。
「ふふっ…じゃあ,ここで見ましょう」
僕たちは,そうして最前列に場所をとってパレードを見ることになった。
「よかったですね」
坊ちゃんに話しかける。どんな感じなのかワクワクして。
「うん,僕楽しみ。それに,レオもよかったね。お兄さんを見れるから」
「そうですね。兄は私の憧れでもございますから。嬉しいです」
「2人とも楽しそうですね。ですが,パレードはみんな楽しみですよ。私だって楽しみですし…それにほら,多くの人もそう見たいですよ」
段々とそこには人が集まってきている。
こんなに,楽しみにしている人たちがいるのかと感心しつつ,兄はすごいなと思う。僕は,一生兄には追いつくことはないだろうなと。
「すごい,人がいっぱい集まってきている」
嬉しそうな声を坊ちゃんはあげた。
「ほんとですね。こんなに,人が集まるとは…正直驚きです。もっと,みんな,屋台とかにいるのかなって,思っていました…」
「そうですか?やっぱり、騎士団の方々がこんなところに来るなんてそうそうないんですよ。だから、みんなこの国を守っている人には一目会いたいなんて思うはずですよ…ってお二人は,身近にいるから,そんなことないかもですが…」
「騎士ってそんなに人気なんですね…。僕もまだまだ常識が…わかってないですね…」
恥ずかしくなる。自分がそんなことも知らなかったのだと…。
「いえ,そんなもんですよ。坊ちゃんも話聞いてもあんまりピンときていないようですし…」
僕を励ますように,メアリさんはそう言ったけれど,僕はもういい大人で,坊ちゃんと歳は違いすぎると思った。
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