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5章

7話 告白…

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「言いたいこと?」

心臓の音が速くなり、緊張感がそこに漂っている。

「大丈夫。そんな心配そうな顔しないで」

そして,坊ちゃんの手が僕の頬に触れる。

「でも…」

僕がそれ以上言う前に坊ちゃんは話を遮った。

「って,その前に,このクッキー全部食べてからだね。ほら,あーんして」

急にテンションを変えて来て,結局言いたいことは何かわからないまま、言われた通りにクッキーを口に含んだ。

「あ,あの…それで…」

食べ終わり次第,僕は口を開く。

「うん,その前にレオ,この椅子に座って」
「は,はい」

ぼーっとする頭で頷き僕は坊ちゃんの隣にある椅子に腰をかけ,坊ちゃんと向かい合う。

「さすがに,地面に座ったまま聞かせたくなくて…それで,話なんだけど…」

坊ちゃんは,言いづらそうに言葉を紡ぐ。

「はい…」

この雰囲気から,何か大切なことを言うのだと察した。だから,何を言われても落ち着いていよう。もう,坊ちゃんだって大人だ。僕がどうこう言えるわけではない…。
そう考えていくうちに,心臓はより速くなって,緊張してしまう。

「僕ね,レオに初めて会った時から,きっと,レオのことが好きだったんだ。でも,その好きは最初はただの好きだった。けれど,レオが倒れた時,僕はずっとレオのそばにいたい。レオを僕のものにしたいそう思った。これは,Domの欲求とも相まっているのかもしれない。けどね,本当にそう思ったんだ。だから,僕のこと恋愛的な意味で好きになって欲しくて…その,それで,パートナーになって欲しい…」

坊ちゃんの言葉を声を一言一句しっかりと僕は理解しようとする。理解して,いつのまにか涙が溢れ出ていた。

「…えっ…なんで…」

涙の原因がわからなくて,こぼれ落ちていく雫を拭いていく。拭いては溢れ出て来た。

「レオ,大丈夫?」

すぐに僕の異変に気づき,僕の頬を伝っていく雫を拭き取る。その瞬間,主人の前で何をしているんだとふと我に返って涙をどうにか止めようとする。

「…だ,大丈夫です。それより,坊ちゃんが言ったことって…」

聞き間違えじゃないか一応確認する。と言って欲しいと思いながら。

「もう一度,言うね。レオ,僕はレオのことが恋愛的な意味で,大好きだよ。だから,僕と付き合って欲しい」

はっきりとそう言った。

(これは,ダメなこと…。だから,僕はちゃんとダメだと言わなければいけない…)

そんな思いと同時にどこかホッとする僕もいた。けれど…。

「カイン様,私は,あくまでも ?のパートナーです。正式ではないのです。だから…そのことは…っ」

坊ちゃんが僕の口に手を当ててこれ以上喋らせようとはしなかった。

「ダメ,レオが自分の気持ちを考えて。急に言ったことに関しては申し訳ないと思っている。だから,僕がこの家を出ていく日までしっかりと考えて,返事をして欲しい」

僕が今から,言おうとしていることを察してかそう言った。

「……」
「ごめんね…でも,僕の気持ちは本当だから,信じて欲しい」

頬から伝わる熱は本当だと言っている。

「信じています。疑ってはいません…ただ,驚いて…どうすればいいか戸惑っているだけです」

正直に全てを言ってしまう。こんなこと言わないで,すぐにダメだといえばいいなんてわかっている。それでも,僕の気持ちはそれを許さなかった。原因なんてもう…。

「うん。なら,よかった…レオ,それで,今お願い事してもいい?」

言いづらそうにしながら,とはっきり言った。
まだ今日は,坊ちゃんの誕生日。なんでも聞くがあったことをこの瞬間思い出す。

「…お願い…?」

身構えずにはいられなかった。
坊ちゃんが,嫌がることなんてしないとわかっている。それでも,さっき言われたことを否が応でも意識してしまうから。

「大丈夫そんなに,身構えなくても変なことしないから」
「だって…」
「大丈夫だから…」

優しい声色で囁かれる。
その声は,僕に安全だと,安心していいと言っているようでとても心地が良くて,逆らおうなんて気持ち全く起きない。

「…それで,お願い事とは?」
「今日,レオと離れたくないから,今日はずっと一緒にいて欲しい…。やっぱり…嫌だよね?ごめん」
「いやはないですよ。いやでは…」

坊ちゃんとずっといることが嫌だと思ったことは一度もない。それに,プレイの後はいつも一緒に寝ている。だから,今日もそのつもりで来ていた。
でも,さっきの告白を聞いてしまうと心が揺らいでしまう。一緒に寝ていいものかと。

「なら,お願い。一緒にいて…」

小さい子どもが懇願するかのような声で言う。

「………」

すぐに答えは出なかった。出るはずもなかった。

「お願い。何にもしない…だから,お願い…」

必死さは嫌でも伝わってしまう。

「…本当に,何もしないなら…」

そう言って,僕のことを引き止める。

「…いいですよ。坊ちゃんがそんなにお願いすることなのでしたら.断れませんよ」
「ほんと?僕,嬉しい。一緒にいてくれるの」

さっきと一転して,明るい声をあげる。
変わり方が早いなと思う…。なんて考えている,僕も嬉しい気持ちになってしまう。

「まあ,叶えられる願い事ですし,今日はカイン様,あなたの誕生日ですから」

僕は,決して自分の気持ちが揺らいだとか思われないようにそう言った。

「そっか,それでも,嬉しいよ。ありがとう。じゃあ,僕もう疲れたからさ」

坊ちゃんは僕の手を引っ張ってベッドの方へと向かう。

「ちょっ…って」

勢いよく,手を引っ張られ,僕はベッドに寝かせられる。
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