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16 (ジークベルト視点)
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俺は元々、誰とも結婚する気がなかった。
サングリフという大国の第一王子として生まれて、幼少期から次期国王として教育を受けていた。生まれつき魔力量も高く、勉学も得意だったからか、『アルファに違いない』と周囲から期待されていた。その通りだった。
言われた通りの事をやったら、評価される。その単純作業は苦痛というより楽だった。特に反抗する事もなく、淡々とこなしていたと思う。
それでも、やたらと厳しく接してくる父上は嫌いだった。第二王子を身籠っていたオメガの母上は優しかったそうだが、出産前に当時流行っていた伝染病にかかり、他界してしまった。だから、あまり母上の事はよく知らない。
母上が亡くなってからというもの、父上のオメガに対する偏見は強くなった。身体が弱いオメガだからダメだったんだ、と。口ではそう言っていたが、愛してた人が突然亡くなって、やり場のない怒りゆえだったのだろう。
俺の中で初めて反抗心が芽生えたのは、婚約者の候補を紹介された時だった。
『伯爵家の令嬢は美人で聡明だが―――、公爵家の令息は珍しい光魔法が扱えて―――』
何人かの候補を紹介されたが、全く惹かれなかった。容姿や能力、そのどれもが優れていると言われても興味が湧かなかった。婚約者候補の社交場や魔法学院での立ち振る舞いを見れば見るほど、余計に好きになれなかった。
俺自身が好きというより、王太子妃の座を狙う卑しさを感じ取ってしまったからだ。政略結婚なのだから、当たり前と言えば当たり前だが。父上のように、愛し合える相手と結婚したいという願望が俺の中にもわずかにあったのだろう。
アルルを結婚相手に選んだのは、幼少期に出会ってたからという訳ではない。この国で好きになれる相手が居なかったからだ。そんな惰性的な理由で選んだ相手だった。
婚約してから結婚するまで、アルルとは一度も会わなかった。ルータパでは婚前交渉が重罪になるらしく、ヒート事故を防ぐために結婚するまでは会わないという取り決めがあったからだ。
手紙でのやり取りが数年続いた。その時の印象は、『真面目』だった。毎回丁寧な字で、便箋の行をきっちり埋めてくるからだ。内容は至って普通だが、時折出てくる動物の話が、彼の優しい人間性を表していた。
姿すら知らないアルルは、勤勉で堅い雰囲気なのだろうな、と勝手に想像していた。
実際に会ってみたら、そんな事はなく。珍しい黒髪に琥珀色の瞳をした、可愛らしい顔立ちの小柄な青年だった。
口調は堅く、はっきりと物事を言うが、とっつきにくい雰囲気はない。慣れない言語や環境のはずなのに、文句ひとつ言わずに、一人で努力して仕事をこなしていた。
オメガだからと強く当たる父上に対しても、臆する事なく意見していた。俺が手助けする暇なく、次第に父上からの信頼も勝ち取っていて。あんなに偏屈な男とよく和解できたなと感心さえした。
ただ、放っておいたら一日中仕事漬けになっているから、仕事を減らしたら不服そうな顔をされるし…………俺はどう接していいかもよくわからなかった。
動物好きなのは知っていたから、馬のラヤを連れて来たりと、彼が喜びそうな事を思いつく限りはやってみたが。何となく好かれてる気がしなかった。抱いた時も、目すら合わせてくれなかったからだ。
好きでもない相手に抱かれるのは苦痛だろう、と俺はアルルを抱くことをすぐにやめた。抑制剤を飲んで、欲情を抑え込んだ。それが彼にとってどれ程の屈辱だったのか、深く考えもせずに正しいと思い込んでしまった。
…………いつから好きだったのかというと、正確に覚えていない。いつの間にか目が離せなくなっていて、アルルのために何かしてあげたいという気持ちが芽生えていたから。
だが、その曖昧な態度は父上は許してくれなかった。「王太子妃との子供を作る気がないのなら、側妃を」と言われた。側妃なんてありえない、かといって無理矢理アルルを抱きたくない、と葛藤した。
俺との子供は欲しくない、と断言されるほど嫌われていると思っていたから余計にだ。
結果的に……………その葛藤していた間にアルルが側妃の話を知ってしまったようで、深く傷付けてしまった。
自分でも分かっているが、感情表現は豊かな方じゃない。アルルに対して好意は持っていたものの、態度で示す事が出来なかった。社交界でよく見かけるような、軽薄な男にもなりたくないという安いプライドもあったからだろう。
朝日が昇ってから、腕の中で眠るアルルの頭を撫でた。
『…………ジークベルト様の考えてること、ちゃんと、聞きたいです』
『好きとか、可愛いとか、もっと口で言ってほしいです』
最中で脈略もなく言われた言葉だったが…………アルルに頼まれる事なんてそう多くはない。よほど強い願望なのだろう。何かしてあげたいが、何をしたらいいのかわからなかった俺にとっては、どんな内容でも嬉しかった。
俺はその言葉を胸に刻み、今後は自分の考えをもっと口に出していこう、と思った。
サングリフという大国の第一王子として生まれて、幼少期から次期国王として教育を受けていた。生まれつき魔力量も高く、勉学も得意だったからか、『アルファに違いない』と周囲から期待されていた。その通りだった。
言われた通りの事をやったら、評価される。その単純作業は苦痛というより楽だった。特に反抗する事もなく、淡々とこなしていたと思う。
それでも、やたらと厳しく接してくる父上は嫌いだった。第二王子を身籠っていたオメガの母上は優しかったそうだが、出産前に当時流行っていた伝染病にかかり、他界してしまった。だから、あまり母上の事はよく知らない。
母上が亡くなってからというもの、父上のオメガに対する偏見は強くなった。身体が弱いオメガだからダメだったんだ、と。口ではそう言っていたが、愛してた人が突然亡くなって、やり場のない怒りゆえだったのだろう。
俺の中で初めて反抗心が芽生えたのは、婚約者の候補を紹介された時だった。
『伯爵家の令嬢は美人で聡明だが―――、公爵家の令息は珍しい光魔法が扱えて―――』
何人かの候補を紹介されたが、全く惹かれなかった。容姿や能力、そのどれもが優れていると言われても興味が湧かなかった。婚約者候補の社交場や魔法学院での立ち振る舞いを見れば見るほど、余計に好きになれなかった。
俺自身が好きというより、王太子妃の座を狙う卑しさを感じ取ってしまったからだ。政略結婚なのだから、当たり前と言えば当たり前だが。父上のように、愛し合える相手と結婚したいという願望が俺の中にもわずかにあったのだろう。
アルルを結婚相手に選んだのは、幼少期に出会ってたからという訳ではない。この国で好きになれる相手が居なかったからだ。そんな惰性的な理由で選んだ相手だった。
婚約してから結婚するまで、アルルとは一度も会わなかった。ルータパでは婚前交渉が重罪になるらしく、ヒート事故を防ぐために結婚するまでは会わないという取り決めがあったからだ。
手紙でのやり取りが数年続いた。その時の印象は、『真面目』だった。毎回丁寧な字で、便箋の行をきっちり埋めてくるからだ。内容は至って普通だが、時折出てくる動物の話が、彼の優しい人間性を表していた。
姿すら知らないアルルは、勤勉で堅い雰囲気なのだろうな、と勝手に想像していた。
実際に会ってみたら、そんな事はなく。珍しい黒髪に琥珀色の瞳をした、可愛らしい顔立ちの小柄な青年だった。
口調は堅く、はっきりと物事を言うが、とっつきにくい雰囲気はない。慣れない言語や環境のはずなのに、文句ひとつ言わずに、一人で努力して仕事をこなしていた。
オメガだからと強く当たる父上に対しても、臆する事なく意見していた。俺が手助けする暇なく、次第に父上からの信頼も勝ち取っていて。あんなに偏屈な男とよく和解できたなと感心さえした。
ただ、放っておいたら一日中仕事漬けになっているから、仕事を減らしたら不服そうな顔をされるし…………俺はどう接していいかもよくわからなかった。
動物好きなのは知っていたから、馬のラヤを連れて来たりと、彼が喜びそうな事を思いつく限りはやってみたが。何となく好かれてる気がしなかった。抱いた時も、目すら合わせてくれなかったからだ。
好きでもない相手に抱かれるのは苦痛だろう、と俺はアルルを抱くことをすぐにやめた。抑制剤を飲んで、欲情を抑え込んだ。それが彼にとってどれ程の屈辱だったのか、深く考えもせずに正しいと思い込んでしまった。
…………いつから好きだったのかというと、正確に覚えていない。いつの間にか目が離せなくなっていて、アルルのために何かしてあげたいという気持ちが芽生えていたから。
だが、その曖昧な態度は父上は許してくれなかった。「王太子妃との子供を作る気がないのなら、側妃を」と言われた。側妃なんてありえない、かといって無理矢理アルルを抱きたくない、と葛藤した。
俺との子供は欲しくない、と断言されるほど嫌われていると思っていたから余計にだ。
結果的に……………その葛藤していた間にアルルが側妃の話を知ってしまったようで、深く傷付けてしまった。
自分でも分かっているが、感情表現は豊かな方じゃない。アルルに対して好意は持っていたものの、態度で示す事が出来なかった。社交界でよく見かけるような、軽薄な男にもなりたくないという安いプライドもあったからだろう。
朝日が昇ってから、腕の中で眠るアルルの頭を撫でた。
『…………ジークベルト様の考えてること、ちゃんと、聞きたいです』
『好きとか、可愛いとか、もっと口で言ってほしいです』
最中で脈略もなく言われた言葉だったが…………アルルに頼まれる事なんてそう多くはない。よほど強い願望なのだろう。何かしてあげたいが、何をしたらいいのかわからなかった俺にとっては、どんな内容でも嬉しかった。
俺はその言葉を胸に刻み、今後は自分の考えをもっと口に出していこう、と思った。
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ころねこっこ様、感想ありがとうございます☺️
孫を見てるようなって面白くて笑ってしまいました😂
えっち上手いのに、ピュアな攻めがツボなので
性格違えど可愛い攻めになりがちです笑
アルルは無自覚なだけで結構ハイスペな子ですね!
そのうちジークベルトは尻に敷かれるんじゃないでしょうか😂
こちらこそ、読んでくださってありがとうございます!
感想まで頂けて嬉しいです🙌
退会済ユーザのコメントです
ころねこっこ様、感想ありがとうございます☺️
お久しぶりです〜!
この二人のえっちが自分でも想像つかなかったのですが、言葉足らずなジークの気持ちをお披露目する回になりました🙌
ペコパ私も食べてみたい…!
睨まれるのは確実かもしれません😂
書いて話をアップした後、いつも無気力状態になるので感想頂けてハッピーになりました😭😭
たくさん読んでくださってありがとうございます!