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第四章 修行の成果、戦いの歌
第十九話 起きたら二つ名がついていた
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ライの街の宿屋の一室で、私はストフさんとテーブル越しに向かい合って座っている。
話の前に、まずは心を落ち着けるようにと、ポーラさんが紅茶を淹れて持ってきてくれた。
「チヨ、ご無事で何よりです。私も話したいことは山ほどありますが、まずはストフ様の話を聞いてあげてください。…色々と隠していたことは私からも後で謝りますが、ストフ様も難しいお立場で葛藤されていたことを汲んでいただけたら…」
「いいや、ポーラ。やはり悪いのは私なので、そこは良いよ」
ストフさんは淋しげな表情で笑い、ポーラさんは心配そうな顔をしたまま、頭を下げてから退室していった。
温かな紅茶を一口含む。ポーラさんは敢えていつもの茶葉を使ってくれたようで、馴染みの香りにポーラさんの気遣いが感じられて、強張っていた体から力が抜けていく。
ストフさんはカップに口をつけて一呼吸置いてから、話を始めた。
「チヨリ、話の前にまずひとつだけ確認させてほしい。体調は問題ないか?具合が悪ければ機会をあらためよう」
聞きたいことはたくさんあるし、きっとストフさんも話したいことはいろいろあるだろうに、いちばんに私を心配してくれるところが、とてもストフさんらしいなと思い、少し笑ってしまった。
「ふふ、大丈夫です!大変なときにご迷惑をおかけしてしまい、本当にすみませんでした。今回はポンム事件のときと違って、きちんと自分の力の残量は確認していたんです。ゼロにはならないよう調整したはずだったんですけど、あのとき安心したら完全に緊張の糸が切れてしまって…」
「そうか…あのあと救護班の者がすぐに診たのだが、魔力欠乏の一歩手前くらいの症状だと言っていた。それよりもおそらくは初陣の緊張と、任された責任の大きさから来る精神的な負担が大きかったのだろうとも。…本当に、どれほどチヨリに大変な重圧を背負わせてしまったかと考えると…申し訳ないことをした。しかし同時に、心から礼を言わせてくれ。チヨリがいなければ、今回の大成功はあり得なかった。ありがとう」
そう言うとストフさんは、ゆっくりと深く私に頭を下げた。
「いえ、やめてください!私自身が納得して、望んでしたことですから、謝っていただくことは何もないんです!…あの、それよりも、私が倒れてしまった後、どうなったかを教えていただけますか?どれくらいの間眠ってしまっていたのかも分からなくて…」
「ああ、そうだな。まずはそこから話そう。まず、今日は作戦の翌日だ。チヨリが倒れたのが昨日の昼頃のことだから、ちょうど丸一日くらい眠っていたんだな。ポンム事件のときより早く目覚めてくれて安心したよ。…まあ、思ったよりも早かったから、チヨリが目覚める前に戻って来れなかったのが私としては悔しいんだが…」
最後の方はボソりと呟くような、そしてなぜか拗ねたような言い方だったけれど、ふたりしかいない部屋ではバッチリ聞こえてしまい、ちょっと恥ずかしくなってしまった。どういう意味なんだろう…
「そ、そうでしたか。あと、作戦の最後がどうなったのか分からないままなので、できたらそのあたりも聞きたいです」
「そうだな。焦っていたから通信のときもあまり説明できなかったし、そこから遡って話そうか」
死火山の奥深くに、巨大な魔力溜まりがあり、そこがこの地の魔物の発生源となっていたこと。その冷却と、魔力溜まりの周囲に箱の設置作業を進めていたときに、その空間よりもさらに地下から岩盤を突き破る形で、突然三十体を超える魔物の群れが現れたこと。
どうやら地下の一部分に空洞があり、完全に岩盤で塞がっていたためにそこまでは眠りの歌が届いていなかったこと。警戒は常にしていたので、すぐに戦闘態勢を整えようとしたこと。私の歌った眠りの歌が効いて、魔物たちは眠りに落ち、問題なく討伐もできたこと。
魔力溜まりが想定よりもかなり大きく、魔法使いチームの魔力残量がほぼ限界になってしまったこと。私の歌の力も合わせて、魔力溜まりの冷却も無事に完了したこと。
ストフさんは実際に見た魔力溜まりの様子なども含めて、細かく状況を説明してくれた。
ここまでは私も意識を保っていたときで、ストフさんから無事の報告を受けて安心した瞬間に視界がホワイトアウトしたんだった。
「その後は魔物との遭遇も一切なく、全員問題なく下山できた。チヨリが倒れて通信が途切れたんだけど、すぐに叔父上が自分の箱を使ってリーズと通信を繋いでくれたので、状況は確認できた。…心配したけれど、リーズが救護班の者を呼んで、チヨリの命には別状なく、極度の疲労で倒れただけだと報告してくれたので、とにかく急いで山を下りた」
「うう…やっぱりベルリーズ様にも相当なご迷惑をおかけしましたよね…後で謝ります…」
突然倒れて元王女様にお世話をさせてしまったと思うと血の気が引く。
「ああ、リーズはそういうのまったく気にしない人だから謝罪は要らないよ。どちらかというとチヨリが無理をしているのが分かっていたのに止められなかったことを悔やんでいたから、もし良かったらそこだけフォローしてもらえると助かるかな」
「そうですか…分かりました。えっと、それで、最終的に兵士さんにも魔法使いさんにも死傷者は出なかったんですよね?」
「ああ、そうだ。今回討伐した魔物の合計は千百体ほどで、過去最大規模の魔物の塒だったことは間違いない。それが軽傷者のひとりさえ出さずに一掃できたことは、奇跡にも等しいことなんだ。本当に、チヨリがいなかったら不可能なことだった。どれほど礼を言っても足りないくらいだよ。…ありがとう」
ベルリーズ様にも聞いたけれど、ケガ人が出なかったことがしっかりと確認できて安堵する。戦いに慣れた兵士なら多少のケガくらいは気にしないのかもしれないけれど、私の感覚では指先を紙で切っただけでも痛いのに、魔物との戦闘でケガを負うとか考えただけでも怖すぎる。
「…お力になれたなら良かったです」
「力になったなんてもんじゃない。そもそも箱を使った通信も含め、今回の作戦はチヨリがいなければ実行することはできなかった。あれほど細かく分けた部隊間で即時に連絡が取れるなんて想像もできなかったことだし、叔父上は今回の結果を踏まえて、急いで通信道具の開発をするそうだ」
なるほど。確かに無線もないこの世界では、今回のような通信手段がなければ伝令を飛ばすしかなかったはずだ。緊急時に連絡の遅さは命取りになるし、相当画期的なことだったのかもしれない。
山小屋にあった便利アイテムの数々を思い出すと、ミゲルさんなら言霊使いや私のような特殊な力がなくても使える魔核を組み込んだ通信道具をきっと発明してくれると思う。
「…それから、チヨリが倒れた後でちょっと厄介なことがあってね」
「厄介なこと…?」
なんだろう。あいつチートすぎるから研究させろとかそういう話かな?いや、まさかの魔女狩り裁判かも…?
「…今回の作戦に参加した兵士全員が、“緑の歌姫様に会わせてほしい”とテントに詰め掛けてうるさかったんだよ…」
そう言うと、ストフさんは心底疲れたという表情でため息をついた。
ん…?なんか私が想像したのと違う方向の厄介ごと?
「緑の歌姫様って…?」
「もちろん、チヨリのことだよ。今回集まっていた兵士たちは、下手したら命を落としてもおかしくないくらい危険な場所だと誰もが理解していた。それが、実際はチヨリの力で魔物は眠っているから反撃して来ないし、不思議な箱を使って連絡が取れるから動きやすいし、魔力溜まりまで凍らせるし、最初に歌ってくれた祈りの歌のおかげでまったく疲れもしなかったと言って大騒ぎになった…」
「あ、あれ…?一般の兵士さんに歌ったやつでは防御力の強化しかしてないはずなんですけど…」
「思い込みなのか、実際に何か未知の効果があったのかは謎なんだが、ほぼ全員が普段より身軽に動けた、山を登っても疲れなかった、何かに守られているようで安心した等々といろいろ言っていたな。まあ、元々チヨリの歌声には人を優しい気持ちにしてくれる魅力があるから、やつらの気持ちは分からないこともないが…」
謎だけど、なんていうんだっけこういうの…あ、プラシーボ効果?っていうやつなのかな?
祈りの歌をうたったときは、戦闘の前でみんな相当な緊張状態だったと思うし、気持ちの問題でそんな印象になったのかもしれない。
「あのときの通信は指揮官たちにも繋いでいたから、チヨリが倒れたことはすぐに兵士たちにも伝わってしまってな…。礼を伝えたいからモモ殿に会わせてくれ、ピンク髪の天使のために祈らせてくれ、彼女はオレの女神だ云々…リーズが一喝して黙らせたんだが、それでも兵士の間で“モモ”への感謝と神格化が一気に進んで…」
思わず背筋がぞくっとした。私がのんきに眠っている間にそんなことに…
「で、最初は呼称は定まらなかったのだが、誰が言い出したのか“緑の歌姫”という二つ名がいつの間にか定着した」
…なんということでしょう、二つ名ついちゃったよ!女神事件でも困ってたのに、また変な認識が広まってしまうなんて…
固まる私を見て、ストフさんが慌ててフォローを入れた。
「ま、まあ、“緑の歌姫”は深緑のローブにピンク髪の“モモ”という女性ということになっているし、チヨリが気にすることはないと思う。とにかく、兵士からの崇拝の勢いが凄かったので、北端の砦に運ぶよりは、やつらのいない街で静養した方が安心だということになり、昨日のうちにこのライの街まで連れて帰って来たんだよ」
うわあ、思った以上に迷惑かけたっぽい。でも、偽名と変装は役に立ったようで良かった。提案してくれたストフさんには感謝だわ。
「えっと、ここまでは質問はないだろうか?ようやくここからが私個人としては本題なんだけど…」
そうだった。情報量が多くてアワアワしていたけれど、これはまだ昨日の顛末を聞いただけ。私が聞きたいのは、ベルリーズ様や子どもたちのこと。そして本当のストフさんのこと。
聞いてしまえば、後戻りはできないけれど、聞かなければ進めない気がする。
私は決意を固め、ストフさんの青い目を真っ直ぐに見つめた。
話の前に、まずは心を落ち着けるようにと、ポーラさんが紅茶を淹れて持ってきてくれた。
「チヨ、ご無事で何よりです。私も話したいことは山ほどありますが、まずはストフ様の話を聞いてあげてください。…色々と隠していたことは私からも後で謝りますが、ストフ様も難しいお立場で葛藤されていたことを汲んでいただけたら…」
「いいや、ポーラ。やはり悪いのは私なので、そこは良いよ」
ストフさんは淋しげな表情で笑い、ポーラさんは心配そうな顔をしたまま、頭を下げてから退室していった。
温かな紅茶を一口含む。ポーラさんは敢えていつもの茶葉を使ってくれたようで、馴染みの香りにポーラさんの気遣いが感じられて、強張っていた体から力が抜けていく。
ストフさんはカップに口をつけて一呼吸置いてから、話を始めた。
「チヨリ、話の前にまずひとつだけ確認させてほしい。体調は問題ないか?具合が悪ければ機会をあらためよう」
聞きたいことはたくさんあるし、きっとストフさんも話したいことはいろいろあるだろうに、いちばんに私を心配してくれるところが、とてもストフさんらしいなと思い、少し笑ってしまった。
「ふふ、大丈夫です!大変なときにご迷惑をおかけしてしまい、本当にすみませんでした。今回はポンム事件のときと違って、きちんと自分の力の残量は確認していたんです。ゼロにはならないよう調整したはずだったんですけど、あのとき安心したら完全に緊張の糸が切れてしまって…」
「そうか…あのあと救護班の者がすぐに診たのだが、魔力欠乏の一歩手前くらいの症状だと言っていた。それよりもおそらくは初陣の緊張と、任された責任の大きさから来る精神的な負担が大きかったのだろうとも。…本当に、どれほどチヨリに大変な重圧を背負わせてしまったかと考えると…申し訳ないことをした。しかし同時に、心から礼を言わせてくれ。チヨリがいなければ、今回の大成功はあり得なかった。ありがとう」
そう言うとストフさんは、ゆっくりと深く私に頭を下げた。
「いえ、やめてください!私自身が納得して、望んでしたことですから、謝っていただくことは何もないんです!…あの、それよりも、私が倒れてしまった後、どうなったかを教えていただけますか?どれくらいの間眠ってしまっていたのかも分からなくて…」
「ああ、そうだな。まずはそこから話そう。まず、今日は作戦の翌日だ。チヨリが倒れたのが昨日の昼頃のことだから、ちょうど丸一日くらい眠っていたんだな。ポンム事件のときより早く目覚めてくれて安心したよ。…まあ、思ったよりも早かったから、チヨリが目覚める前に戻って来れなかったのが私としては悔しいんだが…」
最後の方はボソりと呟くような、そしてなぜか拗ねたような言い方だったけれど、ふたりしかいない部屋ではバッチリ聞こえてしまい、ちょっと恥ずかしくなってしまった。どういう意味なんだろう…
「そ、そうでしたか。あと、作戦の最後がどうなったのか分からないままなので、できたらそのあたりも聞きたいです」
「そうだな。焦っていたから通信のときもあまり説明できなかったし、そこから遡って話そうか」
死火山の奥深くに、巨大な魔力溜まりがあり、そこがこの地の魔物の発生源となっていたこと。その冷却と、魔力溜まりの周囲に箱の設置作業を進めていたときに、その空間よりもさらに地下から岩盤を突き破る形で、突然三十体を超える魔物の群れが現れたこと。
どうやら地下の一部分に空洞があり、完全に岩盤で塞がっていたためにそこまでは眠りの歌が届いていなかったこと。警戒は常にしていたので、すぐに戦闘態勢を整えようとしたこと。私の歌った眠りの歌が効いて、魔物たちは眠りに落ち、問題なく討伐もできたこと。
魔力溜まりが想定よりもかなり大きく、魔法使いチームの魔力残量がほぼ限界になってしまったこと。私の歌の力も合わせて、魔力溜まりの冷却も無事に完了したこと。
ストフさんは実際に見た魔力溜まりの様子なども含めて、細かく状況を説明してくれた。
ここまでは私も意識を保っていたときで、ストフさんから無事の報告を受けて安心した瞬間に視界がホワイトアウトしたんだった。
「その後は魔物との遭遇も一切なく、全員問題なく下山できた。チヨリが倒れて通信が途切れたんだけど、すぐに叔父上が自分の箱を使ってリーズと通信を繋いでくれたので、状況は確認できた。…心配したけれど、リーズが救護班の者を呼んで、チヨリの命には別状なく、極度の疲労で倒れただけだと報告してくれたので、とにかく急いで山を下りた」
「うう…やっぱりベルリーズ様にも相当なご迷惑をおかけしましたよね…後で謝ります…」
突然倒れて元王女様にお世話をさせてしまったと思うと血の気が引く。
「ああ、リーズはそういうのまったく気にしない人だから謝罪は要らないよ。どちらかというとチヨリが無理をしているのが分かっていたのに止められなかったことを悔やんでいたから、もし良かったらそこだけフォローしてもらえると助かるかな」
「そうですか…分かりました。えっと、それで、最終的に兵士さんにも魔法使いさんにも死傷者は出なかったんですよね?」
「ああ、そうだ。今回討伐した魔物の合計は千百体ほどで、過去最大規模の魔物の塒だったことは間違いない。それが軽傷者のひとりさえ出さずに一掃できたことは、奇跡にも等しいことなんだ。本当に、チヨリがいなかったら不可能なことだった。どれほど礼を言っても足りないくらいだよ。…ありがとう」
ベルリーズ様にも聞いたけれど、ケガ人が出なかったことがしっかりと確認できて安堵する。戦いに慣れた兵士なら多少のケガくらいは気にしないのかもしれないけれど、私の感覚では指先を紙で切っただけでも痛いのに、魔物との戦闘でケガを負うとか考えただけでも怖すぎる。
「…お力になれたなら良かったです」
「力になったなんてもんじゃない。そもそも箱を使った通信も含め、今回の作戦はチヨリがいなければ実行することはできなかった。あれほど細かく分けた部隊間で即時に連絡が取れるなんて想像もできなかったことだし、叔父上は今回の結果を踏まえて、急いで通信道具の開発をするそうだ」
なるほど。確かに無線もないこの世界では、今回のような通信手段がなければ伝令を飛ばすしかなかったはずだ。緊急時に連絡の遅さは命取りになるし、相当画期的なことだったのかもしれない。
山小屋にあった便利アイテムの数々を思い出すと、ミゲルさんなら言霊使いや私のような特殊な力がなくても使える魔核を組み込んだ通信道具をきっと発明してくれると思う。
「…それから、チヨリが倒れた後でちょっと厄介なことがあってね」
「厄介なこと…?」
なんだろう。あいつチートすぎるから研究させろとかそういう話かな?いや、まさかの魔女狩り裁判かも…?
「…今回の作戦に参加した兵士全員が、“緑の歌姫様に会わせてほしい”とテントに詰め掛けてうるさかったんだよ…」
そう言うと、ストフさんは心底疲れたという表情でため息をついた。
ん…?なんか私が想像したのと違う方向の厄介ごと?
「緑の歌姫様って…?」
「もちろん、チヨリのことだよ。今回集まっていた兵士たちは、下手したら命を落としてもおかしくないくらい危険な場所だと誰もが理解していた。それが、実際はチヨリの力で魔物は眠っているから反撃して来ないし、不思議な箱を使って連絡が取れるから動きやすいし、魔力溜まりまで凍らせるし、最初に歌ってくれた祈りの歌のおかげでまったく疲れもしなかったと言って大騒ぎになった…」
「あ、あれ…?一般の兵士さんに歌ったやつでは防御力の強化しかしてないはずなんですけど…」
「思い込みなのか、実際に何か未知の効果があったのかは謎なんだが、ほぼ全員が普段より身軽に動けた、山を登っても疲れなかった、何かに守られているようで安心した等々といろいろ言っていたな。まあ、元々チヨリの歌声には人を優しい気持ちにしてくれる魅力があるから、やつらの気持ちは分からないこともないが…」
謎だけど、なんていうんだっけこういうの…あ、プラシーボ効果?っていうやつなのかな?
祈りの歌をうたったときは、戦闘の前でみんな相当な緊張状態だったと思うし、気持ちの問題でそんな印象になったのかもしれない。
「あのときの通信は指揮官たちにも繋いでいたから、チヨリが倒れたことはすぐに兵士たちにも伝わってしまってな…。礼を伝えたいからモモ殿に会わせてくれ、ピンク髪の天使のために祈らせてくれ、彼女はオレの女神だ云々…リーズが一喝して黙らせたんだが、それでも兵士の間で“モモ”への感謝と神格化が一気に進んで…」
思わず背筋がぞくっとした。私がのんきに眠っている間にそんなことに…
「で、最初は呼称は定まらなかったのだが、誰が言い出したのか“緑の歌姫”という二つ名がいつの間にか定着した」
…なんということでしょう、二つ名ついちゃったよ!女神事件でも困ってたのに、また変な認識が広まってしまうなんて…
固まる私を見て、ストフさんが慌ててフォローを入れた。
「ま、まあ、“緑の歌姫”は深緑のローブにピンク髪の“モモ”という女性ということになっているし、チヨリが気にすることはないと思う。とにかく、兵士からの崇拝の勢いが凄かったので、北端の砦に運ぶよりは、やつらのいない街で静養した方が安心だということになり、昨日のうちにこのライの街まで連れて帰って来たんだよ」
うわあ、思った以上に迷惑かけたっぽい。でも、偽名と変装は役に立ったようで良かった。提案してくれたストフさんには感謝だわ。
「えっと、ここまでは質問はないだろうか?ようやくここからが私個人としては本題なんだけど…」
そうだった。情報量が多くてアワアワしていたけれど、これはまだ昨日の顛末を聞いただけ。私が聞きたいのは、ベルリーズ様や子どもたちのこと。そして本当のストフさんのこと。
聞いてしまえば、後戻りはできないけれど、聞かなければ進めない気がする。
私は決意を固め、ストフさんの青い目を真っ直ぐに見つめた。
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