6 / 14
第1章 凪音ちゃんと能登先生
第6話 女子校教師「イケメンに生まれたかった……」
しおりを挟む
五十嵐に揶揄われたその後は特筆すべきこともなく時間が過ぎていった。
仕事に忙殺されて五十嵐どころじゃなかったというのもあるが、さして気に留めることでもないだめだ。
五十嵐が愛嬌出して接してくるのは昔からのことだ。
帰りのホームルーム、連絡事項を伝えたる俺をやたらニコニコして見てきたことも含め、今更その意味を深掘りするまでもない。
あの子を含め、愛宕生の中には俺や男性教師をフレンドリーに扱ってもいいと思っている生徒がいる。
タメ口、ボディタッチは序の口。彼女の有無、デートの詮索、夜の営みについての尋問などのセクハラも割とある。
五十嵐はその筆頭みたいな子だ。さすがに露骨なセクハラはないが、以前は彼女無しイジリを浴びせられたし、結婚してからは奥さんネタに切り替わった。
しかし俺へのフランクさは愛宕女学院の文化みたいなもので、特別な気持ちを抱いているなどとは思わない。
俺の体型は中肉中背。
顔も普通。元奥さんは「イケメンだよ~♡」と褒めてくれたが、それはあくまでバカップル会話。
あんな美少女がアラサーの自分に恋心を抱くなんてありえない。
勘違いしてはおめでたいというもの。
そんなこんなで迎えた放課後。
部活に属する生徒は活動に勤しみ、帰宅部の子は早々に帰宅するか友達と残ってお喋りに興じている。
さて、俺もそろそろ部活の指導に行くか。
職員室を出て、音楽室に向かう。昼間と打って変わって閑散とした廊下は裏寂しく、グラウンドから運動部の元気な掛け声が入ってはこだました。
途中、廊下のベンチにくっついて座る生徒達に遭遇した。
「桜庭くん、マジイケメン!」
「早くドラマ観たい!」
「会ってみたいなー!」
一冊の雑誌が裂けて破れそうになるくらい目一杯広げて、黄色い声を上げて大はしゃぎしている。
桜庭というのは人気沸騰中のアイドルだ。歌は下手だし演技も大根。しかし超がつくイケメンなので女性から大人気である。
「男は仕事ができれば人生どうとでもなる」と昔の偉人が言ったとか言わなかったとか。
それは当たっている。大人の男は兎にも角にも稼ぎだ。稼げない男は世間から半人前扱い。だが稼げればイケメンじゃなくても美人の奥さんをもらえる。なので男はとにかく仕事を頑張ればいい。
しかしやはりイケメンは人生有利だ。男女問わず、顔が良いと第一印象が良いので人から評価されやすい。あと女の子からキャーキャー言われると自信がつくだろう。結果、イケメンは稼げる。
俺もイケメンに生まれてみたかった。
……五十嵐もやっぱりあんなイケメンが好きなのかな。
五十嵐のことは小学生と大差ない頃から知っている。
その頃は、制服のサイズが合わなくて野暮ったいお子様だった。
それがいつの間にか大人っぽくなってしまった。
教科担任を四年、クラス担任を一年。俺の知人としてはかなり古い付き合いに部類されるが、実際は教師という目線以外であの子のことはよく知らない。
どんな男が好みかも知らない。
そして知る必要もない。
だが……なぜか、知る必要のないことを憂う自分がいた。
窓に映る俺は疲れの溜まったアラサーの顔をしている。夕方だからヒゲが少し伸びているのは仕方がないものの、全体的に覇気がない。電池の切れかかった懐中電灯のようだ。
こんなんじゃダメだ。生徒にバカにされる。まだ部活の指導が残っているんだからシャキッとしないと。
窓の中の自分をギュッと睨みつけ、俺は先を急ぐことにする。
だがその時、ガラスの向こうの景色が目に入った。
学校の敷地の外、校門から少し離れた位置に人が対峙していた。
一人はうちの生徒。もう一人はパンツルックで、ブレザーもうちの制服ではない。
一体何をしているのだろう……。
胸騒ぎを覚えた俺のつま先は勝手に階段を駆け降りていた。
仕事に忙殺されて五十嵐どころじゃなかったというのもあるが、さして気に留めることでもないだめだ。
五十嵐が愛嬌出して接してくるのは昔からのことだ。
帰りのホームルーム、連絡事項を伝えたる俺をやたらニコニコして見てきたことも含め、今更その意味を深掘りするまでもない。
あの子を含め、愛宕生の中には俺や男性教師をフレンドリーに扱ってもいいと思っている生徒がいる。
タメ口、ボディタッチは序の口。彼女の有無、デートの詮索、夜の営みについての尋問などのセクハラも割とある。
五十嵐はその筆頭みたいな子だ。さすがに露骨なセクハラはないが、以前は彼女無しイジリを浴びせられたし、結婚してからは奥さんネタに切り替わった。
しかし俺へのフランクさは愛宕女学院の文化みたいなもので、特別な気持ちを抱いているなどとは思わない。
俺の体型は中肉中背。
顔も普通。元奥さんは「イケメンだよ~♡」と褒めてくれたが、それはあくまでバカップル会話。
あんな美少女がアラサーの自分に恋心を抱くなんてありえない。
勘違いしてはおめでたいというもの。
そんなこんなで迎えた放課後。
部活に属する生徒は活動に勤しみ、帰宅部の子は早々に帰宅するか友達と残ってお喋りに興じている。
さて、俺もそろそろ部活の指導に行くか。
職員室を出て、音楽室に向かう。昼間と打って変わって閑散とした廊下は裏寂しく、グラウンドから運動部の元気な掛け声が入ってはこだました。
途中、廊下のベンチにくっついて座る生徒達に遭遇した。
「桜庭くん、マジイケメン!」
「早くドラマ観たい!」
「会ってみたいなー!」
一冊の雑誌が裂けて破れそうになるくらい目一杯広げて、黄色い声を上げて大はしゃぎしている。
桜庭というのは人気沸騰中のアイドルだ。歌は下手だし演技も大根。しかし超がつくイケメンなので女性から大人気である。
「男は仕事ができれば人生どうとでもなる」と昔の偉人が言ったとか言わなかったとか。
それは当たっている。大人の男は兎にも角にも稼ぎだ。稼げない男は世間から半人前扱い。だが稼げればイケメンじゃなくても美人の奥さんをもらえる。なので男はとにかく仕事を頑張ればいい。
しかしやはりイケメンは人生有利だ。男女問わず、顔が良いと第一印象が良いので人から評価されやすい。あと女の子からキャーキャー言われると自信がつくだろう。結果、イケメンは稼げる。
俺もイケメンに生まれてみたかった。
……五十嵐もやっぱりあんなイケメンが好きなのかな。
五十嵐のことは小学生と大差ない頃から知っている。
その頃は、制服のサイズが合わなくて野暮ったいお子様だった。
それがいつの間にか大人っぽくなってしまった。
教科担任を四年、クラス担任を一年。俺の知人としてはかなり古い付き合いに部類されるが、実際は教師という目線以外であの子のことはよく知らない。
どんな男が好みかも知らない。
そして知る必要もない。
だが……なぜか、知る必要のないことを憂う自分がいた。
窓に映る俺は疲れの溜まったアラサーの顔をしている。夕方だからヒゲが少し伸びているのは仕方がないものの、全体的に覇気がない。電池の切れかかった懐中電灯のようだ。
こんなんじゃダメだ。生徒にバカにされる。まだ部活の指導が残っているんだからシャキッとしないと。
窓の中の自分をギュッと睨みつけ、俺は先を急ぐことにする。
だがその時、ガラスの向こうの景色が目に入った。
学校の敷地の外、校門から少し離れた位置に人が対峙していた。
一人はうちの生徒。もう一人はパンツルックで、ブレザーもうちの制服ではない。
一体何をしているのだろう……。
胸騒ぎを覚えた俺のつま先は勝手に階段を駆け降りていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる