TSアイドルの卑猥なる日常

プルルペルル

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導入

03~契約~

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 数日後、オレは大手芸能事務所スターライティングプロダクションのオフィスに来ていた。
 どうやら詐欺の類ではなさそうだ。

 事務所のビルは都心の一等地にあり、広々としたエントランスを抜けると、受付の女性がオレを会議室へ案内してくれた。
 すれ違う人の中にはテレビで見たことがある人も居る。
 
 部屋に入るとスーツ姿の女性が笑顔で出迎えてくれた。パリッとしたスーツを着こなしたいかにも仕事ができる女という印象を受ける。

「ようこそ、アイカさん。お会いできて嬉しいです。どうぞお掛けください」

「は、はい……よろしくお願いします……」

 オレは促されるまま席に座り、目の前に置かれた書類の束に目を向けた。契約書のようだが、何ページもある。

「そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。もっと自然な……素のあなたを見せてください」

「えっと……オレ……いや、アタシは……」

「オレ、で結構ですよ。まずお伝えしたいのは今回のオーディションが通常のアイドルとは少し異なるプロジェクトであるということです」

 女性はスムーズな口調で説明を始めた。

「私たち『スターライティングプロダクション』では、新しいアイドルを模索しています。あなたには、その一員として活躍してもらいたいと思っています」

「新しいアイドル像…?」

 オレは思わず疑問を口に出した。何となく曖昧な表現に感じられたからだ。

「そうです。私たちはこれまでのアイドルという枠にとらわれず、あなた自身の個性を活かした新しい活動を展開していきたいと考えています。これまでにない斬新なコンセプトで、時代の変化に合わせたアイドル像を提示していく予定です。一応ユニットという形をとっていますが基本的には個として活動していただきます。もちろん他のメンバーと共にイベントに参加するといったこともありますが、基本的には個として活動するものと考えて下さい」

 基本的には一人で活動し、時々ほかのメンバーと一緒に活動することもあるという話だ。

 オレは契約書に目をやりながら、少し考え込んだ。書類には細かい文字がびっしりと並んでいて、簡単にすべてを理解することはできそうにない。
 ただ、気になる一文がある。

「”常日ごろからアイドルとしてのキャラクターを守る”とは?」

「敬語も不要ですよ。そしてその点にもかかわってくるのですが”常日ごろからアイドルとしてのキャラクターを守る”というのは日常てきにアイドルとしてのキャラクターを意識して行動する、ということですね」

「キャラ……」

「はい、アイカさんの場合は素の状態で構いません。男勝りのオレっ娘キャラは大変良いとこちらも考えています」

 男勝りというのは前世が男のオレにとってそう難しいことではないだろう。

「そうですね……はい、わかりました。それと具体的にはどのような活動をすることになるのか聞かせてください」

「ネオアライズはグループではありますが基本的に個人、ソロで活動していただきます。イベントなどの際には一緒に活動していただくこともあるかと思いますが基本的にはお一人での活動だと考えていただいて大丈夫です。
 そして具体的な活動に関しては動画配信をメインに活動していただくことになります。企画や何を行うかなどは後々話し合って決めていくことになります。私たちとしても新しい試みなのでそのあたりはアイカさんとしっかり話し合って決めたいと思います」

 彼女は微笑を浮かべたまま、オレの反応をうかがうように言った。

 その後もしばらく話し合い…………オレはサインをすることにした。

 この世界の契約書には不思議な力がある。
 それは、契約を結んだ者が自然とその約束を守りたくなるような、穏やかな強制力とでも言おうか。
 特に他の人に聞いたことなどはないが、少なくともオレはそう感じることが多々あった。まあ、今までのは家庭内での約束事。しかし今回は人生をも左右しかねない重要な契約。

 ペンが紙に触れるたびに、胸の鼓動がうるさく感じた。
 不安と期待が入り混じった複雑な感情それを感じながらもオレはサインを終えた。

「それでは後日、宣材写真の撮影とプロフィール用のインタビューを行います。日程は追って連絡するのでお待ちください。それと基本的に話す場面ではなるべくため口、それも少々強気な感じでお願いしたいので日ごろからそう言った言葉を心がけてください。」

「おう、がんばるぜ」

 契約を結んだからかすんなりと男勝りな言葉が出てくる。
 オレの言葉を聞いてマネージャーは満足げにうなずいた。

 エントランスを抜けて外に出ると、街の喧騒が耳に飛び込んできた。

 合格書類を見たときは辞退するつもりではあったが話を聞いて気が変わった。
 文字通り第二の人生、挑戦してみるのもありかもしれない。

 オレは不思議な高揚感を覚えながら帰路に就いた。
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