神堕ちのランドスケープ ～魔王の第２王女は澱みなく～

第2話 「魔王城の秘密」

魔王城はその夜、特別な雰囲気に包まれていた。

長い廊下には、緋色の絨毯が敷かれ、ランタンの光が幻想的に部屋を照らしていた。
その光は、窓から注ぐ月明かりと混ざり合い、部屋の中は青白く輝いていた。

エスデスは自室のベッドに横たわりながら、レオンの言葉を思い返していた。

彼の真摯な態度や、その瞳に宿る純粋さに、彼女自身がどれだけ影響されたのかを理解できずにいた。
ベッドの上に敷かれた鮮やかな赤いベルベットの上で、彼女の瞳は月明かりに反射して輝いていた。


その頃、魔王の間では密かな会話が交わされていた。シルフィーヌは魔王の前に立ち、その横顔には不安と警戒が浮かび上がっていた。
「父上、本当に彼を信用してもよろしいのでしょうか？」シルフィーヌは細く、しかし確かな声で問いかけた。

魔王は深く息をつき、答えた。
「私も完全に信用しているわけではない。しかし、この争いに終止符を打つための方法を探す必要がある。」

部屋の隅には、紫色の大きなカーテンが揺れていた。カーテンの隙間から、闇夜の星々がきらめいているのが見えた。

その夜、エスデスは城の庭園に足を運んだ。風が木々をさらりと揺らし、水面に映る月の光が彼女の顔を照らしていた。
彼女は深呼吸をし、自然の中で感じる安らぎに心を落ち着けた。

しかし、その静けさは長くは続かなかった。背後から足音が聞こえ、彼女は振り返ると、そこにはレオンが立っていた。
「こんな夜中に、何をしているの？」　彼女が尋ねた。

レオンは少し驚いたように、そして照れくさい笑顔を浮かべた。
「正直、あなたに会いたくて。」

エスデスは心の中でときめきを感じながらも、その感情を隠すように深く息を吸った。
「私もあなたともう少し話をしたかったの。」

二人は月明かりの下、長い間、心の中の思いを交わしながら話し続けた。

庭園には、四季折々の花々が植えられており、中でもエスデスが愛していたのは、夜になると咲き始める月の花だった。
その花は、純白の花びらが、まるで月のように、夜の闇を柔らかく照らしていた。

レオンはエスデスの視線の先にある月の花に気付き、その花を摘んで彼女に手渡した。
「あなたのように、夜にも美しく輝いている花ですね。」

エスデスは花を受け取りながら、少し赤くなって答えた。
「ありがとうございます。この花は私の宝物のようなものです。」

二人はその後、庭園のベンチに腰掛け、さまざまな話題に花を咲かせた。
エスデスは、魔王城での生活や、シルフィーヌとの姉妹の絆、そして未来の夢について語った。

レオンもまた、ラグリア王国での生活や、和平のための使命感、そしてエスデスへの想いを打ち明けた。

その中で、エスデスはシルフィーヌのことを心配していることを感じ取った。
「シルフィーヌ姉さまは、いつも強く振る舞っていますが、心の中では色々と悩んでいるんです。彼女は、この戦争の影響で多くのものを失ってしまったのです。」

レオンは静かに彼女の言葉を聞き、深く頷いた。
「私も、戦争のせいで家族を失った経験があります。だからこそ、二人で力を合わせて、この戦争に終止符を打つ方法を見つけたいと思っています。」

エスデスはレオンの言葉に心を打たれ、彼の手を握りしめた。
「私も、あなたと一緒に、新しい未来を築いていきたいです。」

その夜、二人は共に新しい誓いを立てたのだった。