神堕ちのランドスケープ ～魔王の第２王女は澱みなく～

第３話 「和平の証」

夜が明け、魔王城は朝の光に包まれていた。

太陽の光は、高い天井から透き通ったステンドグラスを通して部屋に降り注ぎ、床を彩り豊かに照らしていた。
エスデスは、豪華な朝食のテーブルに座り、目の前に広がる料理を眺めながら、昨夜の出来事を思い出していた。

一方、シルフィーヌは彼女の隣で、何か考え込むような表情を浮かべていた。
「シルフィーヌ姉さま、何か心配事があるの？」エスデスが姉の様子を気にして声をかけると、

シルフィーヌは少し目を細めて答えた。
「エスデス、あなたはレオン王子を信じているの？」

エスデスは驚いてシルフィーヌを見つめた。
「はい、私は彼を信じています。彼の瞳には、嘘をついているような気配は感じられなかったから。」

シルフィーヌは深くため息をついた。
「私はまだ、彼の真意を見極めることができていない。でも、エスデスが彼を信じるなら、私も少し信じてみようかと思っている。」

その後、エスデスとレオンは城内の資料室で、和平交渉の具体的な内容を話し合うことになった。資料室は、年代物の古書や地図で溢れており、深い香りが漂っていた。
大きな書斎のテーブルの上には、ラグリア王国と魔王城の境界線を示す地図が広げられていた。

レオンは地図を指差しながら説明を始めた。
「ラグリア王国と魔王城の境界線は、この青い線で示されています。私たちは、この線を変更することなく、和平を築いていきたいと考えています。」

エスデスは真剣に彼の言葉を聞き入れながら、自らの意見も述べた。
「私たちも、争いを避けるために、境界線を変更することなく和平を進めていきたいと思っています。しかし、具体的な条件や取り決めについては、もう少し詳しく話し合いたいと考えています。」

レオンは頷きながら答えた。
「もちろん、具体的な条件については、両国が納得する形で決定していきたいと考えています。」


二人は、和平交渉の詳細について何時間も話し合った。その間、エスデスはレオンの真摯な態度や、彼の言葉に込められた熱意に触れることができ、彼をさらに信頼することができた。

夜が近づくと、魔王城のホールで、エスデスとレオンのための晩餐会が開かれた。
多くの人々が集まり、エスデスとレオンはその中心として、和平の未来を祝福されたのだった。
晩餐会の会場は豪華なシャンデリアで照らされ、細やかな刺繍の入ったテーブルクロスや、きらめく金銀の食器が並んでいた。
窓からは、夜の風が心地よく流れ込み、キャンドルの炎が揺らめいていた。

エスデスは、深紅のドレスに身を包み、その美しさで会場の多くの目を引きつけていた。レオンもまた、青い瞳がさらに輝きを増しており、彼の側に立つエスデスは、多くの羨望の視線を浴びせられていた。

シルフィーヌは、エスデスの隣で、黒いドレスに身を包んでいた。彼女の静かな美しさは、エスデスの華やかさとは異なる、凛とした魅力を放っていた。

魔王も晩餐会に出席しており、その威厳ある姿は、多くの人々を圧倒していた。
彼は、レオンに微笑みかけながら言った。
「我が国とラグリア王国との和平が、二人のおかげで進展している。真摯な努力を評価している。」

エスデスは、父である魔王の言葉に胸を打たれた。彼女は、この和平交渉が成功することで、多くの人々の命が救われることを強く願っていた。

晩餐会が進む中、エスデスとレオンは、会場のバルコニーで、ひとときの静かな時間を過ごした。二人の間には、言葉にならない確かな絆が生まれていた。


エスデスはレオンの目を見つめながら、柔らかく微笑んだ。
「私たちは、新しい歴史を築くことができる。」

レオンもまた、エスデスの手を握りしめて答えた。
「私も、その未来を信じています。」



二人に不安はなかった。　　　　　　今は・・・。