産業創世記 ギデオン(休載中)

初書 ミタ

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第1章 監獄の住人1-16

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ここは、18世紀半ばの大英帝国の薄暗い路地裏。
まだ、陽も上がらない午前浅く、10代と思われる青年は

その日、酔った窃盗団の頭領が忘れていった皮袋を手にしていた。
半年くらい前から、3つ年下の彼の妹は体調を崩しており、

原因はわからないが、死んでしまうのではないかと心配だった。
乞食同然の彼、ライアンに助ける方法が無かった。

だが、頭領の皮袋には山のような宝石が入っていた。

ライアンはこんな生活から抜け出したかった。
自分が無理でも、せめて妹だけはまともな生活をさせてやりたかった。

このチャンスに、妹を腕のいい医者に見せてやりたかったが、代金が
宝石では明らかに怪しい。だから闇の医者を探していた。


高級住宅街の一角を妹を背負って歩いていた。

「こんなにも軽くなるなんて、」

妹の病気が心配だった。

自分たちの住んでいる、汚泥と糞尿にまみれた街と
ここはなぜこれほどまでに違うのだろうか。

日曜日の教会で、憎きブルジョアと叫ぶ
神父の言葉が、肌に凍みる。

10月のマンチェスターは、夜明け前という事もあって、
凍えるような寒さだ。

ライアンの着ている、穴だらけの
薄いシャツとぼろぼろの半ズボンで耐えるには
かなりの忍耐を要する。

それは妹も同じだろう。

15分ほど歩き続けると、目的の闇の医者が見えてきた。
これだけの宝石があれば、ずっと暮らしていけるだろう。
妹を置いていくのは心苦しいが、自分が盗賊団に捕まれば、

妹も見せしめに殺されるだろう。
闇医者とて鬼ではないだろう、これだけの報酬を払えば大丈夫なはずだ。
そう思い決意を固め叫んだ。

「夜分すみません、開けてください、ドアを開けてください。」

アデルは早朝、外で物音がするような気がして起きた。
寒さで乾燥した空気が絡みつき、喉がひりつく様だ。

ベッドの脇においてある陶器製の水差しから、陶器のコップに
水を注ぐと、流し込むように飲み込んだ。

のどの痛みは少しましになったようだ。

元々、ユダヤ人貧民街ゲットーで、塵を拾って暮らしていたが、
この家の主のガブリエルに、治療をしてもらったとき、

支払えるお金も無く、おそらく主である医者が同情したのだろう、
幸運なことにゲットーの外の医者の家で住み込みで、
現在は、看護婦のような仕事をしている。

ユダヤ人がこんなところに暮らしているのは重大なリスクだ。
大英帝国ではユダヤ人への差別も少なく、寛大なほうだ。

これがフランスやスペインならいつ殺されてもおかしくない。

2階にある自室の窓を開けてみると、ドアの前にボロボロの服を着た
乞食にしか見えない兄妹が座り込んで、大声で必死に叫んでいた。
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