産業創世記 ギデオン(休載中)

初書 ミタ

文字の大きさ
9 / 61
第1章 監獄の住人1-16

しおりを挟む


8歳のとき、父親の勧めで、

ハノーファのハッペンハイム銀行に仕え、

臆病でありながらも聡明であり、

何よりも慎重であった。


ハッペンハイム家をして、

その天凛を覗き見ることができた。

その才能を買われ、

ハッペンハイムの本拠地、

大英帝国へ来たのは12歳のときだ。


正直、英語は話せるが、ドイツ訛りがあり、

滑舌とは言いがたかった。



ハノーファ家はドイツの地方領主であった、

その財産管理を任されて、

側近として実務を行っていたのが、

ハッペンハイム家である。

大英帝国の血縁ではあるが、単なる田舎貴族だ。

だが、アン女王の逝去により大英帝国の

王冠を戴くようになった。

即位したジョージ一世は英語が話せず、

宮廷ユダヤ人として同行した、

ハッペンハイムが大英帝国のユダヤ人を

使い政治経済を動かしていた。

それはジョージ2世の時代も同じだった。



ハイヤーハムシェルは自身が組織に

「高く」、いや、「非常に高く」

評価されているのは知っていた。

マンチェスターでの取引の多くを占める綿製品のほとんどを

任されていると言って良い。

15歳にして経営中枢に入り、

貴族であるキデオン卿や大商人ホォーバーグ卿とも会えるほどだ。



ハイヤーハムシェルはハッペンハイム卿の指示した通り、

マンチェスターのゲットーへとやってきた。





建物に入ると最前列の木製の椅子に、何かがいた。


「やぁ、ハイヤーハムシェル。時間に遅れるとは契約に従順な

ユダヤ人にしては珍しいな。早朝から待っていて日暮れ前だ。

尤もその分、多くの時間を神への祈りに捧げられたがね。」



「感謝しとるよ。」



黒服の男性は、粗雑で硬い椅子に長時間座っていたためか、

少し体が痛いそぶりを見せながら、ゆっくりと立ち上がった。



少し、歩み寄り3mほどまで近づいたとき、

ハイヤーハムシェルは腰を深く折り、頭を下げた。


     「真に申し訳ありません。馬車が遅れてしまいました。」


ハイヤーハムシェルは素直に謝罪した。本当に申し訳ない。

待っていたのが、かなり高齢の方であり、真っ暗闇で

一人で半日待っていたことを考えれば、当然の感情だ。

暗がりに目が慣れると、ラビだとわかった。




「いったい、なぜ私はここに呼び出されたのでしょうか?」





大体、接待役についてだろうとは想像できたが、

直接、言葉として聞くことは大切だ。推測は時として

致命的なミスを生む。だから、


「私は聡明だ、推察できる。」


などと言う態度は微塵を見せず、尋ねてみた。



すると、老人は高価そうな装飾された箱の封印を解き、

蝋で閉じた、一枚の手紙を手渡してきた。


それを読んだときの衝撃を隠せた自信は無かった。

「ナスィ」とはヘブライ語で、「トップ」の意味だ。

シメオン族のトップは族長、

イスラエル王国のトップは当然、「国王」

天地万物のトップは「神」である。

色々な意味のある言葉ではあるが、

ここでの、「ナスィ」はある一族のことだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

後の祭り 

ねこまんまときみどりのことり
ライト文芸
 母親を馬車の事故で亡くしたナズナは、馬車に乗っていた貴族の男性に、義理の娘として引き取られた。引き取られた先の子爵邸では、義母や義妹に傷付けられて泣いて過ごすこともあったが、懸命に生きていく。引き取られた裏には、別の理由もあったようで。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

生きるために逃げだした。幸せになりたい。

白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。 2020/9/19 第一章終了 続きが書け次第また連載再開します。 2021/2/14 第二章開幕 2021/2/28 完結

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...