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第1章 監獄の住人1-16
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しおりを挟む8歳のとき、父親の勧めで、
ハノーファのハッペンハイム銀行に仕え、
臆病でありながらも聡明であり、
何よりも慎重であった。
ハッペンハイム家をして、
その天凛を覗き見ることができた。
その才能を買われ、
ハッペンハイムの本拠地、
大英帝国へ来たのは12歳のときだ。
正直、英語は話せるが、ドイツ訛りがあり、
滑舌とは言いがたかった。
ハノーファ家はドイツの地方領主であった、
その財産管理を任されて、
側近として実務を行っていたのが、
ハッペンハイム家である。
大英帝国の血縁ではあるが、単なる田舎貴族だ。
だが、アン女王の逝去により大英帝国の
王冠を戴くようになった。
即位したジョージ一世は英語が話せず、
宮廷ユダヤ人として同行した、
ハッペンハイムが大英帝国のユダヤ人を
使い政治経済を動かしていた。
それはジョージ2世の時代も同じだった。
ハイヤーハムシェルは自身が組織に
「高く」、いや、「非常に高く」
評価されているのは知っていた。
マンチェスターでの取引の多くを占める綿製品のほとんどを
任されていると言って良い。
15歳にして経営中枢に入り、
貴族であるキデオン卿や大商人ホォーバーグ卿とも会えるほどだ。
ハイヤーハムシェルはハッペンハイム卿の指示した通り、
マンチェスターのゲットーへとやってきた。
建物に入ると最前列の木製の椅子に、何かがいた。
「やぁ、ハイヤーハムシェル。時間に遅れるとは契約に従順な
ユダヤ人にしては珍しいな。早朝から待っていて日暮れ前だ。
尤もその分、多くの時間を神への祈りに捧げられたがね。」
「感謝しとるよ。」
黒服の男性は、粗雑で硬い椅子に長時間座っていたためか、
少し体が痛いそぶりを見せながら、ゆっくりと立ち上がった。
少し、歩み寄り3mほどまで近づいたとき、
ハイヤーハムシェルは腰を深く折り、頭を下げた。
「真に申し訳ありません。馬車が遅れてしまいました。」
ハイヤーハムシェルは素直に謝罪した。本当に申し訳ない。
待っていたのが、かなり高齢の方であり、真っ暗闇で
一人で半日待っていたことを考えれば、当然の感情だ。
暗がりに目が慣れると、ラビだとわかった。
「いったい、なぜ私はここに呼び出されたのでしょうか?」
大体、接待役についてだろうとは想像できたが、
直接、言葉として聞くことは大切だ。推測は時として
致命的なミスを生む。だから、
「私は聡明だ、推察できる。」
などと言う態度は微塵を見せず、尋ねてみた。
すると、老人は高価そうな装飾された箱の封印を解き、
蝋で閉じた、一枚の手紙を手渡してきた。
それを読んだときの衝撃を隠せた自信は無かった。
「ナスィ」とはヘブライ語で、「トップ」の意味だ。
シメオン族のトップは族長、
イスラエル王国のトップは当然、「国王」
天地万物のトップは「神」である。
色々な意味のある言葉ではあるが、
ここでの、「ナスィ」はある一族のことだろう。
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