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第1章 監獄の住人1-16
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しおりを挟むそれから、1ヵ月半の航海の後、アルジェに到着した。
約束されていた 「帆船」は20隻確かにあった。
予想していたが度肝を抜かれた。
どうやってこんな短期間に戦闘用の大型帆船
を新造したのか、想定の範疇を超えていた。
だが乗組員はいない。
乗ってきた船の乗組員は、ある程度熟練だ。
「まともに、動かせるのは1隻だけか。」
これからこなす難行を思うとラッセルの気分は
強烈に重かった。新しい船の名前は決めた。
とりあえず、ハルバリア王ウルージに謁見だ。
「共にキリスト教徒から逃げてきた者ではありませんか!」
グラツィアは誇り高きバルバリア王に侮辱とも取れる言葉を叫んでいた。
ラッセルは内心(あちゃー)などと思いつつ、グラツィアの発言を聞いていた。
彼らは、いちおう海賊。だが国王でもある。
ウルージ王とその弟 赤ひげハイレディンだ。
「逃げてきただと、ふざけるな!」
ウルージ王は激昂して怒り狂いながら、吐き棄てた。
女で無ければ確実に殺されていただろう。
それをなだめる温厚な弟ハイレディン。
そのグラツィアが誰か紹介したい人がいる、らしい。
「こちらは、イングランドのジョンラッセル殿です。」
ラッセルはヴァチカンの高速艇に振り回され、
情報戦で敗北している、イスラムを知っていた。
グラツィアのおかげで、命をかけた芝居を打つ必要が
ありそうだ。(あー怒ってるよ)
「失礼だが、貴殿、身分は?」
かつては平民の貿易商だったが、今騎士だ。
しかし、元平民の騎士だと明かすと、
ウルージは怒髪天を突く勢いで暴れだした。
「なめられたものだ。海賊とそしられようと
オスマン帝国の要衝アルジェを治めるバルバリア王に
イングランドは、一介の騎士を使節として送るのか!」
周囲のいかにもと言う古強者の船乗りがウルージを押さえ込む。
王弟ハイレディンがあわててウルージに報告する。
「しかし、スレイマン大帝の書状、侍従医ハモンの推薦もあります。
ハモン殿のは懇願と言っても良いでしょう。しかもかのスィナン・パシャは
彼女の家来です。」
ウルージの意志ははっきりしている。
「それがどうした!それはグラツィア女史にであって、
この騎士殿とは無関係だ。」
落ち着きを取り戻したウルージは礼を失せぬ程度に
平民騎士ジョン・ラッセルを軽蔑していた。
イングランドはなんと言う失礼な国家だ。
国王は逝かれ野郎か。
すると、不敵にもラッセルは笑い出した。
「ふっ、巷では噂になっておりますぞ。
ヴァチカンのスパイ船に振り回され、
海賊行為もままならぬとか、船は不足している。
私は必要でしょう。」
さすがのウルージも、騎士ラッセルが生命を賭している事は分った。
だから男として挑発に乗ってやることにした。
「ふん、無礼な奴だ。貴殿に高速情報艇の拿捕ができると言うのだな。
言って置くが、1度失敗すれば、その命貰い受ける。」
「いいでしょう。あなた方の協力があれが今すぐに可能です。
あいにく私の船は1隻でね。恐怖で支配し使役するガレー船の時代は
終わりです。それでは真のチームは生まれない。」
「兄じゃ、協力は俺がしよう。」
「分った、お前が行け。」
「だが、これは海の男としてではなく、王としての疑問だ。
なぜ同じキリスト教徒が、我々ムスリムに協力する?」
「疑問はごもっともです。陛下。」
ラッセルとしてもこれを説明できねば、
協力どころの話では治まらないだろう。
「イングランドはトルデシャリスの枠から締め出されました。
これは海洋国家にとって致命的、しかもイスパニアはベルナンブコで
銀を、ポルトガルはケープで金を発見した。」
ラッセルは続けた。
「今までは、教会が金を管理し、純度が変わらないため、
安定しており強かったのです。地方領主が銀を扱い、含有量をごまかして
流通させ、庶民も銀で商業取引をしている。生活の基盤である銀が
大量に持ち込まれ暴落すれば、すさまじい、物価の高騰です。」
「ここからはグラツィア女史からの知識でもあるのですが、
フッガー家はいくつかのキリスト教領主を教皇庁から離反させようとしている。
彼らの目的は金の流入による金の暴落です。大航海時代にレコンキスタ、
目的はご存知ですか?」
「いや、知らん。」
ウルージは荒くれ男の欠片もない態度、
完全に、オスマン帝国のバルバリア王という立場で聞いている。
では、
「イスラムの握るアジア、アフリカの交易ルートを無視し、無力化すること
そして、ヴァチカンの威信回復のため、再度エルサレムの奪還を図ることです。
バルバリア王国にはイスパニアの銀を沈めて頂きたい。」
「不可能だ。航路の特定が出来なければどうしようもない。」
ウルージは苦しげに言った。
「いえ、ヨーロッパの陸路は自殺行為、セウタ海峡を押さえればいい。
地中海に持ち込ませなければ決定打とはなりえない。」
ウルージは感心しながら言った。
「ムムム、正論だ。」
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