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第1章 監獄の住人1-16
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しおりを挟むそれから、グラツィアとラッセルは歓待を受けた。
ラッセルはイスラム教徒は酒は飲まないと知識として知っていたが
海賊は飲むようだ。頭の隅にメモしておいた
(まあ、酒を飲めば、口が軽くなるからな。
単なる歓待というわけではないだろう。)
ウルージのガレー船は浅瀬で待機していた。
「ハイレディン提督、本当に高速艇は浅瀬に来るんですかい?」
副官の船乗りが言った。
「信じるしかあるまい。」
ハイレディンは答えた。ラッセルの命がかかっているのだ。
彼の行くその道の先を見てみたい、そう思える人物だ。
ラッセルの幸運を信じるしかないだろう。
ヴァチカン高速艇は何の警戒もせず、航行していた。
風下に巨大な船影があることも気がつかないほどに
油断していた.
「伝令、風下に船影。」
「例のバルバリア海賊か。」
船長が尋ねた。
「いえ、大型帆船です。船名ミドルトン号。」
「確か、英語で、ぱっとしない と言う意味か?聞かない名だな。」
船員達はその意味を知ると笑い出した。
だが、見張りは違った。
「速い、航路に入ってきます。」
見張りが報告するよりも速い速度でラッセルは行動を起こしていた。
「ダッキング航法です。」
「何だと、あれは100人近い人間がひとつになってできる
高度な技術、バルバリア海賊などではない、おそらく列強の正規海軍だ!」
「逃げるにも逃げられません。交戦許可を!」
ミドルトン号艦上
「ヤード引き込み面舵いっぱい、船首風上ヨーソロー。」
「おうっ、ヤード戻せ。」
「敵、ミッシングステー。」
ラッセルは勝ちを確信した。
「葡萄弾、水平射撃、カルバリン右舷全門撃てっ!」
「直撃8 至近弾3」
「敵反撃ありません。」
ヴァチカン高速艇
「船員を狙っているぞ。糞ッ高威力のカノン砲は上にしか撃てない。
やられた、失策だ、逃げるぞ。
幸い敵喫水線は深い、浅瀬に逃げ込め。」
(大航海時代の大砲は砲撃すると反動で
大砲が船に突っ込んできて壊れたり、
人が挟まれたり潰されて死ぬので、
簡単に撃てるものではないのです。)
「提督、す、すぐそばに ガレー船、接舷されます。」
高速艇は複数の乗員を含め拿捕された。
ハイレディンは、ラッセルのミドルトン号に向け、力強く手を振った。
「まさか、本当に浅瀬に追い込むとはな。末恐ろしい。」
アルジェに帰還した、ラッセルとハイレディンはお互いの肩をたたきあった。
ヴァチカンの情報艇の乗員を尋問した結果、有益な情報が得られた。
それにこれで海賊業を再開できる。兄じゃの機嫌も直るだろう。
「ラッセル殿、私の使役しているキリスト教徒の奴隷で
気に入った奴がいれば、乗組員として連れて行ってもいいぞ、
ガレー船とはいえ熟練の奴らだ。役に立つだろう。」
ハイレディンは大声で笑った。
「感謝する。」
ラッセルはそう言うと船員のスカウトに向かった。
提督!そう言うと副官がハイレディンに耳打ちした。
「この船の情報を持っていけば、ラッセル殿をスレイマン大帝に
認めさせうるかも知れんな。たいした御仁だ。」
グラツィアは、ハモンに向けて、手紙を書いていた。
「大帝陛下、グラツィア・ナスィより書状です。」
ハモンが手紙を差し出す。
「なぜ、イブラヒムのいるところで?」
疑問に思ったが手紙を開く。
「血か、血をインクとしているのか。」
大宰相イブラヒム
「ユダヤ人が血のインクとは、我々を侮辱しているのか!」
「お待ちください!」
スィナンはハモンに指示されたものを持って
声を上げた。
「何だ、申せ、スィナン。」
「これは、我がイスラムに逃れてきた者たちから受け取ったものです。
血の書状、ここにあるだけで300枚以上、わずか6年の間にです。
おそらく、まだ幼い頃から。」
スレイマン大帝は少し考え込み、発言した。
「わかった、イングランドへの支援、前向きに考えよう。」
大公イブラヒムはヴァチカンとつながっていた。
悪い予感はしたが言うしかなかった。
「ヴェネチアとの同盟はどうなされるのですか?」
大帝は宣告した。
「インド航路の発見、我は与り知らぬ。
ヴェネチアは知っていて隠した、裏切りだ。
貴様、生きておられると思うなよ。」
「ひぃっ。」
そう言うとイブラヒムは腰を抜かして倒れ込んだ。
「我は思う、この血の書状の重みに嘘はないとな。」
これにより、オスマン帝国とイングランドの同盟は成った。
稀代の海賊にしてオスマン海軍創設者ハイレディンと、
イングランド救国の英雄ジョンラッセル、
そして、ティベリアの乙女グラツィアナスィのお話です。
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