17 / 61
第1章 監獄の住人1-16
16
しおりを挟むそれから、グラツィアとラッセルは歓待を受けた。
ラッセルはイスラム教徒は酒は飲まないと知識として知っていたが
海賊は飲むようだ。頭の隅にメモしておいた
(まあ、酒を飲めば、口が軽くなるからな。
単なる歓待というわけではないだろう。)
ウルージのガレー船は浅瀬で待機していた。
「ハイレディン提督、本当に高速艇は浅瀬に来るんですかい?」
副官の船乗りが言った。
「信じるしかあるまい。」
ハイレディンは答えた。ラッセルの命がかかっているのだ。
彼の行くその道の先を見てみたい、そう思える人物だ。
ラッセルの幸運を信じるしかないだろう。
ヴァチカン高速艇は何の警戒もせず、航行していた。
風下に巨大な船影があることも気がつかないほどに
油断していた.
「伝令、風下に船影。」
「例のバルバリア海賊か。」
船長が尋ねた。
「いえ、大型帆船です。船名ミドルトン号。」
「確か、英語で、ぱっとしない と言う意味か?聞かない名だな。」
船員達はその意味を知ると笑い出した。
だが、見張りは違った。
「速い、航路に入ってきます。」
見張りが報告するよりも速い速度でラッセルは行動を起こしていた。
「ダッキング航法です。」
「何だと、あれは100人近い人間がひとつになってできる
高度な技術、バルバリア海賊などではない、おそらく列強の正規海軍だ!」
「逃げるにも逃げられません。交戦許可を!」
ミドルトン号艦上
「ヤード引き込み面舵いっぱい、船首風上ヨーソロー。」
「おうっ、ヤード戻せ。」
「敵、ミッシングステー。」
ラッセルは勝ちを確信した。
「葡萄弾、水平射撃、カルバリン右舷全門撃てっ!」
「直撃8 至近弾3」
「敵反撃ありません。」
ヴァチカン高速艇
「船員を狙っているぞ。糞ッ高威力のカノン砲は上にしか撃てない。
やられた、失策だ、逃げるぞ。
幸い敵喫水線は深い、浅瀬に逃げ込め。」
(大航海時代の大砲は砲撃すると反動で
大砲が船に突っ込んできて壊れたり、
人が挟まれたり潰されて死ぬので、
簡単に撃てるものではないのです。)
「提督、す、すぐそばに ガレー船、接舷されます。」
高速艇は複数の乗員を含め拿捕された。
ハイレディンは、ラッセルのミドルトン号に向け、力強く手を振った。
「まさか、本当に浅瀬に追い込むとはな。末恐ろしい。」
アルジェに帰還した、ラッセルとハイレディンはお互いの肩をたたきあった。
ヴァチカンの情報艇の乗員を尋問した結果、有益な情報が得られた。
それにこれで海賊業を再開できる。兄じゃの機嫌も直るだろう。
「ラッセル殿、私の使役しているキリスト教徒の奴隷で
気に入った奴がいれば、乗組員として連れて行ってもいいぞ、
ガレー船とはいえ熟練の奴らだ。役に立つだろう。」
ハイレディンは大声で笑った。
「感謝する。」
ラッセルはそう言うと船員のスカウトに向かった。
提督!そう言うと副官がハイレディンに耳打ちした。
「この船の情報を持っていけば、ラッセル殿をスレイマン大帝に
認めさせうるかも知れんな。たいした御仁だ。」
グラツィアは、ハモンに向けて、手紙を書いていた。
「大帝陛下、グラツィア・ナスィより書状です。」
ハモンが手紙を差し出す。
「なぜ、イブラヒムのいるところで?」
疑問に思ったが手紙を開く。
「血か、血をインクとしているのか。」
大宰相イブラヒム
「ユダヤ人が血のインクとは、我々を侮辱しているのか!」
「お待ちください!」
スィナンはハモンに指示されたものを持って
声を上げた。
「何だ、申せ、スィナン。」
「これは、我がイスラムに逃れてきた者たちから受け取ったものです。
血の書状、ここにあるだけで300枚以上、わずか6年の間にです。
おそらく、まだ幼い頃から。」
スレイマン大帝は少し考え込み、発言した。
「わかった、イングランドへの支援、前向きに考えよう。」
大公イブラヒムはヴァチカンとつながっていた。
悪い予感はしたが言うしかなかった。
「ヴェネチアとの同盟はどうなされるのですか?」
大帝は宣告した。
「インド航路の発見、我は与り知らぬ。
ヴェネチアは知っていて隠した、裏切りだ。
貴様、生きておられると思うなよ。」
「ひぃっ。」
そう言うとイブラヒムは腰を抜かして倒れ込んだ。
「我は思う、この血の書状の重みに嘘はないとな。」
これにより、オスマン帝国とイングランドの同盟は成った。
稀代の海賊にしてオスマン海軍創設者ハイレディンと、
イングランド救国の英雄ジョンラッセル、
そして、ティベリアの乙女グラツィアナスィのお話です。
0
あなたにおすすめの小説
後の祭り
ねこまんまときみどりのことり
ライト文芸
母親を馬車の事故で亡くしたナズナは、馬車に乗っていた貴族の男性に、義理の娘として引き取られた。引き取られた先の子爵邸では、義母や義妹に傷付けられて泣いて過ごすこともあったが、懸命に生きていく。引き取られた裏には、別の理由もあったようで。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
生きるために逃げだした。幸せになりたい。
白水緑
ファンタジー
屋敷内に軟禁状態だったリリアは、宝物を取り戻したことをきっかけに屋敷から逃げ出した。幸せになるために。体力も力もない。成り行きに身を任せる結果になっても、自分の道は自分で選びたい。
2020/9/19 第一章終了
続きが書け次第また連載再開します。
2021/2/14 第二章開幕
2021/2/28 完結
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる