RPG009 ペットはボコってHP1割以下にしてテイムします 改良版

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第1章

2 ウルティメットドラゴンを討伐せよ。その2

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「綺麗な森ね。」

そう言った露原の顔は険しかった。
森というものは雑草が生い茂り、無秩序に木々が乱立する場所なのだ。
つまり、『綺麗な』ということは何者かが管理しているということだ。
それなりに用心して先に進むと湿っぽい洞窟のような穴が
ぽっかりと開いていた。
大きな石がその穴をふさいでいたので、動かそうとしたが
おれたちの力では動きそうもない。
その石の隙間から姿を見せた生物がいた。
生物といってよいかわからないが、それがおれたちの求めていた
精霊、『カーバンクル』だった。
「豊さん、こいつらって何匹くらいいるのですか?」
数が少ないのなら簡単に殺すわけにはいかない。
「うーん、ゴキブリ並みの繁殖力だよ。小石が当たっただけで
死ぬからね。増えるのはすごく早い。」
俺はダメージを与えずにどう捕獲しようか悩んでいた。
なにしろ HP1 だ。
睡眠魔法は魔法なので反射するだろうし、麻酔針とかを
打ち込むと即死しそうだ。
だが、カーバンクルは生ける化石というくらいで、
だれも興味を示さなかったので、人間に対する警戒心は
ゼロだ。まだ、子供のようで少しかわいそうだが
ペットになれば長生きできる。
そう思い、俺たちが近づいた時だった、でかい岩が動き出した。



『ストーンゴーレム』だ。こいつは体力と物理防御が高く、
英島さんの魔法でないと倒せないだろう。
「肩に乗っている、カーバンクルが邪魔で魔法が撃てない。」
英島さんはそう叫ぶと、
「何とかなるか?露原くん。」
英島はそう俺の相方に声をかけた。
即答で
「無理です。」という答えだ。
「カーバンクルがゴキブリ並みにいるのなら、
全部倒すのは無理。」
「米原くんは?どうにかなる。」

「スラリンは打撃耐性ありますが、ゴーレムはきついでしょうね。」
「あーーー、もっと単純に倒せると思いますよ。」
俺はそう言うと近くにある石を拾い上げて、無防備なカーバンクルに
投げつけた。カーバンクルは即死だった。
「スズメやハトだって石を投げつければ逃げますよ。」
俺が石を投げまくって、カーバンクルが逃げ惑っている。
「あんたえぐいわね」
2人が声をそろえて言った。
カーバンクルの群れに石を投げつけまくってると怖がって
精霊カーバンクルはすべて逃げ出した。
中級範囲魔法でゴーレム5体は瞬殺された。
これで森を手入れする存在がいなくなって、
野生の動物やモンスターがすみついたらカーバンクルたちは
かわいそうだなと思いつつ、俺は洞窟に閃光弾を投げ込んだ。
ウサギは恐怖を感じると精神ダメージで心臓が止まって
死ぬことがあるそうだが、カーバンクルにその心配はなかった。
眩しさで目がくらみ、その場ですくみあがっていたカーバンクルを
数匹、個別のかごに入れて俺たちは実験、いや検証を始めた。
この世界には、継続ダメージをもつ魔法がある。
そしてそれらは、たいてい割合ダメージだ。
最大ヒットポイントの10%を5回とかだ。
『徐々に回復』や『毒』がそういう類だ。
カーバンクルが全魔法反射を発動させるのは、
身を守るためであり、ダメージがある場合だ。
と仮定した。ヒットポイント『1』のカーバンクルの
毒ダメージは『0』か『1』か、これは賭けだ。
おれたちは、カーバンクルを優しく抱きかかえると、
軽い毒薬、『ポイズンビール』を飲ませてみた。

ダメージは『ゼロ』だった。それどころか、酔っ払ったように
カーバンクルはおかわりを要求してきた。
今度は薬草を食べさせてみる。すぐに結果は出ないが、
交代制の不眠不休で、毒と回復を繰り返した。
「きゅ、きゅ~。」
カーバンクルは苦しそうな声をあげている。
「すんません、だんな。」
「すんません、だんな。」
誰かいるのか?何かの聞き間違いか?そう思い
ふと視線を下げるとカーバンクルの声だった。
大阪のおっさんのような口調でカーバンクルが話しかけてきたのだ。
「お前ら人間の言葉を話せるのか?」
「旦那は言葉がわかるんですかい!こんな非道な拷問はやめてくだせい。」
今にも死にそうな顔で懇願してくる。
「旦那は、わいら カーバンクルをテイムしたいんですよね。
それならいい方法があります。」
俺は続く言葉を催促した。
「卵から育てれば簡単にテイムできます。」
「苦し紛れの嘘じゃないだろうな。」
俺は疑り深くカーバンクルを見た。
すると露原が言った。
「スラリンも卵から孵ったらペットになってたでしょ。
別にテイムしてなかったし。」
「それもそうだな。よしわかった。卵5つで手を打とう。」
「今から作ります。」
「しかし、いくら苦しいからって、我が子を売り渡すとわな。」
さすがの俺もあきれるくらいドライな精霊だった。
「買う側の我々が言っても説得力ゼロだな。」
英島は冷静にそう言った。
ちなみに、「カーバンクルの死体」は魔法を反射しない。
死体が反射するなら、盾や鎧の材料として乱獲され、
今頃、絶滅危惧種に指定されているだろう。
薬漬けにされたカーバンクルは、目には見えないが
精神的な部分で病んでいるようで、
ポーションを飲ませると「キュ、キューッ」などと鳴きながら、
膝の上に乗ってきた。


卵をもらった俺たちは草原に出てモンスターを狩ることにした。
今回は範囲魔法を持つ英島が居るので俺たちはついていくだけの楽な戦いだ。
200匹ほどゴブリンやオーガを狩っていると
カーバンクルの卵が孵った。全魔法反射の特性を持ったペットの
『カーバンクル』は見た目がリスっぽいので、『クレインズ』と命名し仲間にした。
飼い主の魔法は反射しないので、これから色々と
役に立ってくれそうだ。
ああ、『クレインズ』というのはこの群体の呼称で、
『クレインA』から『クレインE」までいる。

俺と露原はビギニングビレッジに一軒しかない安酒場にいた。
ビギニングビレッジに一軒しか酒場がないわけではなく、
安酒場は一軒しかない。ここだけだ。
当然飲み食いの代金など、野宿生活者の俺たちに払えるはずもなく
代金は最近仲間になった、あいつ持ちだ。
クレイン共はポイズンビールの魅力に取りつかれたのか、
浴びるほど飲んでいる。もちろん薬草も食べれば元気いっぱい。
最大ヒットポイントが増えるので虚弱体質のクレイン達には
推奨したいくらいだ。まあ、本物のビールもアルコールから発生する
アセトアルデヒドは毒物そのものだし、クレインが中毒になるのも仕方ないか。
しばらく時間を潰していると、依頼主であり新しい仲間である『英島 とよ』がやってきた。
かの英島女史はさっそく『極龍』こと、ウルティメットドラゴンを乱獲する気満々だ。
ちなみに俺のレベルは レベル五だ。レベルといってもスキルの平均値なのらしく
よくあるレトロゲームのレベルとは違う。某オンラインゲームみたいなものだ。
英島が俺たちに約束した金額は半端なものではない。
失敗すれば破産状態、俺たちの仲間入りだ。
お金大好きな、英島にとってそれは死に等しいだろう。

この世界では、装備品に何か制限がかかっているということはなく
自由に装備可能だ、例えば『力20以上』とか『レベル50以上』
とか、『戦士職』などという条件はない。
ただ、戦士が杖を持ってもカッコ悪いし、杖は木製で攻撃力が低く
脆い。金属製のものは重いが丈夫だ。
そのため、高レベルの装備を揃えれば、それだけで即効で強くなる。
ドラゴンからは『龍燐』やドラゴンの皮『ドラゴンハイド』が獲れる。
うわさに聞く、龍燐の鎧やドラゴンローブの材料だ。
レベル30台の馬くらいの大きさのドラゴンの龍燐や竜皮でも非常に強く
稀少価値が高い。レベル255のドラゴンの龍燐や竜皮が性能面で
どのくらいなのかは想像を絶する。

ウルティメットドラゴンの攻撃のうち、『ドラゴンブレス』や『咆哮』
『地鳴らし』は魔法扱いらしくすべて反射する。
頻度は多くないが直接攻撃は黒魔法士の英島が『暗闇魔法』で何とかするらしい。
どうしてもだめなら大量にいるスライムが犠牲になる計画だ。
だから逃げ回って、直接、殴られなければいいだけだ。
クレインの住んでいた森の奥に洞窟があったが、その先に縦穴があり、
上ったところにちょっとした平野があり、そこに目当ての
ウルティメットドラゴンがいる。素手で露原が縦穴を登っていき
上からロープを垂らしてきた。それを上って山の頂上を見上げる位置に来ると
それは見えた。想定はしていたが想像を超えていた。
具体的なイメージを持たずにやってきた俺たちはただ茫然とそれを見上げていた。
でかい、ものすごくでかい。ジャンボジェットは生物ではないので平気だが
腹を空かせてよだれを垂らす巨大な猛獣には、ただ、ただ、恐怖を感じた。
ウルティメットドラゴンはそのアギトを大きく開くとおれたちの頭上を越えて
ここから直線で100キロメートルは離れているであろう連なる山脈を
『かじったリンゴ』のように吹き飛ばした。
「どこが雑魚なんだ!ボスだろ」
俺は震える膝で座り込みそうになるのを抑え、じっと耐えていた。
英島はこんな光景を目にしてもなお、アイテムと金貨を大量に得るため
戦おうというのだ。ある意味、勇者の素質を持っている。
ものすごい度胸で感覚のずれたやつだ。
「おぃおい、こいつと遣り合うのか?」
露原はそういうと頭をポリポリと掻いていた。
こいつは、そういう部分は竜騎士らしく、ドラゴンには驚かない。
何せこいつはこれを乗り物として見ているようで、
自転車程度にしか思っていないのだろう。こいつも勇者の素養がある。
お前はレベル15の槍戦士、スライム相手に無双できても、
スケルトンとは互角だろ、そう呟きながら、ペットのカーバンクルの
『クレインズちゃん』にすべての運命を託した。

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