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15.おとしもの
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元気の無い森の任務から数日。
だいぶ足も良くなってきた。日常生活には殆ど影響はないだろう。
琴子は怪我の療養と言う事で5日ほど休暇が与えられていたので、家の近くのあまり人通りの無い河川敷に来ていた。そこで琴子は歌を歌う。
昔は良く河川敷で歌の練習をしていたものだ。
「~♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜」
道行く人がその綺麗な歌声に聞き入りながら通り過ぎていく。
まさか琴子があの歌姫、黒蝶だなんて夢にも思わずに。
「ふぅ。スッキリした~」
ひと通り歌い終えて琴子は満足したようだ。
ふと、昔河川敷で歌の練習をしていた時、“お客さん”として誰かに付き合ってもらっていたような気がする。それは希空だったか來之衛だったのか、はたまた違う誰かだったのかは思い出せないが…ただ前者の2人では無かったような気がする。なぜなら希空が亡くなってしまった時、その“お客さん”に慰めてもらったような記憶もあるからだ。
「そうだ…あの日は満点の星空で、希空が死んでしまって悲しくて辛くて、悔しくて…」
深い深い、出口の見えない悲しみに苦しんでいた時、いつものように河川敷で歌を歌っていたら、当たり前のようにその“お客さん”もいて、慰めてくれた。その日は満天の星空だったから、私の心を救ってくれた彼を、お姫様を救うおとぎ話に出てくる王子様みたいだと思って…
「星の王子様」
そうだその“お客さん”を星の王子様と呼んだんだ。
「ふふ、なんで今そんな事を思い出すんだろう」
温かい思い出に琴子はくすりと微笑む。
「歌…上手いな」
突然第三者の声がしてきて琴子は驚き小さな悲鳴をあげる。
「ひっ!!!?」
見ると2mくらい先に河川敷に横たわる男性がいた。歳は20代前半くらいだろうか、綺麗な水色の肩くらいまで伸びている髪に端正な顔立ちの男性だった。河川敷は草っ原になっていて草に隠れて横たわる男性に今まで気づかなかったのだ。
「黒蝶の声に似てるな」
そんな男性の言葉に内心はらはらしながらも、琴子はありがとうと答えた。すると綺麗な水色の髪を靡かせて男は起き上がると立ち上がりそれからそのまま去っていった。
「びっくりした~」
にしても綺麗な男の人だなと思った。隊長の玲音も端正な顔をしているが、玲音はパッチリした瞳に左目の下には泣きぼくろがあり、ほんのり色気がある。さっきの男性は切れ長の瞳で美人風だった。どちらもイケメンに変わりはないが…。
ふとさっきいた男性の所に何かが落ちている。
「!!!」
落ちていたのは手帳だった。今時、手帳を持っているなんて珍しいなと思いながらもそれを拾い上げると中からひらりと紙が落ちてきた。
それは写真だった。さっきの男性ともう1人…女の人が笑顔で写っている。
「これは…」
手帳を持っているのは珍しい。なぜなら現在は殆どが電子化されているため、電子手帳の人が大半だからだ。よく見るとその手帳は使い古されていて、もしかしたらとても大事なものなのかもしれないと琴子は思った。そしてこの写真も…。
「届けなきゃ」
急いで後を追うも男性の姿はなく、手がかりが無いまま次の日を迎えたのだった。
実に5日ぶりに現場に復帰した琴子。
すぐに花凜が話しかけてきた。
「琴子ちゃん、大丈夫??」
「うん!もうすっかり大丈夫だよ」
心配そうな顔をしていた花凜は琴子の様子を見て安堵したようだ。
「そっか、よかった。それじゃ、私はこれから巡回に行ってくるね!」
そう言って複数の隊員と出かけていった。
琴子はそのまま隊長、玲音の元へとあいさつに向かう。
「隊長、復帰しました。またよろしくお願いします」
「もう大丈夫なのか?」
玲音もさっきの花凜と同じように心配そうに琴子を見る。
「はい!もうすっかり大丈夫です」
「そうか…そんじゃ、復帰して早々なんだが任務だ!」
玲音はにっと笑みを向けた。
今回の任務は1週間後に行われるらしい。
『聖女』様の護衛らしい。
「聖女様…ですか???」
この国に聖女が居ることを琴子は初めて知る。
「そう呼ばれているけど、正式なものではないよ、呼び名みたいなものかな?」
玲音はやや曖昧に言った。
「簡単に言うとアンノウンなんだ。その能力が強力で国に保護されてるんだよ」
それだけで『聖女』なんて呼ばれるのかな?と琴子は疑問に思う。
そんな琴子に玲音は付け足す。
「2年前、エウスは魔族に侵攻されつつあった。エウスの兵士達は疲弊し、もうダメかと思った時、後に『聖女』と呼ばれる彼女がその力で魔族を退けたんだよ。それがきっかけで『聖女』と呼ばれるよつになったんだ」
「そうなんですか…でもそんな話し聞いたことも、そんな事が起こっていた事も私は知りませんでした…」
2年前の事なら琴子だって耳にしているはずだ。しかも国を揺るがすようなそんな出来事。
しかし、そんな戦いがあった事も、『聖女』様のことも全く知らなかった。
「まぁ…その出来事は空間を操れる力を持つ人が魔族ごと空間に移動させ、そこで戦っていたからエウスへの直接の被害は無かったし、聖女の力は強力だったから外にその力の事を漏らしたくなかったのと人々の混乱を防ぐために、あの時は徹底的に情報を操作していたからな」
「え…そんな話…私が聞いても大丈夫なんですか??」
「ガーディアンだから大丈夫だよ」
そうなのか…と琴子は納得したのだった。
「まぁ…魔族を唆し、エウスに仕向けた黒幕は人だったんだけどな」
「その黒幕は…」
「誰かは分からない、ただエウスをあそこまで危機に陥れたのだから内通者がいたと見ているし、魔族も黒幕についてエウスの人間であると言っていた」
玲音の瞳に怒りが見える。
「俺はその黒幕を絶対に捕まえてみせる」
よっぽどその黒幕を許せないのだろう。だから琴子は玲音の力になりたいと思った。自分じゃ力不足かもしれないけど。
「私も隊長のお手伝いさせて下さい」
真剣な瞳で玲音を見つめる琴子に驚いたような顔をした後、彼は嬉しそうに笑った。その笑顔に琴子はドキッとした。
「頼もしいな!その時は頼んだぜ!」
「はい!」
だいぶ足も良くなってきた。日常生活には殆ど影響はないだろう。
琴子は怪我の療養と言う事で5日ほど休暇が与えられていたので、家の近くのあまり人通りの無い河川敷に来ていた。そこで琴子は歌を歌う。
昔は良く河川敷で歌の練習をしていたものだ。
「~♪。.:*・゜♪。.:*・゜♪。.:*・゜」
道行く人がその綺麗な歌声に聞き入りながら通り過ぎていく。
まさか琴子があの歌姫、黒蝶だなんて夢にも思わずに。
「ふぅ。スッキリした~」
ひと通り歌い終えて琴子は満足したようだ。
ふと、昔河川敷で歌の練習をしていた時、“お客さん”として誰かに付き合ってもらっていたような気がする。それは希空だったか來之衛だったのか、はたまた違う誰かだったのかは思い出せないが…ただ前者の2人では無かったような気がする。なぜなら希空が亡くなってしまった時、その“お客さん”に慰めてもらったような記憶もあるからだ。
「そうだ…あの日は満点の星空で、希空が死んでしまって悲しくて辛くて、悔しくて…」
深い深い、出口の見えない悲しみに苦しんでいた時、いつものように河川敷で歌を歌っていたら、当たり前のようにその“お客さん”もいて、慰めてくれた。その日は満天の星空だったから、私の心を救ってくれた彼を、お姫様を救うおとぎ話に出てくる王子様みたいだと思って…
「星の王子様」
そうだその“お客さん”を星の王子様と呼んだんだ。
「ふふ、なんで今そんな事を思い出すんだろう」
温かい思い出に琴子はくすりと微笑む。
「歌…上手いな」
突然第三者の声がしてきて琴子は驚き小さな悲鳴をあげる。
「ひっ!!!?」
見ると2mくらい先に河川敷に横たわる男性がいた。歳は20代前半くらいだろうか、綺麗な水色の肩くらいまで伸びている髪に端正な顔立ちの男性だった。河川敷は草っ原になっていて草に隠れて横たわる男性に今まで気づかなかったのだ。
「黒蝶の声に似てるな」
そんな男性の言葉に内心はらはらしながらも、琴子はありがとうと答えた。すると綺麗な水色の髪を靡かせて男は起き上がると立ち上がりそれからそのまま去っていった。
「びっくりした~」
にしても綺麗な男の人だなと思った。隊長の玲音も端正な顔をしているが、玲音はパッチリした瞳に左目の下には泣きぼくろがあり、ほんのり色気がある。さっきの男性は切れ長の瞳で美人風だった。どちらもイケメンに変わりはないが…。
ふとさっきいた男性の所に何かが落ちている。
「!!!」
落ちていたのは手帳だった。今時、手帳を持っているなんて珍しいなと思いながらもそれを拾い上げると中からひらりと紙が落ちてきた。
それは写真だった。さっきの男性ともう1人…女の人が笑顔で写っている。
「これは…」
手帳を持っているのは珍しい。なぜなら現在は殆どが電子化されているため、電子手帳の人が大半だからだ。よく見るとその手帳は使い古されていて、もしかしたらとても大事なものなのかもしれないと琴子は思った。そしてこの写真も…。
「届けなきゃ」
急いで後を追うも男性の姿はなく、手がかりが無いまま次の日を迎えたのだった。
実に5日ぶりに現場に復帰した琴子。
すぐに花凜が話しかけてきた。
「琴子ちゃん、大丈夫??」
「うん!もうすっかり大丈夫だよ」
心配そうな顔をしていた花凜は琴子の様子を見て安堵したようだ。
「そっか、よかった。それじゃ、私はこれから巡回に行ってくるね!」
そう言って複数の隊員と出かけていった。
琴子はそのまま隊長、玲音の元へとあいさつに向かう。
「隊長、復帰しました。またよろしくお願いします」
「もう大丈夫なのか?」
玲音もさっきの花凜と同じように心配そうに琴子を見る。
「はい!もうすっかり大丈夫です」
「そうか…そんじゃ、復帰して早々なんだが任務だ!」
玲音はにっと笑みを向けた。
今回の任務は1週間後に行われるらしい。
『聖女』様の護衛らしい。
「聖女様…ですか???」
この国に聖女が居ることを琴子は初めて知る。
「そう呼ばれているけど、正式なものではないよ、呼び名みたいなものかな?」
玲音はやや曖昧に言った。
「簡単に言うとアンノウンなんだ。その能力が強力で国に保護されてるんだよ」
それだけで『聖女』なんて呼ばれるのかな?と琴子は疑問に思う。
そんな琴子に玲音は付け足す。
「2年前、エウスは魔族に侵攻されつつあった。エウスの兵士達は疲弊し、もうダメかと思った時、後に『聖女』と呼ばれる彼女がその力で魔族を退けたんだよ。それがきっかけで『聖女』と呼ばれるよつになったんだ」
「そうなんですか…でもそんな話し聞いたことも、そんな事が起こっていた事も私は知りませんでした…」
2年前の事なら琴子だって耳にしているはずだ。しかも国を揺るがすようなそんな出来事。
しかし、そんな戦いがあった事も、『聖女』様のことも全く知らなかった。
「まぁ…その出来事は空間を操れる力を持つ人が魔族ごと空間に移動させ、そこで戦っていたからエウスへの直接の被害は無かったし、聖女の力は強力だったから外にその力の事を漏らしたくなかったのと人々の混乱を防ぐために、あの時は徹底的に情報を操作していたからな」
「え…そんな話…私が聞いても大丈夫なんですか??」
「ガーディアンだから大丈夫だよ」
そうなのか…と琴子は納得したのだった。
「まぁ…魔族を唆し、エウスに仕向けた黒幕は人だったんだけどな」
「その黒幕は…」
「誰かは分からない、ただエウスをあそこまで危機に陥れたのだから内通者がいたと見ているし、魔族も黒幕についてエウスの人間であると言っていた」
玲音の瞳に怒りが見える。
「俺はその黒幕を絶対に捕まえてみせる」
よっぽどその黒幕を許せないのだろう。だから琴子は玲音の力になりたいと思った。自分じゃ力不足かもしれないけど。
「私も隊長のお手伝いさせて下さい」
真剣な瞳で玲音を見つめる琴子に驚いたような顔をした後、彼は嬉しそうに笑った。その笑顔に琴子はドキッとした。
「頼もしいな!その時は頼んだぜ!」
「はい!」
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