BLACK DiVA

宵衣子

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17.炎を纏う男

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現在、聖女を乗せた車は電磁フィールドの罠にかかり動けずにいた。そしてそれを囲む5台の黒いバイク。聖女の車に乗っていたナイトで玲音の兄、玲威レイは車から降りる。玲音と同じ白金の髪にスカイブルーの瞳の端正なお顔、玲音より大人びた顔の眉間にはシワがよっている。

「おいおい、1人で降りてきたぞ。5人相手に1人とか舐めてんのか?」

黒いバイクに乗る1人が下品に笑いながら言う。それに賛同するように他の黒いバイクの人達も下品に笑った。

「相手にならないぜ!!」

決まり文句を言って余裕そうに笑う男達。
そんな彼らの言葉なんて全く気にしていない…寧ろ彼らの話なんて耳に入っていないのだろう、玲威は剣をスラリと抜いた。

「アクセレーション」

そう呟いたと同時に、余裕に笑って黒いバイクに跨っていた男が気絶している。
一瞬の出来事に場が凍りついた。黒いバイクに跨っている男達は何が起きたのか理解できない。さっきまでの余裕そうな表情から一転、動揺し絶句している。

「ナイトに喧嘩を売ったのがどういう事なのか身をもって知ればいい」

数秒後には黒いバイクに跨っていた全員が峰打ちによって気絶していた。

「………」

髪ひとつ乱れていない涼しい表情で玲威は電磁フィールドに剣を向けた。それから剣を一振りすると電磁フィールドが真っ二つに斬れ、効力を失った。

「団長!!ここは俺達が引き受けます!」

他の車に乗っていたナイト達が、黒いバイクに乗っている男達を食い止めると言っているようだ。玲威はそれに頷くと、聖女の乗っている車に乗り込み、発進した。

「隊長達も行って!!」

芽愛が薔薇の茨で玲音達を囲んでいた黒いバイク達を蹴散らした。

「サンキュ!!」

玲音は礼を言うと琴子を乗せて聖女の乗る車の後をついて行くのだった。まだ何台か黒いバイクが追ってくる。

「ちっ…しつこいな」

玲音が煩わしそうに呟く。

「《風早の扇》」

琴子がそう言うと彼女の両手に鉄扇が現れる。

「吹き飛べ!!」

鉄扇を勢いよく振った。
瞬間、強風が黒いバイクを襲う。
あまりの強風に1台のバイクがバランスを崩し転倒する。それは追いかけてきた他のバイクも巻き込み一緒に転倒した。

「琴子、良くやった!」

玲音に褒められて琴子は嬉しそうな顔をした。

『おい、玲音』

バイクを走らせていると玲音の端末が鳴った。
オープンモードになっているので宙にモニターに映るように玲威の顔が現れた。

「兄さん?」

どうやら兄の玲威かららしい。

『前方にレッドアイがいる…頼めるか?』

レッドアイと聞いて琴子の胸がざわつく。
もしかしたら來之衛がいるかもしれない。

「もちろん!!」

玲音はそう言うと聖女の乗る車を追い越していく。
すると前方にレッドアイと思われる赤いバイクが数台待ち構えていた。
玲音は拳銃を片手に構え撃った。
弾は人には当たらず、レッドアイの乗るバイクのタイヤに当たる。もちろんタイヤはパンク。もう聖女の乗る車を追うことは出来ないだろう。
弾が着弾したと同時にそこを中心に半径50センチメートルほどの球状の透明なフィールドのような物に敵は包まれた。

「なっ!!(動けない)」

体が動かなくなってしまったらしい。外から見れば表情も止まっている。
これが玲音の『停滞』の力なのだ。弾の着弾地点から半径50センチメートル以内の物の動きが停止する。
玲音は次々に敵の動きを止めていった。

「そう思い通りにさせるかっ!!!」

その声と同時に頭上から2人の乗ったバイクは攻撃を受ける。
炎を纏った拳1つで玲音と琴子の乗るバイクを両断てしまった。瞬時に気付いた玲音が琴子を担ぎ、バイクが壊される前に回避した。
敵は1人。炎使いの男。だが恐らくまだ先にもレッドアイがいるのだろう。それにさっきの黒ずくめの奴らもまだ待ち構えているかもしれない。そうなると聖女の車に乗るナイトだけでは厳しい戦いになるだろう。

「隊長!ここは私が引き受けます。先に行ってください」

琴子は炎使いの男を見据えながら玲音に言った。
その強い瞳に玲音は頷く。

「分かった…くれぐれも無茶はするな」

「はい!」

すると玲音は走り出しレッドアイのバイクを奪うと聖女の乗る車を追って行った。

「《風早の扇》」

琴子は両手に鉄扇を構える。

「へぇ~。ねーちゃん、楽しませてくれよ?」

にっとその赤い瞳を細めると何やら構をとる。
腰を低く落とし琴子の方に向けた両手の平を合わせ開く。

火炎爆散カエンバクサン!!」

すると火の塊が琴子に向かって飛んでくる。
見た目から近接技が得意だろうと思っていた琴子は予想外の遠隔攻撃に一瞬、反応が遅れる。

「《剛鉄の盾》」

琴子の前に現れた剛鉄の盾が彼女に向かって飛んできた火の塊を受け止めた。

「へぇ~」

そんな琴子を炎使いの男は楽しそうに見つめる。
それから琴子に向かってくる。その拳には炎がまとわりついていた。

「(速いっ!)《風早の扇》」

琴子は咄嗟に風早の扇を具現化させ後ろに半歩飛びながら振った。
風が巻き起こり炎使いの男に向かっていく。

「こんな風」

へでもない!と言わんばかりに男は楽しげに口角を上げると火炎爆散を撃って風を相殺してしまう。

「(風を相殺って!!?)」

琴子は動揺しながらも考える。やはり火に有効なのは水だろうと。

「水…水……水」

一生懸命武器を具現化させるべく頭に思い浮かべる。男は琴子に追い付くと炎を纏った拳を振り上げた。

「《水簾の槍スイレンノヤリ!!》」

琴子が呟くと彼女の手に1本の槍が現れた。
その槍で彼の拳を受け止める。

「ちっ」

自分の拳を受け止められてしまった事に舌打ちをしながらもどこかその顔は楽しそうだ。槍に受け止められながらも尚も炎をまとい続ける彼の拳を槍と触れている部分から発生した水が包み込み炎を消す。

「あんたの能力…面白いな」

「そのタトゥ…」

琴子はチラリと彼の腕のタトゥを見た。レッドアイのタトゥだ。

「あなたレッドアイなんだよね?」

「まあ…そうだな」

「來之衛って人知ってる?」

同じ組織なのだ、知ってるかもしれないと思い聞いてみる。何でもいいから情報が欲しかった。

「來之衛?さぁ?知らないね…知ってたとしても企業秘密だし」

そう言ってニィっと笑った。
バカにされたように笑われ琴子は絶対吐かせてやる!と思うのだった。
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