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25.自覚
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サンサンと照る太陽からジリジリとした暑さが降り注ぐ。ここ、エウスにも夏がやってきた。
ガーディアンの隊服も夏仕様に変更される。
上着の代わりにベストを着て、インナーの袖はもちろん短く。当たり前だがそれでも暑い。
「クーラー起動して」
琴子は街を巡回している。
彼女の言葉に反応したピアス型の端末から透明な膜が現れて琴子を包み込んだ。その中は涼しい。
「生き返る~っ!!」
便利な世の中になったものである。
どういう仕組みでこうなっているのか琴子にはさっぱり分からないが現代の科学の進化は目覚しい。
傘だって持ち運ぶ必要は無い。この端末さえあれば雨を弾く膜を張ってくれる…至れり尽くせりな便利機能だ。ただ電池消費がまぁまぁするのだが…。これがこの世界の日常なのである。
「何事も無く巡回終わりそうですね」
琴子の言葉に隣を歩いていた彩芽が口を開く。
「そうね~今日も何事も無く終わりそうね」
そうして2人は本部へと戻るのだった。
2人が第1部隊のフロアに戻ると玲音と副隊長の要と那由汰がなにやら話し合いをしていた。
「今年もやってきたな…」
玲音が神妙な面持ちで言う。
那由汰はふぅーっと息を着いた。
「エウス際かぁ~」
要が呟く。
「今回の警備はうちと、第3部隊でやる事になった。」
エウス際とは皇居の敷地を解放して行うお祭りで、全国各地から様々な人が集まる。
皇居の敷地を解放するので当然、ナイトは総出で警備するし、ガーディアンも警備にあたるのだ。
出店も沢山出るし、見世物があったり、花火も上がったりでそれはそれは盛大なお祭りなのだ。
「去年も大変だったよなー、酔ったアンノウンが大暴れして…」
どこか玲音が遠い目をしながら言っていた。
「訳の分からない奇声をあげていた人もいましたね」
これまた遠い目をしている那由汰。
「まぁまぁ、今年も前半組と後半組に分ける感じでいいよな?」
という要の言葉に2人は頷いたのだった。
琴子はそんな3人の話がなんとなく聞こえてきたので去年のエウス際の事を思い出す。
光栄なことに黒蝶として皇帝に招待され歌を披露させて頂いた。凄く嬉しくて、とても光栄な事だった。城の中では皇帝と皇族の人達、有名人や著名人等が招待されてパーティをしているのだ。去年は琴子もそのパーティに参加していたなと思い出した。
「で、今年もパーティには招待されているんですか?」
「招待…されてるな~。皇族からの招待だから断る訳には行かないし…今年も前半組で頼みます…」
那由汰の言葉に玲音はパーティなんて面倒だナー。とボヤきながら返した。それから彼は辺りを見渡し琴子と目が合う。すると玲音は琴子に向かって手招きをしてきた。
「何ですか??」
「ちょっと頼みがあるんだけど聞いてくんない?」
「???」
「エウス際のパーティにパートナーとして一緒に参加してくれないかな?」
「え??」
通常、パーティのパートナーは恋人とか婚約者とか奥さんとかを連れていくものなのだが、こんなただの部下でいいのかと琴子は思う。
「私が…ですか???」
「お願いします」
玲音がまるで捨てられそうな仔犬のような顔をしてくる。そんな彼を見て無下になんて出来る訳もなく…。そんな顔…ずるい!と琴子が思った時には
「私でよければ…」
と返していたのだった。
琴子は内心、玲音に恋人とかいないんだと安堵した。それからすぐに何で安心するんだ!!と心の中で悲鳴を上げた。心の中が忙しなかった…。
それから日々は過ぎていき、あっという間にエウス際の日がやってきた。天気は晴天。太陽の日差しと人々の熱気が凄い。数百のドローンが上空から冷気を振らせていたり、ミストを出していたりで会場自体は涼しげだ。皇帝のあいさつが終わり、いよいよ祭りが始まったのだった。
琴子は桃色の髪をツインテールにした女の子、花凜と一緒にエウス際を巡回している。2人は前半組になったのだ。
「え?琴子ちゃん隊長とパーティに行くの?」
夜、一緒に祭りまわらない?と花凜に言われたので玲音とパーティに行く事をチラッとした。前半組は午後4時くらいに後半組と交代になる。琴子はその後に玲音と合流する予定だった。
「うん。なんか頼まれちゃって」
「そうなんだ~、もしかして隊長、琴子ちゃんに気があるんじゃ?」
「ないない!そんなのある訳ない。隊長モテるし、綺麗な女の人いっぱいいるし」
言ってて悲しくなってきた。そう、玲音はモテるのだ。この前他の隊員に言い寄られていた所を見た事があるし、一緒に巡回していると女の人達が頬を染めて隊長を見つめている。あの容姿だそれは当たり前かもしれない。加えて人懐っこい笑顔にあの人あたりのいい感じ…モテない訳が無いだろう。彼は愛想がいい!
「ほほーう。」
何故か花凜がニヤニヤしている。
「隊長かっこいいもんね!しかも男前だし!そりゃ好きになっちゃうよね」
「えっ、なっ!!違う違うっ、そんなんじゃっ!!」
琴子は顔を真っ赤にして否定する。
いや…違わないかもしれない。
優しくて、隊員思いで、危なくなった時は必ず守ってくれる。何よりあの太陽のような温かい笑顔が好き。
「嘘…私……隊長が好き…みたい。」
「応援するね!!」
琴子のカミングアウトに花凜は親指をたてるのだった。
人々で賑わうお祭りの物陰に人影が1つ。
「相変わらず平和ボケしてるな~。まだ何も終わってないと言うのにね…」
そう言って人影は楽しそうに口角を上げるのだった。
ガーディアンの隊服も夏仕様に変更される。
上着の代わりにベストを着て、インナーの袖はもちろん短く。当たり前だがそれでも暑い。
「クーラー起動して」
琴子は街を巡回している。
彼女の言葉に反応したピアス型の端末から透明な膜が現れて琴子を包み込んだ。その中は涼しい。
「生き返る~っ!!」
便利な世の中になったものである。
どういう仕組みでこうなっているのか琴子にはさっぱり分からないが現代の科学の進化は目覚しい。
傘だって持ち運ぶ必要は無い。この端末さえあれば雨を弾く膜を張ってくれる…至れり尽くせりな便利機能だ。ただ電池消費がまぁまぁするのだが…。これがこの世界の日常なのである。
「何事も無く巡回終わりそうですね」
琴子の言葉に隣を歩いていた彩芽が口を開く。
「そうね~今日も何事も無く終わりそうね」
そうして2人は本部へと戻るのだった。
2人が第1部隊のフロアに戻ると玲音と副隊長の要と那由汰がなにやら話し合いをしていた。
「今年もやってきたな…」
玲音が神妙な面持ちで言う。
那由汰はふぅーっと息を着いた。
「エウス際かぁ~」
要が呟く。
「今回の警備はうちと、第3部隊でやる事になった。」
エウス際とは皇居の敷地を解放して行うお祭りで、全国各地から様々な人が集まる。
皇居の敷地を解放するので当然、ナイトは総出で警備するし、ガーディアンも警備にあたるのだ。
出店も沢山出るし、見世物があったり、花火も上がったりでそれはそれは盛大なお祭りなのだ。
「去年も大変だったよなー、酔ったアンノウンが大暴れして…」
どこか玲音が遠い目をしながら言っていた。
「訳の分からない奇声をあげていた人もいましたね」
これまた遠い目をしている那由汰。
「まぁまぁ、今年も前半組と後半組に分ける感じでいいよな?」
という要の言葉に2人は頷いたのだった。
琴子はそんな3人の話がなんとなく聞こえてきたので去年のエウス際の事を思い出す。
光栄なことに黒蝶として皇帝に招待され歌を披露させて頂いた。凄く嬉しくて、とても光栄な事だった。城の中では皇帝と皇族の人達、有名人や著名人等が招待されてパーティをしているのだ。去年は琴子もそのパーティに参加していたなと思い出した。
「で、今年もパーティには招待されているんですか?」
「招待…されてるな~。皇族からの招待だから断る訳には行かないし…今年も前半組で頼みます…」
那由汰の言葉に玲音はパーティなんて面倒だナー。とボヤきながら返した。それから彼は辺りを見渡し琴子と目が合う。すると玲音は琴子に向かって手招きをしてきた。
「何ですか??」
「ちょっと頼みがあるんだけど聞いてくんない?」
「???」
「エウス際のパーティにパートナーとして一緒に参加してくれないかな?」
「え??」
通常、パーティのパートナーは恋人とか婚約者とか奥さんとかを連れていくものなのだが、こんなただの部下でいいのかと琴子は思う。
「私が…ですか???」
「お願いします」
玲音がまるで捨てられそうな仔犬のような顔をしてくる。そんな彼を見て無下になんて出来る訳もなく…。そんな顔…ずるい!と琴子が思った時には
「私でよければ…」
と返していたのだった。
琴子は内心、玲音に恋人とかいないんだと安堵した。それからすぐに何で安心するんだ!!と心の中で悲鳴を上げた。心の中が忙しなかった…。
それから日々は過ぎていき、あっという間にエウス際の日がやってきた。天気は晴天。太陽の日差しと人々の熱気が凄い。数百のドローンが上空から冷気を振らせていたり、ミストを出していたりで会場自体は涼しげだ。皇帝のあいさつが終わり、いよいよ祭りが始まったのだった。
琴子は桃色の髪をツインテールにした女の子、花凜と一緒にエウス際を巡回している。2人は前半組になったのだ。
「え?琴子ちゃん隊長とパーティに行くの?」
夜、一緒に祭りまわらない?と花凜に言われたので玲音とパーティに行く事をチラッとした。前半組は午後4時くらいに後半組と交代になる。琴子はその後に玲音と合流する予定だった。
「うん。なんか頼まれちゃって」
「そうなんだ~、もしかして隊長、琴子ちゃんに気があるんじゃ?」
「ないない!そんなのある訳ない。隊長モテるし、綺麗な女の人いっぱいいるし」
言ってて悲しくなってきた。そう、玲音はモテるのだ。この前他の隊員に言い寄られていた所を見た事があるし、一緒に巡回していると女の人達が頬を染めて隊長を見つめている。あの容姿だそれは当たり前かもしれない。加えて人懐っこい笑顔にあの人あたりのいい感じ…モテない訳が無いだろう。彼は愛想がいい!
「ほほーう。」
何故か花凜がニヤニヤしている。
「隊長かっこいいもんね!しかも男前だし!そりゃ好きになっちゃうよね」
「えっ、なっ!!違う違うっ、そんなんじゃっ!!」
琴子は顔を真っ赤にして否定する。
いや…違わないかもしれない。
優しくて、隊員思いで、危なくなった時は必ず守ってくれる。何よりあの太陽のような温かい笑顔が好き。
「嘘…私……隊長が好き…みたい。」
「応援するね!!」
琴子のカミングアウトに花凜は親指をたてるのだった。
人々で賑わうお祭りの物陰に人影が1つ。
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