BLACK DiVA

宵衣子

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26.エウス際

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エウス祭は順調だ。
時々、アンノウンが酔っ払って暴れたり、迷子になる子がいたり、道端で喧嘩が起きたりしているが大きな問題は無いようだ。
そうこうしてる間にあっという間に後半組と交代の時間になった。
琴子は花凜に別れを告げると、花凜から「頑張ってね!」とウインクをされた。
そうして玲音と待ち合わせしている場所に行くと既に玲音がいた。
玲音はお疲れ~とにっと笑う。
琴子もお疲れ様です。と微笑んだ。

「今日は無理言ってごめんな。実は…周りからの縁談話が凄くて…」

玲音は伏せ目がちに…そしてどこか遠い目をしていた。

「なるほど、縁談避けのためですね」

内心、ちょっぴりガッカリしながらも、玲音の遠い目を見て琴子は察する。
きっと、うんざりする程色んな人から言い寄られるのだろう。自分が玲音の立場で結婚する気なんて無いのに毎度毎度言い寄られたら流石にうんざりすると思う。しかも玲音の性格だ、言いよってきた人達を無下にすることも無く、丁寧に断っているのだろう。琴子はモテるのも大変だなーとちょっぴり玲音を憐れむのだった。

「隊長は結婚する気無いんですか?その…隊長に言い寄ってくるくらいですもん、凄く魅力的な人達ばかりなんでしょう?」

琴子は勇気をだして聞いてみた。
心臓がちょっとうるさいぞ!

「それは…そうかもしれないけど……俺はちゃんと恋愛をしたいからさ…」

照れくさそうに少し頬を染めて玲音は言った。
意外とロマンチストだ!!と琴子は思うのだった。
そんな玲音に琴子はニッコリと笑うと…

「私もです!」

と言うのだった。
そうして少し前を歩いていく琴子の背中を玲音は切なげに見つめる。

「なーんて…ずっと思い出を引き摺ってるだけなのかもな…」

ボソリと小さな声で玲音は呟くのだった。
その声はお祭りの喧騒に掻き消され琴子に届く事は無かった。

それから少しだけ玲音と琴子は一緒にエウス際を回るとパーティ会場の皇居へと向かった。

「朝日奈 琴子様ですね。こちらへどうぞ」

会場の入口で女の使用人の人に声をかけられ、玲音とは別々に案内される。
そういえば、ドレスとか何も準備してないと今更琴子は思って内心焦る。焦ってもどうしようも無いのだけれど。
案内されたのは控え室だった。

「獅子王 玲音様からドレスを用意されています。」

そう言って使用人が持ってきたドレスはフィッシュテール型のパーティドレスで、後ろのスカート丈が前のスカート丈よりも長いものになっている。紺色に慎ましくラメが散りばめられた、まるで星空を連想させるような綺麗なパーティドレスだった。

「きれい…」

思わずぽつりと漏れた言葉に使用人の人が優しく微笑む。

「琴子様に似合うと思って用意されたらしいですよ」

「もしかして…」

「オーダーです」

ニッコリと使用人が笑った。
オーダーの言葉に琴子は混乱する。

「っ!!?」

え?私のためにわざわざオーダー?
最初から私を誘うつもりだったって事!?
どうしよう…嬉しいけど……隊長が何考えてるのか分からないよ。

「きっと…迷惑料だよね……うん、そうに決まってる。」

縁談避けって言ってたし!と半ばヤケになりながら琴子は思うのだった。

真偽は分からないまま琴子はパーティ会場へと向かっていった。
パーティ会場の入口付近で玲音が待っていた。
玲音は琴子を見ると頬を染める。

「とても似合ってる」

蕩けるような瞳でそう言われ、琴子は照れながら…

「ありがとうございます」

と返した。
それから琴子は玲音にエスコートされてパーティ会場へと足を踏み入れた。
会場に入ると、チラチラと玲音を見ては頬を染める女性陣たち。それから琴子ち浴びせられる痛い視線…。

「(いた…いたたたた。視線が痛いです!)」

それもそうだろう。玲音は今まで誰かを連れてパーティに参加なんてした事ないのだから。それが突然、見ず知らずの女性を連れてやってきたのだから…誰だよ!!ってなるに決まっている。

玲音は琴子を連れて、知人達にあいさつをしている。会場にはたくさんの有名人や著名人がいた。
そうこのパーティに招待されるのは有名人や著名人。そんなパーティに招待される玲音は一体何者?と琴子は思うのだった。

「どうかした?」

琴子の視線に気づいて玲音が話しかけてきた。

「いえ…隊長って一体何者なのかなって…」

「あぁ…」

玲音が何かを言おうとした時、

「玲音さま~!!」

真っ赤なウェーヴがかった髪の女性が甘い声で玲音を呼んで近付いてくる。
そして琴子と腕組みしている反対の腕に自身の腕を絡ませた。ぎゅっとその豊満な胸を寄せて…。

円華まどかさん?」

「お久しぶりですわ。相変わらず、カッコイイですわね」

円華と呼ばれた女性は玲音を熱っぽい眼差しで見つめる。

「(あ、この人隊長の事好きなんだ)」

「私との縁談…考えてくれましたか?」

円華の言葉に琴子は冷や汗を流す。
それにしても隣に琴子がいると言うのに全くお構い無しだ。

「(縁談!!!)」

「その話はお断りさせて頂いたはずですよ。俺と工藤財閥の娘さんとでは釣り合わないですしね」

「まぁ!!そんな事ありませんのよ。謙虚な所も素敵ですわ」

断っても逆効果なのか余計燃え上がってしまったようだ。

「(工藤財閥!!?エウスで1位2位を争うほど大きな財閥だわっ!!!)」

内心、琴子は驚く。そんな人にも言い寄られてるなんてますます隊長は何者??と思うのだった。
心の中で色々思っていると、ふいにグイッと腰を寄せられた。

「っ!!!」

「それでは、俺たちはこれで。」

玲音は円華の腕をやんわり振りほどき円華に見せつけるように琴子と密着すると早々にその場を立ち去った。円華はえぇ、また。とお上品に微笑むと、キッと琴子を睨むのだった。

「(怖いよっ!!)」

それからも色んな女性に言い寄られる玲音だったが上手にかわしていた。

「(私がいてもあまり変わらないんじゃ…)」

そうこうしてる間に皇帝が登場してきた。
皇帝は金の髪にルビー色の瞳。圧倒的な存在感。
流石、皇帝だと思う。て言うか、威圧感が半端ない。本人にそんなつもりは無いんだろうけど…。
皇帝、皇后…その後に3人の皇子達が登場してくる。見事に男3人で皇后様は凄いと琴子は思うのだった。皇后様は綺麗な蜂蜜色の髪にエメラルド色の綺麗な瞳だった。
誰もがみな皇帝に目を向け、会場は静かになる。

「今日、無事にエウス際を開催でき本当に良かったと思う。様々な分野でこの国に貢献してくれている皆に感謝する。さぁ、皆の者存分に楽しんでいってくれ!」

皇帝の挨拶ともにまた会場がガヤガヤと賑わった。
ふと琴子は視線を感じて、視線を辿るとその先には皇帝がいた。正確には琴子を見ていた訳ではなく、玲音を見ていた。
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