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28.フラッシュバック
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パーティ会場に慌ただしく一人のナイトが入ってきた。
「陛下!!」
ただならぬ雰囲気に皆が聞き耳を立てている。
それに気付いたナイトは我に返ると冷静になり皇帝陛下の元まで行き耳打ちをした。
「ふむ。」
皇帝陛下は頷くとその豪華な椅子から立ち上がった。
「皆、混乱せずに聞いて欲しい。魔物が複数現れたようだ。でも安心して欲しい。ここにはナイトがいるから安全だ。皆はここで待機していてくれ。」
そう言うと皇帝陛下と皇后は会場を後にした。
琴子は玲音を見つめる。
「隊長!!」
「あぁ…行こう」
2人は会場から飛び出した。
「隊長、武器はあるんですか?」
「控え室に置いてある」
パーティ会場にはもちろん武器等は持ち込めないしアンノウンの力も使えないようになっている。
それから2人は玲音の武器を回収して外へ出た。
沢山の魔物と応戦するナイト、人々を避難させるガーディアン達がいた。
玲音と琴子は魔物を撃退しながら走る。
道端に魔物に襲われた人が血まみれで倒れている。
「っつ!!」
琴子はそれを見て口を抑える。
「どうして…こんなっ」
ふと蘇るのは5年前、希空が殺された時の記憶だ。道端で血まみれで倒れている人達が希空に重なって見えたのだ。
「弱いものは一方的に蹂躙され殺される…生き残れるのは強者だけ…」
うわ言のように琴子は呟く。
さっきまで玲音と一緒に走っていたはずなのに、気付けば琴子は暗闇の中にいた。
暗闇の中にポツリと白い光がある。
琴子がその光に向かって走っていくとだんだんと白い光の正体がはっきり見えてくる。
それは銀色の髪の少女…。
「希空!!」
名前を呼ぶと希空は振り返りニッコリと微笑むが、希空の前まで行くと、あの日のように彼女は血まみれで横たわっていた。
「希空…??」
何度も何度も繰り返し希空が殺された時の事がフラッシュバックする。
「な…何これ…やめて…殺さないで……希空を殺さないでっ」
琴子は頭を抱えて蹲った。
「もう、止めてよっ!!!」
「止めて?」
スっと現れたのは黒髪黒目の少女…自分自身だった。
「あの時、見殺しにしたんでしょ?自分は隠れてるだけで…來之衛は希空を助けに行ったのに。私は自分の身が可愛くて隠れていたんだよね?2人を囮にしてさ」
「違う…違う……あの時の私にはどうする事もできなかった。だって力が無かったから。そうでしょ?」
涙を流しながらもう1人の自分に言う。まるで言い訳みたいだった。でもあの時の琴子にはどうするこもできなかったのだ。自分の身を守るので精一杯だった。
「一生あの日を彷徨って後悔してればいい。」
もう1人の自分はそう言ってニィっと笑うと消えた。
「本当、遠いい存在になっちゃったよね、琴子ちゃんも…希空も…」
ふいに來之衛の悲しそうな声が聞こえてきた。
その声に琴子が顔を上げると前方には來之衛の背中があった。
「待って…!!私は遠いい存在なんかじゃないよ!!ここに居るよ!來之衛!!!」
どんなに手を伸ばしても、どんなに呼んでも來之衛が振り返る事は無い。どんどん彼の背中は遠くなっていく。そんな來之衛に対し琴子は更に涙を流す。
「遠いい存在になっちゃったのは來之衛の方じゃない…っ」
そう言って琴子は俯いた。
「琴子!!しっかりしろ!」
また声が聞こえる。その声に顔を上げるとさっきまで真っ暗闇だったのが、いつの間にか星空になっていた。そして少し前方に子供の頃の琴子と、星の王子様がいた。顔は見えないけど会話は聞こえてくる。
「私が…希空を見殺しにしたの。怖くて怖くて、大切な友達が酷い目にあってるのに…私は震えて隠れている事しかできなかった…っ。最低だよねっ。それで自分は無傷で生きてるなんて」
子供の琴子が顔を歪め泣いていた。
そんな彼女に寄り添うのは白金の髪の少年だった。
「自分を責めないで。琴子は最低じゃないよ。悪いのは全部犯人なんだから。」
そう言って少年は琴子をぎゅっと抱きしめた。
「辛いよね。悲しいよね。悔しいよね。たくさん泣いていいよ。」
少年は琴子が泣き止むまでずっと抱きしめてくれていた。
「はっ!!」
瞬間、視界が元に戻る。
玲音が心配そうに琴子を覗き込んでいた。
「隊長…?」
「お!やっと戻ってきたか」
安心したように、いつもの調子でニッと笑う。
「突然立ち止まって動かなくなっちゃったからビックリしたよ」
と玲音。
「ごめんなさい。血を流して倒れている人達が過去の記憶と重なってしまって…」
「大丈夫。みんな生きてるから。ちゃんと救護されてるから。」
少し動揺している琴子を安心させるように玲音は言った。
「はい…」
「それと、琴子は魔物の魔力にあてられたんだと思う…だから大丈夫。琴子が見たものはまやかしだから気にすんな」
まるで琴子がどんな状態だったのか玲音には分かってるかのようだった。
魔力に慣れてないとそうなってしまうらしい。
「隊長は大丈夫なんですか?」
「俺は…もっと強烈な魔力にあてられた事があるから平気!」
そう言ってまたにっと笑った。
もう殆どの人が避難したのだろう、人影はほぼ無かった。広間に出たところで一際大きな威圧感を感じ2人は立ち止まり身構える。
「あれは…なんですか!?」
琴子の目線の先には大きな黒い…人狼のような魔物がいた。さっきまでのたくさんの魔物とは威圧感が違う。玲音もキッとその魔物を見据えていた。
「なんか強そうなヤツが出てきたな…」
人狼の様な魔物は真っ赤な瞳でこちらを見据えると咆哮を上げ、こちらに向かってきた。
「気を付けろよ、琴子!」
「はいっ!!」
玲音はシルバーの拳銃を構え、琴子も身構えるのだった。
「陛下!!」
ただならぬ雰囲気に皆が聞き耳を立てている。
それに気付いたナイトは我に返ると冷静になり皇帝陛下の元まで行き耳打ちをした。
「ふむ。」
皇帝陛下は頷くとその豪華な椅子から立ち上がった。
「皆、混乱せずに聞いて欲しい。魔物が複数現れたようだ。でも安心して欲しい。ここにはナイトがいるから安全だ。皆はここで待機していてくれ。」
そう言うと皇帝陛下と皇后は会場を後にした。
琴子は玲音を見つめる。
「隊長!!」
「あぁ…行こう」
2人は会場から飛び出した。
「隊長、武器はあるんですか?」
「控え室に置いてある」
パーティ会場にはもちろん武器等は持ち込めないしアンノウンの力も使えないようになっている。
それから2人は玲音の武器を回収して外へ出た。
沢山の魔物と応戦するナイト、人々を避難させるガーディアン達がいた。
玲音と琴子は魔物を撃退しながら走る。
道端に魔物に襲われた人が血まみれで倒れている。
「っつ!!」
琴子はそれを見て口を抑える。
「どうして…こんなっ」
ふと蘇るのは5年前、希空が殺された時の記憶だ。道端で血まみれで倒れている人達が希空に重なって見えたのだ。
「弱いものは一方的に蹂躙され殺される…生き残れるのは強者だけ…」
うわ言のように琴子は呟く。
さっきまで玲音と一緒に走っていたはずなのに、気付けば琴子は暗闇の中にいた。
暗闇の中にポツリと白い光がある。
琴子がその光に向かって走っていくとだんだんと白い光の正体がはっきり見えてくる。
それは銀色の髪の少女…。
「希空!!」
名前を呼ぶと希空は振り返りニッコリと微笑むが、希空の前まで行くと、あの日のように彼女は血まみれで横たわっていた。
「希空…??」
何度も何度も繰り返し希空が殺された時の事がフラッシュバックする。
「な…何これ…やめて…殺さないで……希空を殺さないでっ」
琴子は頭を抱えて蹲った。
「もう、止めてよっ!!!」
「止めて?」
スっと現れたのは黒髪黒目の少女…自分自身だった。
「あの時、見殺しにしたんでしょ?自分は隠れてるだけで…來之衛は希空を助けに行ったのに。私は自分の身が可愛くて隠れていたんだよね?2人を囮にしてさ」
「違う…違う……あの時の私にはどうする事もできなかった。だって力が無かったから。そうでしょ?」
涙を流しながらもう1人の自分に言う。まるで言い訳みたいだった。でもあの時の琴子にはどうするこもできなかったのだ。自分の身を守るので精一杯だった。
「一生あの日を彷徨って後悔してればいい。」
もう1人の自分はそう言ってニィっと笑うと消えた。
「本当、遠いい存在になっちゃったよね、琴子ちゃんも…希空も…」
ふいに來之衛の悲しそうな声が聞こえてきた。
その声に琴子が顔を上げると前方には來之衛の背中があった。
「待って…!!私は遠いい存在なんかじゃないよ!!ここに居るよ!來之衛!!!」
どんなに手を伸ばしても、どんなに呼んでも來之衛が振り返る事は無い。どんどん彼の背中は遠くなっていく。そんな來之衛に対し琴子は更に涙を流す。
「遠いい存在になっちゃったのは來之衛の方じゃない…っ」
そう言って琴子は俯いた。
「琴子!!しっかりしろ!」
また声が聞こえる。その声に顔を上げるとさっきまで真っ暗闇だったのが、いつの間にか星空になっていた。そして少し前方に子供の頃の琴子と、星の王子様がいた。顔は見えないけど会話は聞こえてくる。
「私が…希空を見殺しにしたの。怖くて怖くて、大切な友達が酷い目にあってるのに…私は震えて隠れている事しかできなかった…っ。最低だよねっ。それで自分は無傷で生きてるなんて」
子供の琴子が顔を歪め泣いていた。
そんな彼女に寄り添うのは白金の髪の少年だった。
「自分を責めないで。琴子は最低じゃないよ。悪いのは全部犯人なんだから。」
そう言って少年は琴子をぎゅっと抱きしめた。
「辛いよね。悲しいよね。悔しいよね。たくさん泣いていいよ。」
少年は琴子が泣き止むまでずっと抱きしめてくれていた。
「はっ!!」
瞬間、視界が元に戻る。
玲音が心配そうに琴子を覗き込んでいた。
「隊長…?」
「お!やっと戻ってきたか」
安心したように、いつもの調子でニッと笑う。
「突然立ち止まって動かなくなっちゃったからビックリしたよ」
と玲音。
「ごめんなさい。血を流して倒れている人達が過去の記憶と重なってしまって…」
「大丈夫。みんな生きてるから。ちゃんと救護されてるから。」
少し動揺している琴子を安心させるように玲音は言った。
「はい…」
「それと、琴子は魔物の魔力にあてられたんだと思う…だから大丈夫。琴子が見たものはまやかしだから気にすんな」
まるで琴子がどんな状態だったのか玲音には分かってるかのようだった。
魔力に慣れてないとそうなってしまうらしい。
「隊長は大丈夫なんですか?」
「俺は…もっと強烈な魔力にあてられた事があるから平気!」
そう言ってまたにっと笑った。
もう殆どの人が避難したのだろう、人影はほぼ無かった。広間に出たところで一際大きな威圧感を感じ2人は立ち止まり身構える。
「あれは…なんですか!?」
琴子の目線の先には大きな黒い…人狼のような魔物がいた。さっきまでのたくさんの魔物とは威圧感が違う。玲音もキッとその魔物を見据えていた。
「なんか強そうなヤツが出てきたな…」
人狼の様な魔物は真っ赤な瞳でこちらを見据えると咆哮を上げ、こちらに向かってきた。
「気を付けろよ、琴子!」
「はいっ!!」
玲音はシルバーの拳銃を構え、琴子も身構えるのだった。
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