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31.あの子の歌が聞きたい
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現在時刻は午前2時くらい。
そしてここは何処かの寝室。その広い寝室には高そうな家具たち。この部屋に置いてある物全てが上級の物だ。その部屋に眠るのはお金持ちの中年の男性。スースーと規則正しい寝息をたてて寝ている。
もちろん部屋は薄暗い。そんな中年の男性に掛かる影。
中年の男性は気配に気づき目を開け飛び起きる。
「っ!!」
声をあげようとする男性の口を素早く抑え込む。
「悪いね…これも仕事だからさ…」
そう言って黒い笑みを浮かべたのは赤茶色のくせっ毛の髪に同じ色の瞳の冷徹な笑みを浮かべた來之衛だった。
「んーんーー!」
恐怖に歪む男の首を來之衛は容赦なく斬り裂いた。
多量の血を吹き出し声を出すことも抵抗することも出来ずに絶命する男。來之衛は返り血を浴びても気にせず、冷たい表情を浮かべたままに部屋をあとにした。
これで何人目だろう。ふとビルの屋上から街並みを見下ろしながら來之衛は思う。何人なんてもんじゃないか…と自嘲気味に笑った。
レッドアイは金さえ貰えれば何でもやる組織だ。
「歌が聞きたいな…」
その歌は時に荒んだ心を癒してくれる、時に前向きにしてくれる。そんなあたたかい歌。
漆黒の髪に漆黒の瞳のあの子の歌を…。
「~♬︎」
來之衛はビルの屋上の手すりに頬杖を付いてそんな事を思いながら來之衛は小さく歌を口ずさんた。
昔の希空と琴子と自分と3人で笑いながら過ごしていたあたたかい、もう二度と戻れない日々の事を思いながら…。
…………
琴子は今、実家にやってきていた。
「琴子!元気にしてた?」
歌手になってから中々実家に帰る時間が無く、2年ぶりくらいに帰ってきた。まぁその間も連絡はちょくちょくしているのだが…。
「うん!お母さんは?」
「私も変わらず元気!」
琴子の母親は栗色の長い髪を横に流して結んでいる。
「それにしても…その姿…希空ちゃんに似てるね」
琴子の母親は彼女の変装を見てそう言った。
銀髪にブルーの瞳は希空と同じ色なのだ。
「あ、うん…」
「來之衛くんを止めるんだっけ?」
琴子が歌手活動を休止してる事も、ガーディアンに入った事も、來之衛の事も母に伝えてあるのだ。
「うん。この姿をしていると希空も一緒に居るんだ…って勇気がでるの」
そう言いながら琴子は自分の胸に手を当てた。いつだって希空は琴子の心の中にいる。傍で見守っていてくれてるのだとそう思っている。
「そう…無茶はしないでね。來之衛くんを止めるにしてもガーディアンにしても危険な仕事に変わりないんだから」
心配そうに琴子の母は彼女を見つめた。
「大丈夫だよ!いつも守ってくれる、助けてくれる仲間がいるし、私自身も強くなれるように努力してるから…」
結構強くなったんだよ!と琴子は言う。
そんな琴子に彼女の母は微笑んだ。
「そう。來之衛くん止められるといいね」
「うん!」
そうこうしていると父が帰ってきた。
琴子の父はミルクティーブラウンのフワフワの髪にアメジスト色の瞳をしていて、女の子っぽいその顔は琴子にそっくりだった。
「ことこぉおお!!!」
泣きながら琴子に抱きついてくる。
琴子は苦笑いをしながらされるがままになった。
「元気だったァ!!?会いたかったよぉ!!!!」
そんな父を見て琴子の母も呆れたように彼を見ていた。琴子の父親は琴子を溺愛していて琴子に関しては少々過保護なのだ。
琴子の父は男性にしては身長が低めで可愛い女の子の様な顔をしている。対して母親は長身で綺麗めな顔をしていて…琴子は男女逆なんじゃ…なんて思ったりもした。
それから3人は夕食をとる。
メニューは琴子の大好きなオムライスだ。
大好きな母のオムライスを頬張り琴子は久しぶりの実家を堪能し、ベッドに入り込む。琴子の部屋はそのままに綺麗に管理されている。
どうして実家に帰ってきたかと言うと、もちろん両親の顔を見に来たこともあるのだが…來之衛の実家に行ってみようと思っているのだ。
「來之衛…」
琴子は來之衛の両親ならもしかしたら來之衛の連絡先を知っているかもしれないと思ったのだ。あわよくば今も連絡をとりあってるのかもしれないと…。
次の日、琴子は來之衛の実家へと向かった。
天気は晴れていて琴子の気持ちを前向きにしてくれる、気持ちのいい日だった。
「…懐かしい」
來之衛の実家に行く途中に希空と來之衛と3人でよく遊んでいた公園が今も変わらずそこにあった。
目を瞑れば一緒に遊んでた風景が浮かんでくる。
その思い出は3人のもので共有できる人がもう來之衛しかいない。
あの時はあーだったよね、こーだったよねと話が出来ないことが少しだけ琴子を切なくさせた。
少しだけ感傷に浸りながら歩いていると來之衛の実家が見えてきた。
「居るかな?」
意を決してインターホンを押した。
少しの間の後出てきたのは驚いた顔をした來之衛のお母さんだった。
「希空…ちゃん????」
「あ、琴子です」
「あぁ!!琴子ちゃんね!」
髪の色とか希空ちゃんにそっくりだったから…と來之衛のお母さんは笑った。すると來之衛のお母さんは後ろを振り返り廊下に大きな声で「美來~!!琴子ちゃんが来てくれたわよ~!!!!」と叫んでいた。
その直後、バタバタと足音がして、來之衛と同じ赤茶色のくせっ毛の髪の女の子…來之衛の妹がやってきた。
「琴子ちゃん!!!黒蝶!!!」
そう言って目をキラキラさせながら琴子の手を握る。
「久しぶりだね、美來ちゃん」
「久しぶりっ!!突然休止しちゃったから心配してたの!!元気???」
「うん、この通り!美來ちゃんは?」
「よかった!私は…元気だよ」
少しだけ間があった後に微笑む。
それから入って!と琴子をリビングへと案内した。
それからサイン頂戴!と言ってきたので琴子はサインをしてあげた。
そしてここは何処かの寝室。その広い寝室には高そうな家具たち。この部屋に置いてある物全てが上級の物だ。その部屋に眠るのはお金持ちの中年の男性。スースーと規則正しい寝息をたてて寝ている。
もちろん部屋は薄暗い。そんな中年の男性に掛かる影。
中年の男性は気配に気づき目を開け飛び起きる。
「っ!!」
声をあげようとする男性の口を素早く抑え込む。
「悪いね…これも仕事だからさ…」
そう言って黒い笑みを浮かべたのは赤茶色のくせっ毛の髪に同じ色の瞳の冷徹な笑みを浮かべた來之衛だった。
「んーんーー!」
恐怖に歪む男の首を來之衛は容赦なく斬り裂いた。
多量の血を吹き出し声を出すことも抵抗することも出来ずに絶命する男。來之衛は返り血を浴びても気にせず、冷たい表情を浮かべたままに部屋をあとにした。
これで何人目だろう。ふとビルの屋上から街並みを見下ろしながら來之衛は思う。何人なんてもんじゃないか…と自嘲気味に笑った。
レッドアイは金さえ貰えれば何でもやる組織だ。
「歌が聞きたいな…」
その歌は時に荒んだ心を癒してくれる、時に前向きにしてくれる。そんなあたたかい歌。
漆黒の髪に漆黒の瞳のあの子の歌を…。
「~♬︎」
來之衛はビルの屋上の手すりに頬杖を付いてそんな事を思いながら來之衛は小さく歌を口ずさんた。
昔の希空と琴子と自分と3人で笑いながら過ごしていたあたたかい、もう二度と戻れない日々の事を思いながら…。
…………
琴子は今、実家にやってきていた。
「琴子!元気にしてた?」
歌手になってから中々実家に帰る時間が無く、2年ぶりくらいに帰ってきた。まぁその間も連絡はちょくちょくしているのだが…。
「うん!お母さんは?」
「私も変わらず元気!」
琴子の母親は栗色の長い髪を横に流して結んでいる。
「それにしても…その姿…希空ちゃんに似てるね」
琴子の母親は彼女の変装を見てそう言った。
銀髪にブルーの瞳は希空と同じ色なのだ。
「あ、うん…」
「來之衛くんを止めるんだっけ?」
琴子が歌手活動を休止してる事も、ガーディアンに入った事も、來之衛の事も母に伝えてあるのだ。
「うん。この姿をしていると希空も一緒に居るんだ…って勇気がでるの」
そう言いながら琴子は自分の胸に手を当てた。いつだって希空は琴子の心の中にいる。傍で見守っていてくれてるのだとそう思っている。
「そう…無茶はしないでね。來之衛くんを止めるにしてもガーディアンにしても危険な仕事に変わりないんだから」
心配そうに琴子の母は彼女を見つめた。
「大丈夫だよ!いつも守ってくれる、助けてくれる仲間がいるし、私自身も強くなれるように努力してるから…」
結構強くなったんだよ!と琴子は言う。
そんな琴子に彼女の母は微笑んだ。
「そう。來之衛くん止められるといいね」
「うん!」
そうこうしていると父が帰ってきた。
琴子の父はミルクティーブラウンのフワフワの髪にアメジスト色の瞳をしていて、女の子っぽいその顔は琴子にそっくりだった。
「ことこぉおお!!!」
泣きながら琴子に抱きついてくる。
琴子は苦笑いをしながらされるがままになった。
「元気だったァ!!?会いたかったよぉ!!!!」
そんな父を見て琴子の母も呆れたように彼を見ていた。琴子の父親は琴子を溺愛していて琴子に関しては少々過保護なのだ。
琴子の父は男性にしては身長が低めで可愛い女の子の様な顔をしている。対して母親は長身で綺麗めな顔をしていて…琴子は男女逆なんじゃ…なんて思ったりもした。
それから3人は夕食をとる。
メニューは琴子の大好きなオムライスだ。
大好きな母のオムライスを頬張り琴子は久しぶりの実家を堪能し、ベッドに入り込む。琴子の部屋はそのままに綺麗に管理されている。
どうして実家に帰ってきたかと言うと、もちろん両親の顔を見に来たこともあるのだが…來之衛の実家に行ってみようと思っているのだ。
「來之衛…」
琴子は來之衛の両親ならもしかしたら來之衛の連絡先を知っているかもしれないと思ったのだ。あわよくば今も連絡をとりあってるのかもしれないと…。
次の日、琴子は來之衛の実家へと向かった。
天気は晴れていて琴子の気持ちを前向きにしてくれる、気持ちのいい日だった。
「…懐かしい」
來之衛の実家に行く途中に希空と來之衛と3人でよく遊んでいた公園が今も変わらずそこにあった。
目を瞑れば一緒に遊んでた風景が浮かんでくる。
その思い出は3人のもので共有できる人がもう來之衛しかいない。
あの時はあーだったよね、こーだったよねと話が出来ないことが少しだけ琴子を切なくさせた。
少しだけ感傷に浸りながら歩いていると來之衛の実家が見えてきた。
「居るかな?」
意を決してインターホンを押した。
少しの間の後出てきたのは驚いた顔をした來之衛のお母さんだった。
「希空…ちゃん????」
「あ、琴子です」
「あぁ!!琴子ちゃんね!」
髪の色とか希空ちゃんにそっくりだったから…と來之衛のお母さんは笑った。すると來之衛のお母さんは後ろを振り返り廊下に大きな声で「美來~!!琴子ちゃんが来てくれたわよ~!!!!」と叫んでいた。
その直後、バタバタと足音がして、來之衛と同じ赤茶色のくせっ毛の髪の女の子…來之衛の妹がやってきた。
「琴子ちゃん!!!黒蝶!!!」
そう言って目をキラキラさせながら琴子の手を握る。
「久しぶりだね、美來ちゃん」
「久しぶりっ!!突然休止しちゃったから心配してたの!!元気???」
「うん、この通り!美來ちゃんは?」
「よかった!私は…元気だよ」
少しだけ間があった後に微笑む。
それから入って!と琴子をリビングへと案内した。
それからサイン頂戴!と言ってきたので琴子はサインをしてあげた。
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