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33.決別
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「琴子ちゃん…」
琴子は息を整えると深呼吸をした。
「來之衛と話がしたいの」
「今更?」
來之衛は相変わらず笑みを浮かべているがその瞳は冷たい。
確かに今更かもしれない。罪悪感から來之衛を遠ざけていたのも事実だ。
「(私はなんて呑気だったんだろう)」
勝手に來之衛も夢に向かって頑張ってるんだと思い込んでいた。前に進んでるものだと思っていた。だから自分も頑張らなきゃ…前に進まなきゃって思っていた。來之衛と話もせずに、彼の現状を把握すらせずに。
いや…そうであって欲しいと願っていただけかもしれない。夢に向かってガムシャラに頑張っていれば希空の事も來之衛の事も考えずに済んだのだから。
「ごめんね…。あの時、私は自分の身を守る事で精一杯で2人が襲われているのを見ているだけだった。」
「別に謝られても…今更、希空は帰ってこないしそれに…あの時はどうする事もできなかった。罪悪感を僕と希空に抱いてるならそれは違うよ」
責められるかと思っていた。助けずに隠れていた自分を憎んでるかと思っていたのに來之衛の予想外の言葉に琴子は動揺する。
「私の事…恨んでないの?」
「なんで琴子ちゃんを恨まなきゃいけないの?恨むとすれば、あの日希空を殺した犯人でしょ?」
來之衛は真っ直ぐ琴子を見つめて言い放った。
その言葉は琴子に気を使って言っている訳ではなく事実を述べているようだった。
來之衛は琴子を恨んでなんかいなかった。
もっと早くに來之衛と話が出来ていれば、自分に來之衛に話しかけられる勇気があれば…と琴子は自嘲気味に笑った。
「來之衛は医師になる夢は諦めちゃったの?」
「…そんな夢を見ていた時もあったね」
來之衛は相変わらず胡散臭そうに笑っていてその言葉や表情から本当の感情を読み取ることができない。
「そんな夢なんかじゃないよ…私達と約束したでしょ?」
「もうその約束は守れない。それに希空もいないし…僕にとって希空は太陽みたいな存在だったんだ」
「私にとっても…だよ。」
明るくて、優しくて、頭も良くて、運動もできて、面倒みも良くて…ちょっとお節介な所もあったけど、希空は私達にとってかけがえのない存在だった。
「だから…」
來之衛はそう言うと琴子の赤いリボンを解いた。
たちまち琴子は黒髪、黒目に戻る。
「その姿は今の僕にとっては眩しすぎるよ」
どこか悲しげに笑った。
それは希空に顔向けできない何か後ろめたい気持ちがあるからなのだろうか…。今の琴子には知る由もなかった。そんな來之衛の手を琴子は優しく握る。
「來之衛が陰に隠れてしまうなら何度も照らすよ。希空と私で。來之衛が何を考えているのか知りたいし、悩み事があるのなら話して欲しい。1人で抱え込まないで欲しい。私でも力になれる事があるなら言って欲しい、來之衛の力になりたいの。だからお願い、もう何処にも行かないで」
悲痛な表情を浮かべて琴子は來之衛に懇願する。
しかしそんな琴子の手を來之衛は突き放した。
琴子は悲しげに來之衛を見つめる。
「どうして…?」
來之衛からスっと表情が消えた。
それから琴子から目を離すと街並みを見下ろす。
「琴子ちゃんは復讐って考えた事ある?」
「復讐??」
「例えば…希空を殺した奴がすぐそこにいるとしたら復讐するよね?」
「それは…」
実際に希空を殺した奴が自分の目の前に現れたら、自分はどうなるのだろう。
過去の事を思い出してまた怯える?
それか立ち向かって捕まえる?
それとも…
「僕は希空にした事と同じ事を味合わせるよ。必ず殺す。簡単には殺さない。苦しめてジワジワと殺すんだ。」
昔の來之衛からは想像もできない言葉にまた琴子は耳を塞ぎたくなる。琴子から來之衛の顔は見えないので今彼がどんな表情をしているのかは分からない。
「來之衛の目的は復讐なの?」
震える声でつむぎ出した言葉に來之衛は頷いた。
「そうだよ…そのためなら何だってする」
「じゃぁ、復讐が終わったあとはどうするの?」
すると琴子を振り返り冷たく笑う。
「そんな事考えてどうするの?そんなもの必要ないよ。未来なんて要らないんだよ。」
それから來之衛は首に付けていたチョーカー型の端末を外し地面に捨てるとカードを突き刺す。
瞬間、稲妻が走り端末が粉々なった。
「これでサヨナラだよ。」
そう言って琴子から通り過ぎていく。
すれ違いざまに
「次会った時、僕の邪魔をするようだったら容赦しないから」
低い声でそう言った。
その意味はきっと、邪魔するなら殺すと言う意味だろう。彼は本気だ。本当に邪魔するようだったら琴子を殺すつもりでいるのだろう。來之衛が去った後、琴子は街並みを見下ろす。希空と來之衛との思い出が沢山詰まった街だ。
「復讐をしても希空は帰ってこないじゃない…來之衛がその気なら私は…」
命を懸けてでも來之衛を止める。
「私だって…次に会った時は容赦しない」
そう決心をした琴子は歌い出す。
自分を励ますように、そして決意と覚悟を今一度胸に刻み込むように。
そんな琴子の歌を少し離れた所から気配を消した來之衛が聞いていた…。
歌を聞き入っている彼の表情にはさっきの胡散臭くどこか冷たい表情ではなく、柔らかな笑みが浮かんでいた。
琴子は息を整えると深呼吸をした。
「來之衛と話がしたいの」
「今更?」
來之衛は相変わらず笑みを浮かべているがその瞳は冷たい。
確かに今更かもしれない。罪悪感から來之衛を遠ざけていたのも事実だ。
「(私はなんて呑気だったんだろう)」
勝手に來之衛も夢に向かって頑張ってるんだと思い込んでいた。前に進んでるものだと思っていた。だから自分も頑張らなきゃ…前に進まなきゃって思っていた。來之衛と話もせずに、彼の現状を把握すらせずに。
いや…そうであって欲しいと願っていただけかもしれない。夢に向かってガムシャラに頑張っていれば希空の事も來之衛の事も考えずに済んだのだから。
「ごめんね…。あの時、私は自分の身を守る事で精一杯で2人が襲われているのを見ているだけだった。」
「別に謝られても…今更、希空は帰ってこないしそれに…あの時はどうする事もできなかった。罪悪感を僕と希空に抱いてるならそれは違うよ」
責められるかと思っていた。助けずに隠れていた自分を憎んでるかと思っていたのに來之衛の予想外の言葉に琴子は動揺する。
「私の事…恨んでないの?」
「なんで琴子ちゃんを恨まなきゃいけないの?恨むとすれば、あの日希空を殺した犯人でしょ?」
來之衛は真っ直ぐ琴子を見つめて言い放った。
その言葉は琴子に気を使って言っている訳ではなく事実を述べているようだった。
來之衛は琴子を恨んでなんかいなかった。
もっと早くに來之衛と話が出来ていれば、自分に來之衛に話しかけられる勇気があれば…と琴子は自嘲気味に笑った。
「來之衛は医師になる夢は諦めちゃったの?」
「…そんな夢を見ていた時もあったね」
來之衛は相変わらず胡散臭そうに笑っていてその言葉や表情から本当の感情を読み取ることができない。
「そんな夢なんかじゃないよ…私達と約束したでしょ?」
「もうその約束は守れない。それに希空もいないし…僕にとって希空は太陽みたいな存在だったんだ」
「私にとっても…だよ。」
明るくて、優しくて、頭も良くて、運動もできて、面倒みも良くて…ちょっとお節介な所もあったけど、希空は私達にとってかけがえのない存在だった。
「だから…」
來之衛はそう言うと琴子の赤いリボンを解いた。
たちまち琴子は黒髪、黒目に戻る。
「その姿は今の僕にとっては眩しすぎるよ」
どこか悲しげに笑った。
それは希空に顔向けできない何か後ろめたい気持ちがあるからなのだろうか…。今の琴子には知る由もなかった。そんな來之衛の手を琴子は優しく握る。
「來之衛が陰に隠れてしまうなら何度も照らすよ。希空と私で。來之衛が何を考えているのか知りたいし、悩み事があるのなら話して欲しい。1人で抱え込まないで欲しい。私でも力になれる事があるなら言って欲しい、來之衛の力になりたいの。だからお願い、もう何処にも行かないで」
悲痛な表情を浮かべて琴子は來之衛に懇願する。
しかしそんな琴子の手を來之衛は突き放した。
琴子は悲しげに來之衛を見つめる。
「どうして…?」
來之衛からスっと表情が消えた。
それから琴子から目を離すと街並みを見下ろす。
「琴子ちゃんは復讐って考えた事ある?」
「復讐??」
「例えば…希空を殺した奴がすぐそこにいるとしたら復讐するよね?」
「それは…」
実際に希空を殺した奴が自分の目の前に現れたら、自分はどうなるのだろう。
過去の事を思い出してまた怯える?
それか立ち向かって捕まえる?
それとも…
「僕は希空にした事と同じ事を味合わせるよ。必ず殺す。簡単には殺さない。苦しめてジワジワと殺すんだ。」
昔の來之衛からは想像もできない言葉にまた琴子は耳を塞ぎたくなる。琴子から來之衛の顔は見えないので今彼がどんな表情をしているのかは分からない。
「來之衛の目的は復讐なの?」
震える声でつむぎ出した言葉に來之衛は頷いた。
「そうだよ…そのためなら何だってする」
「じゃぁ、復讐が終わったあとはどうするの?」
すると琴子を振り返り冷たく笑う。
「そんな事考えてどうするの?そんなもの必要ないよ。未来なんて要らないんだよ。」
それから來之衛は首に付けていたチョーカー型の端末を外し地面に捨てるとカードを突き刺す。
瞬間、稲妻が走り端末が粉々なった。
「これでサヨナラだよ。」
そう言って琴子から通り過ぎていく。
すれ違いざまに
「次会った時、僕の邪魔をするようだったら容赦しないから」
低い声でそう言った。
その意味はきっと、邪魔するなら殺すと言う意味だろう。彼は本気だ。本当に邪魔するようだったら琴子を殺すつもりでいるのだろう。來之衛が去った後、琴子は街並みを見下ろす。希空と來之衛との思い出が沢山詰まった街だ。
「復讐をしても希空は帰ってこないじゃない…來之衛がその気なら私は…」
命を懸けてでも來之衛を止める。
「私だって…次に会った時は容赦しない」
そう決心をした琴子は歌い出す。
自分を励ますように、そして決意と覚悟を今一度胸に刻み込むように。
そんな琴子の歌を少し離れた所から気配を消した來之衛が聞いていた…。
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