38 / 42
38.私にとって彼はヒーロー
しおりを挟む
今ならはっきり思い出せる。
私が隊長と出会った時のこと。
あの時私はまだ小学生で、秘密の練習場所でいつも歌の練習をしていた。
そこは人1人入れるか入れないかの狭い建物の隙間を抜けた所にある場所で小さな入江になっている。
ある日の夏。
いつもの様にその場所に行ったら先客がいた。
綺麗な白金の髪にオッドアイの瞳…そして左目に泣きボクロの男の子だ。私は思わずその男の子に見惚れた。あまりにも綺麗な男の子だったから…。
彼はまだ私に気づいてないようで、入江の景色を眺めているようだった。
「こんにちは」
私は彼に声をかける。
すると彼は驚いたように私を見た。
驚いた顔も素敵で…思わず見惚れてしまう。
「今日はお客さんがいるのね」
彼はこんな所に人が来た事に驚いているのだろう。
私は驚く彼にお構い無しに歌の練習を始めた。
彼は黙って歌を聞いてくれていた。
「歌…上手いんだね!」
ひとしきり歌い終わったら彼が私に無邪気な笑顔を向けた。太陽のように温かい笑顔。
それから夏の時期になると彼は秘密の練習場所に現れるようになった。
そして私が9歳の時、あの事件が起きた。
希空を失って精神的に不安定な日々が続いた。
いつもの様に秘密の練習場所に行くと、やっぱり彼がいた。いつもの様に太陽の様な温かい笑顔で迎えてくれる。そんな彼の温かさに思わず私の瞳からは涙が溢れた。
事件の事を話し終えた頃にはすっかり日が沈み、星空が広がっていた。
「私が…希空を見殺しにしたの。怖くて怖くて、大切な友達が酷い目にあってるのに…私は震えて隠れている事しかできなかった…っ。最低だよねっ。それで自分は無傷で生きてるなんて」
「自分を責めないで。琴子は最低じゃないよ。悪いのは全部犯人なんだから。」
瞬間、ふわりと彼の匂いと温もりに包まれた。
「辛いよね。悲しいよね。悔しいよね。たくさん泣いていいよ。」
彼がそう言ってくれたから、私の心の叫びを彼が受け止めてくれたから、1人ずっと後悔の念に苛まれていた私の心は救われたんだ。
だいぶ落ち着いて空を見上げたら彼の温かい笑顔があって、空には満天の星空が広がっていて…思わず私は
「王子様みたい…」
と呟いた。
「え?」
彼は私の言葉に困ったような、なんとも言えない顔をしている。
満天の星空と王子様。
「星の王子様だね!!」
だって、王子様はお姫様を助けてくれるでしょ?
そんな事を思いながら私は彼をそう呼んだ。
すると彼は照れくさそうに顔をふいっと逸らした。
「やめてよ、王子さまなんて恥ずかしいだろ」
「え~?いいじゃん!」
「だいたいにして!俺はその王子様を守るナイトになるんだから」
「そうなの!?それは素敵だね!!」
主君を守る騎士。
みんなの憧れのナイト。
「俺も夢を叶えるために頑張るから、琴子も頑張れよ!」
「うん!」
「2人の夢が叶ったら…また会おうな」
そう言って彼は微笑んだ。
そんな彼に私も微笑み返した。
そうしてその日を境に彼に会うことは無かった。
來之衛に攫われそうになった時も、任務で危なくなった時も…必ず彼が…隊長が…助けに来てくれる。
不安になった時も、あの太陽の様な笑顔に救われる。
「私の大切な人…私のヒーロー。」
私にとって彼は今も昔もヒーローだ。
私が隊長と出会った時のこと。
あの時私はまだ小学生で、秘密の練習場所でいつも歌の練習をしていた。
そこは人1人入れるか入れないかの狭い建物の隙間を抜けた所にある場所で小さな入江になっている。
ある日の夏。
いつもの様にその場所に行ったら先客がいた。
綺麗な白金の髪にオッドアイの瞳…そして左目に泣きボクロの男の子だ。私は思わずその男の子に見惚れた。あまりにも綺麗な男の子だったから…。
彼はまだ私に気づいてないようで、入江の景色を眺めているようだった。
「こんにちは」
私は彼に声をかける。
すると彼は驚いたように私を見た。
驚いた顔も素敵で…思わず見惚れてしまう。
「今日はお客さんがいるのね」
彼はこんな所に人が来た事に驚いているのだろう。
私は驚く彼にお構い無しに歌の練習を始めた。
彼は黙って歌を聞いてくれていた。
「歌…上手いんだね!」
ひとしきり歌い終わったら彼が私に無邪気な笑顔を向けた。太陽のように温かい笑顔。
それから夏の時期になると彼は秘密の練習場所に現れるようになった。
そして私が9歳の時、あの事件が起きた。
希空を失って精神的に不安定な日々が続いた。
いつもの様に秘密の練習場所に行くと、やっぱり彼がいた。いつもの様に太陽の様な温かい笑顔で迎えてくれる。そんな彼の温かさに思わず私の瞳からは涙が溢れた。
事件の事を話し終えた頃にはすっかり日が沈み、星空が広がっていた。
「私が…希空を見殺しにしたの。怖くて怖くて、大切な友達が酷い目にあってるのに…私は震えて隠れている事しかできなかった…っ。最低だよねっ。それで自分は無傷で生きてるなんて」
「自分を責めないで。琴子は最低じゃないよ。悪いのは全部犯人なんだから。」
瞬間、ふわりと彼の匂いと温もりに包まれた。
「辛いよね。悲しいよね。悔しいよね。たくさん泣いていいよ。」
彼がそう言ってくれたから、私の心の叫びを彼が受け止めてくれたから、1人ずっと後悔の念に苛まれていた私の心は救われたんだ。
だいぶ落ち着いて空を見上げたら彼の温かい笑顔があって、空には満天の星空が広がっていて…思わず私は
「王子様みたい…」
と呟いた。
「え?」
彼は私の言葉に困ったような、なんとも言えない顔をしている。
満天の星空と王子様。
「星の王子様だね!!」
だって、王子様はお姫様を助けてくれるでしょ?
そんな事を思いながら私は彼をそう呼んだ。
すると彼は照れくさそうに顔をふいっと逸らした。
「やめてよ、王子さまなんて恥ずかしいだろ」
「え~?いいじゃん!」
「だいたいにして!俺はその王子様を守るナイトになるんだから」
「そうなの!?それは素敵だね!!」
主君を守る騎士。
みんなの憧れのナイト。
「俺も夢を叶えるために頑張るから、琴子も頑張れよ!」
「うん!」
「2人の夢が叶ったら…また会おうな」
そう言って彼は微笑んだ。
そんな彼に私も微笑み返した。
そうしてその日を境に彼に会うことは無かった。
來之衛に攫われそうになった時も、任務で危なくなった時も…必ず彼が…隊長が…助けに来てくれる。
不安になった時も、あの太陽の様な笑顔に救われる。
「私の大切な人…私のヒーロー。」
私にとって彼は今も昔もヒーローだ。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる