BLACK DiVA

宵衣子

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39.隣国ウィウス

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ただ今、琴子は玲音とガーディアン本部の応接間に向かっていた。
応接間に入ると、赤い髪のショートボブにオレンジ色の瞳の女の子とダークブラウンの髪にシルバーの瞳の爽やかな好青年がソファから立ち上がった。

「依頼を受けました、ゴールドランカーの麻倉照幸です」

「同じくゴールドランカーの姫川紅葉です」

そう言って頭を下げる2人の胸元にはゴールドランカーの証のバッジが付いていた。
琴子は2人に見覚えがあった。いつだかの任務で行った時の森で出会った女性と青年だったからだ。
琴子はまた再会出来た喜びに自然と笑みが零れる。

「紅葉!!」

琴子が名前を呼ぶと紅葉は頭を上げて微笑む。

「久しぶりね、琴子!」

微笑み合う2人を見て玲音が不思議そうな顔をした。

「知り合い?」

「はい!任務で訪れた森で出会ったんです。凄く強いんですよ!」

「そっか…なら安心して依頼ができるな」

そう言って玲音は微笑んだ。
どうしてランカーの2人が呼ばれているのかと言うと黒の教団に行くと言う事は、仕事として動けないのでランカーを雇い、早急に場所と、黒の教団は過激な組織であるため、万が一戦闘になった際に戦闘要員にもなってもらうために玲音が依頼したのだ。

「紅葉…時間があまりないの。早急に黒の教団の場所を探し出して欲しい」

切羽詰まるような琴子の表情に紅葉は安心させるように微笑む。

「任せて、私達はゴールドランカーよ。ね、照幸」

紅葉が照幸の名前を呼ぶと彼は頷いた。

「うん、任せて。玲音さんから話は聞いてるからね。」

玲音と琴子は2人に深く頭を下げた。

「「よろしくお願いします」」

2人が部屋を出でいって玲音が口を開いた。

「琴子…この事は仕事ということでは動けない。だから俺は休みをとって動こうと思ってる。」

「はい。私もそうさせて頂きます」

「うし、じゃそれまでに溜まってる仕事、片付けようぜ!!」

「はい!」

2人は意気込むのだった。
それから3日程して照幸と紅葉から玲音に連絡があった。
黒の教団のが見つかったと。
それは隣国にあるらしい。

「隣国…ウィウス…か。」

玲音は琴子にその事を知らせると早速、旅の準備にとりかかった。
紅葉と照幸とはウィウスで待ち合わせの予定だ。
そうして玲音と琴子は飛行機でウィウスに向かうのだった。

……………

現在、ウィウスの都市に玲音と琴子はいる。
ウィウスの街並みは石造りの建造物が多く、気温と湿度が高いため人々は比較的、涼し気な格好をしている。…肌の露出が激しい。そのくらい暑いのだ。
玲音と琴子も気温に合わせて涼し気な格好にした。

「エウスの夏よりも更に暑いですね…」

琴子はゲンナリした顔をする。

「暑いな…」

玲音の額からは汗が一筋流れ落ちた。
待ち合わせしている居酒屋で紅葉と照幸と合流した。

「お疲れ様。疲れたでしょう?」

紅葉が心配そうな顔を琴子と玲音に向ける。

「大丈夫だよ」

「教団の場所はどこにあるんだ?」

玲音の問いかけに照幸が口を開く。

「教団はここから車で30分くらいの王都にあるよ。ただ教祖がBLACKDiVAかは怪しいけどね」

「どういう事だ?」

「教団の聖堂は一般開放されていたから行ってみたら、教祖様が公演を開いていて…紅葉と聞いてきたんだ。教祖は確かにBLACKDiVAの容姿をしていたど…あれは人にホログラムを投影してる感じだったよ。すごく精巧だったけど…」

「え???」

まさかの無駄足?と琴子は動揺する。
BLACKDiVAの容姿を投影していたと言う事は、その人はBLACKDiVAでは無いという事なのだろう。

「隊長…無駄足でしたかね…」

しゅんと琴子は落ち込んだ。
手掛かりが無くなってしまう。
そんな琴子を慰めるように玲音は琴子の頭をポンと撫でる。

「とりあえず、明日王都に行ってみよう」

玲音の言葉に一同は頷いた。

翌日、一同は黒の教団がある王都へと来ていた。
流石王都だけあって街は人と活気で溢れていた。

「ウィウスはレンガ出できた建物が多くて、写真映えしそう!!」

琴子はニコニコしながら辺りを見渡している。

「今度は観光でゆっくり来たいわね」

と紅葉。
そうして一同は人で賑わっている道から少しそれた脇道に入っていく。賑わっている道から少しそれただけで随分と静かだ。
そのまま歩みを進めて行くと黒の教団が見えてきた。見た目は教会の様だった。

「ここだよ。一般開放されていて中に入れるんだ。こっち…」

そう言って照幸が琴子と玲音を先導する。
中に入るとに2、30人くらいの人達が教祖の話を聞いているようだった。
琴子達もその集団の中に混ざる。
教祖の女性はステージの様な所に立ち話をしている。
見た目は黒いウェーヴがかった髪をハーフアップにしてサイドをお団子にしていて、ペリドット色の瞳をしていて、BLACKDiVAの容姿をしていた。

「どこからどう見てもBLACKDiVAに見えますけど、ホログラムなんですかね?」

琴子の問いかけに照幸が頷く。

「あぁ。よく周りを見て見て、四方、八方にホログラムの機械が置いてあるから」

照幸の言葉を聞いて琴子と玲音は周りを見渡す。
上手くカモフラージュされてはいるがホログラムの機械が動いていた。BLACKDiVAの容姿をステージ上の女性に投影しているのだ。
ステージに立っている女性は話をしている。

「BLACKDiVAの女王、ヤエカ様は現在、とある国に監禁され、薬漬けにされ、酷い扱いを受けているのです。私達は一刻も早く彼女を救い出さなければなりません。」

まるで人々の怒りを煽るような同情を買う様なそんな話し方だった。それを聞いていた玲音は苦笑いをする。

「(確かに薬で眠らせてはいるが…酷い扱いはしていないんだけどな…これって舞衣の事を言ってるんだよな?)」

「はっ…いつからこんな宗教組織みたいな集団になったんだか…」

ふと隣から皮肉げな女の人の声がして琴子は隣を見る。ノースリーブの涼し気な服に深くフードを被った人が立っていた。そこからちらりと覗く黒髪に琴子は目を奪われる。
そのフードを被った、恐らく女性だろうその人は立ち去ろうとする。

「っつ!!待って!!!」

思わず声を上げるも琴子の声は届かなかったらしい、そのまま教会の出口に向かって歩いていってしまう。琴子は思わず彼女の服を引っ張った。
するとその衝撃で彼女のフードがはだける。
見えた顔は、ウェーヴがかった黒髪にペリドット色の綺麗な瞳の女性だった。そうステージでホログラムされている女性と同じ姿だった。
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