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40.黒の教団
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フードを被った女性の姿が顕になった途端、あんなにステージで講演をしていた同じ容姿をホログラムされた女性が一瞬、停止する。
そして再び大きな声を上げた。
「いた!!ターゲットよ!!その者を捕らえろ!!」
ステージ上の女がそう言うと、どこに控えていたのか、恐らく黒の教団の一味が数人出てきて、フードがはだけた女性を捕まえようと向かってくる。
「ちっ!!」
フードの女性は舌打ちをすると踵を返して走り出す。
「《水の力よ地面に付与する》」
彼女がそう言うと彼女が走り去っていくと同時に地面がプールのように変化した。
追っていた黒の教団の一味達は皆そのプールに落ちてしまい、水面に上がる頃には既にフードの女性の姿は無かった。そのプールも数分後には跡形もなく消えた。
「凄い…あの人…本物のBLACKDiVAだ」
「そうみたいだな」
琴子の言葉に玲音が手がかりを見つけたと喜んだようにニッと笑う。
「黒の教団と敵対しているのかしら?」
一部始終を見ていた紅葉が考える仕草をした。
一同は教祖に話を聞こうとしたが、教徒達によって門前払いされてしまったので、居酒屋でご飯を食べている。
「あの黒髪の女の人に話を聞ければいいんですけど…」
琴子の言葉に照之は頷く。
「そうだね…教祖様には話を聞けそうにもないし」
「明日からはその黒髪の女の人を探そう」
と玲音。
「あ…」
その時紅葉が声を上げて指を指す。
その先に一同が目線を送ると、そこにはさっきの黒髪の女性が、艶やかな深緑色の肩くらいまである髪を後ろに結っている男性と食事をしていた。
「さっきの人!!」
琴子が声を上げると玲音は立ち上がり黒髪の女性に声を掛けた。
「俺は獅子王玲音と言います。昼間、黒の教団に襲われてましたよね?お話を伺いたいのですが…」
黒の教団と聞いて、黒髪の女の隣にいた深緑色の髪の男性がピリ着く。
そんな男性を女が制す。
「大丈夫よ。いいわ。でもここでは話せないから場所を変えましょう?」
女はそう言って微笑んだ。
女に案内されたのはとあるビルで、路地裏の裏口から中に入った。
ビルの一室で事務所の様な所だった。
「ようこそ、黒の教団へ」
そう言って微笑む女に、一同は呆然とした。
黒の教団??この人は何を言っているのだろうと思う。だってここはただの事務所だ。
「黒の教団…ですか?」
玲音が戸惑ったように女に聞くと女は頷いた。
「ええ。黒の教団よ。今は訳あって、教団の建物は取られちゃってるけど…私はアデラ・バーリエル。黒の教団のリーダーよ。」
教祖なんて呼ばないでね!宗教集団じゃないんだから…と続けた。
「アデラさん。俺達は貴女に会いに来ました」
「私に??」
「狂気姫…BLACKDiVAの女王について話を聞きたくて…」
玲音がそう言うとアデラはピクリと反応した。
「何が知りたいの?」
あっさりと教えてくれようとするアデラに玲音は戸惑う。初めて会ったというのに自分たちをまるで警戒していないようだ。そんな玲音の表情を読み取ったアデラがふっと笑う。
「貴方達は悪い人ではないでしょう?だって…」
アデラはそう言って琴子を見つめた。
「???」
不思議そうにする琴子に微笑む。
「久しぶりね琴子。」
「え…??」
「あら、忘れちゃったの??そのリボンを貴女にあげたのは私よ?」
その言葉を聞いて琴子ははっとする。
漆黒の髪にペリドット色の瞳…そうだずっと昔に琴子にリボンをくれた…
「東の魔女さん」
「当たり」
「お久しぶりです!!!」
琴子は頭を下げた。
そう彼女は昔、琴子に髪の色と瞳の色を自由に変えられる不思議なリボンをくれた人だった。
「琴子と一緒に居るから貴方達を信じているのよ」
そう言ってアデラは微笑んだ。
「私達、黒の教団はBLACKDiVAの保護と繁栄を目指している…でもその活動は無理やりBLACKDiVAを保護しようとしたり武力行使をしたりするような組織ではなかったのよ。どちらかと言うと見守るという方が正しいかしら。」
「だから…私にリボンをくれたんですね」
琴子の言葉にアデラは頷いた。
「でも、現に黒の教団は舞衣を狙って来ましたよね?」
玲音はキッとアデラを睨んだ。
「それは……過激派がやった事よ。現在黒の教団は真っ二つに割れているの。無理やりにでもBLACKDiVAを保護しようとする過激派と、見守ろうと考える穏健派に別れていて…過激派に教団の建物は取られてしまったのよ」
アデラは、はぁ~と深いため息をついた。
「建物を取り戻そうにも過激派にはアンノウンが複数いる上に、武闘派も多くて…それに比べて穏健派は数も少ないし、武闘派もあまりいないから…戦力差が凄くて中々ね…」
だから私達はこうして細々とひっそりとしているのよ…とアデラは続けた。
「でもどうしてそんなに過激派が多いのかしら?」
紅葉の疑問にアデラは答える。
「過激派のリーダーは黒の教団の副リーダーでね…彼はそんなに強力な力では無いのだけれど、魅了の力を持つアンノウンなのよ。言葉巧みに仲間達を過激派に引き込んで行ったわ…」
魅了の力は強いものではなく、人を言いなりにしたりはできないそうだ。それでも、彼の話す言葉に人々は魅力を感じやすいそうだ。
「過激派は他のBLACKDiVAは不遇な境遇で不幸で可哀想だ、だから黒の教団が保護するべきだ…と思い込んでいるの」
「そんな事…無いのに…」
と琴子は呟く。
「聖女、舞衣さんの扱われ方が過激派を刺激しているのよ」
「確かに…舞衣の扱いは傍から見ればよろしくないのかもしれないが…」
と玲音がうつむき加減になる。
「でもこのまま過激派を放っておく事もできないのよねぇ~」
困ったわぁ~とアデラはまたため息をついた。
ところで聞きたいことって何?と続ける。
「聖女舞衣の中からBLACKDiVAの女王を追い出したいんです」
と玲音はダメもとで聞いてみた。
少しの沈黙の後、アデラは答える。
「追い出す…ね……」
「今、私達の仲間が毒で危篤状態で………舞衣さんの力が必要なんです。でもそのためには…BLACKDiVAの女王を舞衣さんの中から追い出す、又は女王の意識が出てこないように完全に封じる事が必須条件で…」
琴子は事情をアデラに話した。
「なるほどね…聖女舞衣からBLACKDiVAの女王を引き離す事…できると思うわ…」
その前に条件があるわ…とアデラ。
「過激派から建物を取り戻すの手伝ってくれないかしら?そしたら聖女舞衣からBLACKDiVAの女王を引き離す方法を教えてあげるわ」
そう言ってアデラは不敵に微笑んだ。
そして再び大きな声を上げた。
「いた!!ターゲットよ!!その者を捕らえろ!!」
ステージ上の女がそう言うと、どこに控えていたのか、恐らく黒の教団の一味が数人出てきて、フードがはだけた女性を捕まえようと向かってくる。
「ちっ!!」
フードの女性は舌打ちをすると踵を返して走り出す。
「《水の力よ地面に付与する》」
彼女がそう言うと彼女が走り去っていくと同時に地面がプールのように変化した。
追っていた黒の教団の一味達は皆そのプールに落ちてしまい、水面に上がる頃には既にフードの女性の姿は無かった。そのプールも数分後には跡形もなく消えた。
「凄い…あの人…本物のBLACKDiVAだ」
「そうみたいだな」
琴子の言葉に玲音が手がかりを見つけたと喜んだようにニッと笑う。
「黒の教団と敵対しているのかしら?」
一部始終を見ていた紅葉が考える仕草をした。
一同は教祖に話を聞こうとしたが、教徒達によって門前払いされてしまったので、居酒屋でご飯を食べている。
「あの黒髪の女の人に話を聞ければいいんですけど…」
琴子の言葉に照之は頷く。
「そうだね…教祖様には話を聞けそうにもないし」
「明日からはその黒髪の女の人を探そう」
と玲音。
「あ…」
その時紅葉が声を上げて指を指す。
その先に一同が目線を送ると、そこにはさっきの黒髪の女性が、艶やかな深緑色の肩くらいまである髪を後ろに結っている男性と食事をしていた。
「さっきの人!!」
琴子が声を上げると玲音は立ち上がり黒髪の女性に声を掛けた。
「俺は獅子王玲音と言います。昼間、黒の教団に襲われてましたよね?お話を伺いたいのですが…」
黒の教団と聞いて、黒髪の女の隣にいた深緑色の髪の男性がピリ着く。
そんな男性を女が制す。
「大丈夫よ。いいわ。でもここでは話せないから場所を変えましょう?」
女はそう言って微笑んだ。
女に案内されたのはとあるビルで、路地裏の裏口から中に入った。
ビルの一室で事務所の様な所だった。
「ようこそ、黒の教団へ」
そう言って微笑む女に、一同は呆然とした。
黒の教団??この人は何を言っているのだろうと思う。だってここはただの事務所だ。
「黒の教団…ですか?」
玲音が戸惑ったように女に聞くと女は頷いた。
「ええ。黒の教団よ。今は訳あって、教団の建物は取られちゃってるけど…私はアデラ・バーリエル。黒の教団のリーダーよ。」
教祖なんて呼ばないでね!宗教集団じゃないんだから…と続けた。
「アデラさん。俺達は貴女に会いに来ました」
「私に??」
「狂気姫…BLACKDiVAの女王について話を聞きたくて…」
玲音がそう言うとアデラはピクリと反応した。
「何が知りたいの?」
あっさりと教えてくれようとするアデラに玲音は戸惑う。初めて会ったというのに自分たちをまるで警戒していないようだ。そんな玲音の表情を読み取ったアデラがふっと笑う。
「貴方達は悪い人ではないでしょう?だって…」
アデラはそう言って琴子を見つめた。
「???」
不思議そうにする琴子に微笑む。
「久しぶりね琴子。」
「え…??」
「あら、忘れちゃったの??そのリボンを貴女にあげたのは私よ?」
その言葉を聞いて琴子ははっとする。
漆黒の髪にペリドット色の瞳…そうだずっと昔に琴子にリボンをくれた…
「東の魔女さん」
「当たり」
「お久しぶりです!!!」
琴子は頭を下げた。
そう彼女は昔、琴子に髪の色と瞳の色を自由に変えられる不思議なリボンをくれた人だった。
「琴子と一緒に居るから貴方達を信じているのよ」
そう言ってアデラは微笑んだ。
「私達、黒の教団はBLACKDiVAの保護と繁栄を目指している…でもその活動は無理やりBLACKDiVAを保護しようとしたり武力行使をしたりするような組織ではなかったのよ。どちらかと言うと見守るという方が正しいかしら。」
「だから…私にリボンをくれたんですね」
琴子の言葉にアデラは頷いた。
「でも、現に黒の教団は舞衣を狙って来ましたよね?」
玲音はキッとアデラを睨んだ。
「それは……過激派がやった事よ。現在黒の教団は真っ二つに割れているの。無理やりにでもBLACKDiVAを保護しようとする過激派と、見守ろうと考える穏健派に別れていて…過激派に教団の建物は取られてしまったのよ」
アデラは、はぁ~と深いため息をついた。
「建物を取り戻そうにも過激派にはアンノウンが複数いる上に、武闘派も多くて…それに比べて穏健派は数も少ないし、武闘派もあまりいないから…戦力差が凄くて中々ね…」
だから私達はこうして細々とひっそりとしているのよ…とアデラは続けた。
「でもどうしてそんなに過激派が多いのかしら?」
紅葉の疑問にアデラは答える。
「過激派のリーダーは黒の教団の副リーダーでね…彼はそんなに強力な力では無いのだけれど、魅了の力を持つアンノウンなのよ。言葉巧みに仲間達を過激派に引き込んで行ったわ…」
魅了の力は強いものではなく、人を言いなりにしたりはできないそうだ。それでも、彼の話す言葉に人々は魅力を感じやすいそうだ。
「過激派は他のBLACKDiVAは不遇な境遇で不幸で可哀想だ、だから黒の教団が保護するべきだ…と思い込んでいるの」
「そんな事…無いのに…」
と琴子は呟く。
「聖女、舞衣さんの扱われ方が過激派を刺激しているのよ」
「確かに…舞衣の扱いは傍から見ればよろしくないのかもしれないが…」
と玲音がうつむき加減になる。
「でもこのまま過激派を放っておく事もできないのよねぇ~」
困ったわぁ~とアデラはまたため息をついた。
ところで聞きたいことって何?と続ける。
「聖女舞衣の中からBLACKDiVAの女王を追い出したいんです」
と玲音はダメもとで聞いてみた。
少しの沈黙の後、アデラは答える。
「追い出す…ね……」
「今、私達の仲間が毒で危篤状態で………舞衣さんの力が必要なんです。でもそのためには…BLACKDiVAの女王を舞衣さんの中から追い出す、又は女王の意識が出てこないように完全に封じる事が必須条件で…」
琴子は事情をアデラに話した。
「なるほどね…聖女舞衣からBLACKDiVAの女王を引き離す事…できると思うわ…」
その前に条件があるわ…とアデラ。
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