41 / 42
41.王冠
しおりを挟む
BLACKDiVAの女王、ヤエカ様。
慈愛に溢れ、聖母の如く温かく優しい人。
それがBLACKDiVAの女王様だった。
それなのに…そんな彼女の最期は悲惨なものだった。
目の前で大切な同族達を殺され、男たちの慰みものにされ…そして最期はボロ雑巾のように扱われ殺された。屈辱的な最期だったのだ。
そんな彼女の憎悪はどんなに時が経っても消えることなく、ずっと機会を伺っていたのだ。自分の憎悪が入り込める隙のある者は居ないかと。
そんな時に見つけたのが舞衣だった。
彼女は昔のヤエカの様に慈愛に溢れ、優しい子だった。そんな優しい子だったからこそ、ヤエカは入り込むことができたのだ。
舞衣に自分の過去を見せた時彼女は心底動揺し、悲しんだ。
そしてヤエカは囁いたのだ。
「お願い、私をここから連れ出して?ずっとここにいるのは苦しいの…お願いよ」
苦しかったのは事実だ。何もかもめちゃくちゃにしたいそんな強い衝動、憎悪をどうすることも出来なくて苦しかった。それを発散するための器が欲しかったのだ。
舞衣はそんなヤエカに薄々気づいてはいたが、彼女を救いたいと言う想いから受け入れた。
しかしヤエカの憎悪は想像していたよりもずっと、強く舞衣は彼女を抑える事が次第に出来なくなっていったのだ。
ヤエカの声はアデラにも聞こえてきた。
頭に直接響いてくる声。
「こっちよ…こっちに来て…」
自分を呼ぶ声に狂気を感じたアデラは怖くてその声を無視し続けた。そのうちその声は聞こえなくなっが…今思えば器を見つけたから聞こえなくなったのだろう。
それから聖女舞衣の噂を聞いて隣国へ赴いた時に琴子を見つけたのだ。
漆黒の髪に漆黒の瞳。
しかし彼女からBLACKDiVAの力は感じなかった。
でも、その容姿から誰かに狙われたりしたら大変だと思いアデラは琴子にリボンを渡したのだ。
「やっぱりBLACKDiVAだったのね…」
小さく呟いたアデラの声は誰にも聞こえなかった。
「元々、黒の教団はあんな教えを説いたりする宗教集団では無かったのよ…BLACKDiVAの保護及び、BLACKDiVAの女王が安らかに眠れるように祈りを捧げる集団だったの…」
でも…とアデラは続ける。
「舞衣さんの中にいるヤエカ様の存在が黒の教団に大きな波紋を呼んだの。黒の教団は女王が安らかな眠りについて欲しいそう言う思いの元集まった組織でもあるのよ。当然、監禁状態のヤエカ様を放っては置けなかったの。」
しかしヤエカが中に入っている舞衣は聖女。そう簡単には手を出せない。そこでどうしようかとまごついてる間に過激派が誕生したって訳。と溜息をつきながらアデラは言った。
琴子はさっきから疑問に思っている事がある。
アデラの話すヤエカ様は書面上で見たものではなく…まるで会った事があるかのよう…。
「あの…アデラさんは女王様に会った事があるんですか?」
琴子の言葉にアデラはニコリと笑った。
「会った事は…あるって言うのかしら?でもヤエカ様の記憶とか想いとかは知ってるの。琴子も…知りたい?」
「そんなこと…出来るんですか?」
「ええ。でもそれを知ったら憎しみに囚われて…人間を恨んじゃうかも」
アデラの言葉に琴子は玲音を見つめる。
「私は…」
BLACKDiVAとして知る必要があるんじゃないだろうか…?
BLACKDiVAの歴史を…女王様の想いを…。
琴子の覚悟は決まったようだった。
それを確信した玲音は琴子を見つめたまま力強く頷いた。
「大丈夫。琴子がそうならないように俺がそばに居るから」
玲音の言葉に琴子は安心したように頷いた。
「それなら、黒の教団の最深部にいかなくちゃね」
アデラはそう言ってにっこりと微笑んだ。
「最深部ってどうやって行くんですか?」
現在、黒の教団は過激派に征服されている。
最深部に行くには過激派をどうにかしなければいけないだろう。
するとアデラがよく聞いてくれました!!と言うように得意げな顔をした。
「私しか知らない秘密の通路があるのよ!!」
という訳でアデラとその側近、ニコライ・リングダールと言うらしい…と、琴子と玲音、紅葉、照幸は最深部を目指すのだった。
最深部へは秘密の通路を使ったので難なく行けた。
そこは真っ白な空間の真ん中に台座があり、その台座には王冠が置いてあった。
アデラは琴子をその王冠の前まで連れていく。
2人以外は入口のところでその様子を見ていた。
「これは…王冠ですね」
琴子が呟くとアデラは頷いた。
「ええ。これはBLACKDiVAの女王…ヤエカ様の王冠よ。これに触れたBLACKDiVAは彼女の記憶と想いを感じる事ができる…」
アデラの言葉を聞いて琴子は改めて、神妙そうな顔で王冠を眺めた。
「(少しだけ…怖い。彼女の想いに触れて私は正気でいられるだろうか…)」
それでも…と意を決して琴子は王冠にそっと触れた。
慈愛に溢れ、聖母の如く温かく優しい人。
それがBLACKDiVAの女王様だった。
それなのに…そんな彼女の最期は悲惨なものだった。
目の前で大切な同族達を殺され、男たちの慰みものにされ…そして最期はボロ雑巾のように扱われ殺された。屈辱的な最期だったのだ。
そんな彼女の憎悪はどんなに時が経っても消えることなく、ずっと機会を伺っていたのだ。自分の憎悪が入り込める隙のある者は居ないかと。
そんな時に見つけたのが舞衣だった。
彼女は昔のヤエカの様に慈愛に溢れ、優しい子だった。そんな優しい子だったからこそ、ヤエカは入り込むことができたのだ。
舞衣に自分の過去を見せた時彼女は心底動揺し、悲しんだ。
そしてヤエカは囁いたのだ。
「お願い、私をここから連れ出して?ずっとここにいるのは苦しいの…お願いよ」
苦しかったのは事実だ。何もかもめちゃくちゃにしたいそんな強い衝動、憎悪をどうすることも出来なくて苦しかった。それを発散するための器が欲しかったのだ。
舞衣はそんなヤエカに薄々気づいてはいたが、彼女を救いたいと言う想いから受け入れた。
しかしヤエカの憎悪は想像していたよりもずっと、強く舞衣は彼女を抑える事が次第に出来なくなっていったのだ。
ヤエカの声はアデラにも聞こえてきた。
頭に直接響いてくる声。
「こっちよ…こっちに来て…」
自分を呼ぶ声に狂気を感じたアデラは怖くてその声を無視し続けた。そのうちその声は聞こえなくなっが…今思えば器を見つけたから聞こえなくなったのだろう。
それから聖女舞衣の噂を聞いて隣国へ赴いた時に琴子を見つけたのだ。
漆黒の髪に漆黒の瞳。
しかし彼女からBLACKDiVAの力は感じなかった。
でも、その容姿から誰かに狙われたりしたら大変だと思いアデラは琴子にリボンを渡したのだ。
「やっぱりBLACKDiVAだったのね…」
小さく呟いたアデラの声は誰にも聞こえなかった。
「元々、黒の教団はあんな教えを説いたりする宗教集団では無かったのよ…BLACKDiVAの保護及び、BLACKDiVAの女王が安らかに眠れるように祈りを捧げる集団だったの…」
でも…とアデラは続ける。
「舞衣さんの中にいるヤエカ様の存在が黒の教団に大きな波紋を呼んだの。黒の教団は女王が安らかな眠りについて欲しいそう言う思いの元集まった組織でもあるのよ。当然、監禁状態のヤエカ様を放っては置けなかったの。」
しかしヤエカが中に入っている舞衣は聖女。そう簡単には手を出せない。そこでどうしようかとまごついてる間に過激派が誕生したって訳。と溜息をつきながらアデラは言った。
琴子はさっきから疑問に思っている事がある。
アデラの話すヤエカ様は書面上で見たものではなく…まるで会った事があるかのよう…。
「あの…アデラさんは女王様に会った事があるんですか?」
琴子の言葉にアデラはニコリと笑った。
「会った事は…あるって言うのかしら?でもヤエカ様の記憶とか想いとかは知ってるの。琴子も…知りたい?」
「そんなこと…出来るんですか?」
「ええ。でもそれを知ったら憎しみに囚われて…人間を恨んじゃうかも」
アデラの言葉に琴子は玲音を見つめる。
「私は…」
BLACKDiVAとして知る必要があるんじゃないだろうか…?
BLACKDiVAの歴史を…女王様の想いを…。
琴子の覚悟は決まったようだった。
それを確信した玲音は琴子を見つめたまま力強く頷いた。
「大丈夫。琴子がそうならないように俺がそばに居るから」
玲音の言葉に琴子は安心したように頷いた。
「それなら、黒の教団の最深部にいかなくちゃね」
アデラはそう言ってにっこりと微笑んだ。
「最深部ってどうやって行くんですか?」
現在、黒の教団は過激派に征服されている。
最深部に行くには過激派をどうにかしなければいけないだろう。
するとアデラがよく聞いてくれました!!と言うように得意げな顔をした。
「私しか知らない秘密の通路があるのよ!!」
という訳でアデラとその側近、ニコライ・リングダールと言うらしい…と、琴子と玲音、紅葉、照幸は最深部を目指すのだった。
最深部へは秘密の通路を使ったので難なく行けた。
そこは真っ白な空間の真ん中に台座があり、その台座には王冠が置いてあった。
アデラは琴子をその王冠の前まで連れていく。
2人以外は入口のところでその様子を見ていた。
「これは…王冠ですね」
琴子が呟くとアデラは頷いた。
「ええ。これはBLACKDiVAの女王…ヤエカ様の王冠よ。これに触れたBLACKDiVAは彼女の記憶と想いを感じる事ができる…」
アデラの言葉を聞いて琴子は改めて、神妙そうな顔で王冠を眺めた。
「(少しだけ…怖い。彼女の想いに触れて私は正気でいられるだろうか…)」
それでも…と意を決して琴子は王冠にそっと触れた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる