BLACK DiVA

宵衣子

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41.王冠

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BLACKDiVAの女王、ヤエカ様。
慈愛に溢れ、聖母の如く温かく優しい人。
それがBLACKDiVAの女王様だった。

それなのに…そんな彼女の最期は悲惨なものだった。
目の前で大切な同族達を殺され、男たちの慰みものにされ…そして最期はボロ雑巾のように扱われ殺された。屈辱的な最期だったのだ。
そんな彼女の憎悪はどんなに時が経っても消えることなく、ずっと機会を伺っていたのだ。自分の憎悪が入り込める隙のある者は居ないかと。

そんな時に見つけたのが舞衣だった。
彼女は昔のヤエカの様に慈愛に溢れ、優しい子だった。そんな優しい子だったからこそ、ヤエカは入り込むことができたのだ。

舞衣に自分の過去を見せた時彼女は心底動揺し、悲しんだ。
そしてヤエカは囁いたのだ。

「お願い、私をここから連れ出して?ずっとここにいるのは苦しいの…お願いよ」

苦しかったのは事実だ。何もかもめちゃくちゃにしたいそんな強い衝動、憎悪をどうすることも出来なくて苦しかった。それを発散するための器が欲しかったのだ。
舞衣はそんなヤエカに薄々気づいてはいたが、彼女を救いたいと言う想いから受け入れた。
しかしヤエカの憎悪は想像していたよりもずっと、強く舞衣は彼女を抑える事が次第に出来なくなっていったのだ。

ヤエカの声はアデラにも聞こえてきた。
頭に直接響いてくる声。

「こっちよ…こっちに来て…」

自分を呼ぶ声に狂気を感じたアデラは怖くてその声を無視し続けた。そのうちその声は聞こえなくなっが…今思えば器を見つけたから聞こえなくなったのだろう。
それから聖女舞衣の噂を聞いて隣国へ赴いた時に琴子を見つけたのだ。
漆黒の髪に漆黒の瞳。
しかし彼女からBLACKDiVAの力は感じなかった。
でも、その容姿から誰かに狙われたりしたら大変だと思いアデラは琴子にリボンを渡したのだ。

「やっぱりBLACKDiVAだったのね…」

小さく呟いたアデラの声は誰にも聞こえなかった。

「元々、黒の教団はあんな教えを説いたりする宗教集団では無かったのよ…BLACKDiVAの保護及び、BLACKDiVAの女王が安らかに眠れるように祈りを捧げる集団だったの…」

でも…とアデラは続ける。

「舞衣さんの中にいるヤエカ様の存在が黒の教団に大きな波紋を呼んだの。黒の教団は女王が安らかな眠りについて欲しいそう言う思いの元集まった組織でもあるのよ。当然、監禁状態のヤエカ様を放っては置けなかったの。」

しかしヤエカが中に入っている舞衣は聖女。そう簡単には手を出せない。そこでどうしようかとまごついてる間に過激派が誕生したって訳。と溜息をつきながらアデラは言った。
琴子はさっきから疑問に思っている事がある。
アデラの話すヤエカ様は書面上で見たものではなく…まるで会った事があるかのよう…。

「あの…アデラさんは女王様に会った事があるんですか?」

琴子の言葉にアデラはニコリと笑った。

「会った事は…あるって言うのかしら?でもヤエカ様の記憶とか想いとかは知ってるの。琴子も…知りたい?」

「そんなこと…出来るんですか?」

「ええ。でもそれを知ったら憎しみに囚われて…人間を恨んじゃうかも」

アデラの言葉に琴子は玲音を見つめる。

「私は…」

BLACKDiVAとして知る必要があるんじゃないだろうか…?
BLACKDiVAの歴史を…女王様の想いを…。

琴子の覚悟は決まったようだった。
それを確信した玲音は琴子を見つめたまま力強く頷いた。

「大丈夫。琴子がそうならないように俺がそばに居るから」

玲音の言葉に琴子は安心したように頷いた。

「それなら、黒の教団の最深部にいかなくちゃね」

アデラはそう言ってにっこりと微笑んだ。

「最深部ってどうやって行くんですか?」

現在、黒の教団は過激派に征服されている。
最深部に行くには過激派をどうにかしなければいけないだろう。
するとアデラがよく聞いてくれました!!と言うように得意げな顔をした。

「私しか知らない秘密の通路があるのよ!!」

という訳でアデラとその側近、ニコライ・リングダールと言うらしい…と、琴子と玲音、紅葉、照幸は最深部を目指すのだった。
最深部へは秘密の通路を使ったので難なく行けた。
そこは真っ白な空間の真ん中に台座があり、その台座には王冠が置いてあった。

アデラは琴子をその王冠の前まで連れていく。
2人以外は入口のところでその様子を見ていた。

「これは…王冠ですね」

琴子が呟くとアデラは頷いた。

「ええ。これはBLACKDiVAの女王…ヤエカ様の王冠よ。これに触れたBLACKDiVAは彼女の記憶と想いを感じる事ができる…」

アデラの言葉を聞いて琴子は改めて、神妙そうな顔で王冠を眺めた。

「(少しだけ…怖い。彼女の想いに触れて私は正気でいられるだろうか…)」

それでも…と意を決して琴子は王冠にそっと触れた。
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