【完結】MIRACLE 雨の日の陽だまり~副社長との運命の再会~

夏目若葉

文字の大きさ
23 / 72

◇彼の正体と土砂降りの雨⑦

しおりを挟む
「……悪い。頭を上げてくれないか」

 店長を呼べとクレームをつけられるかもしれない。
 そう思いながら最敬礼を続けていると、目の前の彼がやさしい声音でそう言ってくれた。

「別に怒ったわけじゃないんだ。すまない」

 のろのろと頭を上げて彼の表情をうかがうと、彼は無表情のまま私を見つめていた。
 だけどポーカーフェイスのせいで、なにを考えているのかまったく読めない。

「今、思いついたんだが」
「……はい」
「君にひとつ、頼みたいことができた。聞いてくれるかな?」
「私に……できることでしたら……」

 相手はお客様だ。無下にはできない。
 できるだけ要望に応えたいとは思うけれど……。
 なにかとんでもないことを要求されるのかもしれないと危惧しつつ、背筋をピンと伸ばした。神妙な面持ちで次の言葉を待つ。

「今夜、一緒に食事をしてくれないか?」

 いったいどんな要望なのかまったく想像できていなかったものの、てっきり客と店員という枠の範囲内のことだと思っていた。
 なのでそんな突拍子もない頼みごとを言われ、私はポカンとして固まってしまう。

「嫌なら断ってくれていいんだが」
「嫌ではありませんが、でも……」

 今日は誕生日ではないのですか? と口から出そうになったが寸でのところで飲み込んだ。

 奥さんが家で豪勢な料理を用意して待っているのではないのだろうか。
 もしくはふたりでレストランに食事に行ったり……。

「だったら、頼めないかな」

 奥さんとはなにも予定がないから、私と一緒に食事をして欲しいと頼むのだと思う。

「わかりました」
「仕事は何時に終わる?」
「もうじき終わります」
「そう。だったら駐車場に車を停めてるから、そこで待っているよ」

 店の隣の敷地に来客用の駐車スペースがある。
 数台分しか停めることはできないが、うちの店舗はそれで十分だ。

 そこで待っていると彼は言い残し、そのまま外に出て行ってしまった。
 私が渡したキャンドル入りの紙袋を持って ―――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夜の声

神崎
恋愛
r15にしてありますが、濡れ場のシーンはわずかにあります。 読まなくても物語はわかるので、あるところはタイトルの数字を#で囲んでます。 小さな喫茶店でアルバイトをしている高校生の「桜」は、ある日、喫茶店の店主「葵」より、彼の友人である「柊」を紹介される。 柊の声は彼女が聴いている夜の声によく似ていた。 そこから彼女は柊に急速に惹かれていく。しかし彼は彼女に決して語らない事があった。

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

ソツのない彼氏とスキのない彼女

吉野 那生
恋愛
特別目立つ訳ではない。 どちらかといえば地味だし、バリキャリという風でもない。 だけど…何故か気になってしまう。 気がつくと、彼女の姿を目で追っている。 *** 社内でも知らない者はいないという程、有名な彼。 爽やかな見た目、人懐っこく相手の懐にスルリと入り込む手腕。 そして、華やかな噂。 あまり得意なタイプではない。 どちらかといえば敬遠するタイプなのに…。

処理中です...