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◆再会②
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「今から帰るなら、駅まで送るよ」
「え?! いいですよ。せっかくみなさんで楽しく……」
「佐藤、悪い。ちょっと先行ってて? すぐ追いつくから」
俺の言葉を聞いて、佐藤たちはゆっくりとまたカラオケ店へと歩きだした。
「和久井さん、本当にいいです。そんなことをしてもらったら、私が聖二さんに怒られますから!」
どうやら俺とふたりきりになるのは、彼氏である宇田さんを怒らせるらしい。
溺愛しているから仕方がないとはいえ、あの先輩は本当に嫉妬深い。
「大丈夫? 駅まで行ける?」
「はい! 駅はすぐそこですし、暗い道もないですし!」
たしかに彼女の言うとおりだけれど……
「和久井さん、心配してもらってありがとうございます」
礼なんて言わないでほしい。俺は結局なにもしていないのだから。
「でも最寄の駅からマンションまで、夜道が暗いよな?」
以前に一度だけ彼女を送って行ったことがある。
引っ越していなければ、そのときと同じマンションで彼女は宇田さんと同棲中のはずだ。
「宇田さんに駅まで迎えに来てもらえば?」
「聖二さんは今日も残業だと思いますし……私、ひとりで帰れますから大丈夫です」
俺たちが会社を出るときには、まだ宇田さんは外から戻ってきていなかった。
だけどさすがにもう今の時間ならば、デスクでの残務処理も終わるころだ。
「和久井さん、早く合流してください。みなさん行っちゃいますよ?!」
「いや、でも……」
ふと佐藤たちが行った方向に目をやれば、まだ僅かに後ろ姿が見えていた。
「じゃあ、お疲れさまです!」
そんな俺の隙をついて、彼女は足早に走り去ってしまう。
「遥ちゃん!!」
俺の呼びとめに振り向くことなく駅方向へ走る彼女は、俺がどんな言葉を言っても送らせてはくれないだろう。
それは彼女が宇田さんとの関係を大切にしている証拠だ。
だが遅い時間の暗い夜道を、ひとりで歩かせるのは心配で仕方なくて、どうしたものかとしばし考え込んだ。
ていうか、俺はなにをやっているんだ。これ以上どうしようもないのに。
とりあえず、佐藤たちが向かったカラオケ店へ足を向けた。
歩きながらスマホを取り出し、宇田さんの番号を表示させて発信ボタンを押す。
もう帰宅しているかもしれないが、まだ残業中の可能性もある。とにかく連絡しておかなければ俺の気が済まない。
『もしもし?』
数回の呼び出しコールのあと、聞き慣れた声が耳に届いた。
「お疲れさまです、和久井です」
『お疲れ。どうした? お前今日はもう帰ったよな?』
この口ぶりからすると、宇田さんはまだ会社にいるみたいだ。
「え?! いいですよ。せっかくみなさんで楽しく……」
「佐藤、悪い。ちょっと先行ってて? すぐ追いつくから」
俺の言葉を聞いて、佐藤たちはゆっくりとまたカラオケ店へと歩きだした。
「和久井さん、本当にいいです。そんなことをしてもらったら、私が聖二さんに怒られますから!」
どうやら俺とふたりきりになるのは、彼氏である宇田さんを怒らせるらしい。
溺愛しているから仕方がないとはいえ、あの先輩は本当に嫉妬深い。
「大丈夫? 駅まで行ける?」
「はい! 駅はすぐそこですし、暗い道もないですし!」
たしかに彼女の言うとおりだけれど……
「和久井さん、心配してもらってありがとうございます」
礼なんて言わないでほしい。俺は結局なにもしていないのだから。
「でも最寄の駅からマンションまで、夜道が暗いよな?」
以前に一度だけ彼女を送って行ったことがある。
引っ越していなければ、そのときと同じマンションで彼女は宇田さんと同棲中のはずだ。
「宇田さんに駅まで迎えに来てもらえば?」
「聖二さんは今日も残業だと思いますし……私、ひとりで帰れますから大丈夫です」
俺たちが会社を出るときには、まだ宇田さんは外から戻ってきていなかった。
だけどさすがにもう今の時間ならば、デスクでの残務処理も終わるころだ。
「和久井さん、早く合流してください。みなさん行っちゃいますよ?!」
「いや、でも……」
ふと佐藤たちが行った方向に目をやれば、まだ僅かに後ろ姿が見えていた。
「じゃあ、お疲れさまです!」
そんな俺の隙をついて、彼女は足早に走り去ってしまう。
「遥ちゃん!!」
俺の呼びとめに振り向くことなく駅方向へ走る彼女は、俺がどんな言葉を言っても送らせてはくれないだろう。
それは彼女が宇田さんとの関係を大切にしている証拠だ。
だが遅い時間の暗い夜道を、ひとりで歩かせるのは心配で仕方なくて、どうしたものかとしばし考え込んだ。
ていうか、俺はなにをやっているんだ。これ以上どうしようもないのに。
とりあえず、佐藤たちが向かったカラオケ店へ足を向けた。
歩きながらスマホを取り出し、宇田さんの番号を表示させて発信ボタンを押す。
もう帰宅しているかもしれないが、まだ残業中の可能性もある。とにかく連絡しておかなければ俺の気が済まない。
『もしもし?』
数回の呼び出しコールのあと、聞き慣れた声が耳に届いた。
「お疲れさまです、和久井です」
『お疲れ。どうした? お前今日はもう帰ったよな?』
この口ぶりからすると、宇田さんはまだ会社にいるみたいだ。
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