【完結】あなたに恋愛指南します

夏目若葉

文字の大きさ
29 / 57

◆交錯①

しおりを挟む
***

『昨日はありがとうございました。風邪はひいてないので大丈夫です』

 翌日の月曜の朝、会社で着信を告げたスマホを見ると、舞花ちゃんからメッセージが届いていた。
『風邪は大丈夫だった?』と俺が先にメッセージを送り、来た返事がそれだ。
 雨に少し濡れただけだといっても、彼女はあのときすごく寒そうにしていたから、風邪をひいてなくて本当によかった。

「竣、朝から舞花ちゃんとやり取りか?」

 スマホを見てホッとしていたところへ、佐藤から声をかけられて顔が引きつった。
 後ろを振り返れば、佐藤がニヤニヤとした冷やかすような顔つきをしていた。予想したどおりだ。

「昨日デートだったんだろ?」
「お前、なんで知ってるんだよ」

 俺は驚きを隠せず、それと同時に心底嫌そうな顔をした。俺の行動がバレていて、非常に気味が悪い。

「美里ちゃんからの情報だ」

 佐藤ときたら、俺をあざけ笑うように顔の横でピースサインをしている。
 そのふざけた顔を殴ってやりたい衝動にかられたが、大人なので当然我慢した。
 俺は昨日のデートのことは、一切口にしていなかったが、佐藤は美里ちゃんから伝え聞いて知っていたようだ。
 コイツはこういうことに関しては最大限エネルギーを使う男で、あちこち情報網も広い。
 だけど俺と舞花ちゃんについては、面白がっているようにしか思えない。

「で、舞花ちゃんと、ついにどうにかなったのか?」

 ニヤニヤした笑みを浮かべ、俺のデスクに張り付いて質問攻めにしようとする佐藤を軽くにらんだ。
 課長か宇田さんから、カミナリでも落とされればいいのに。

「ラーメンを食いに行っただけだ」
「デートなのに、それだけ?」
「途中で雨が降ってきたからな。そのまま帰った」
「うわぁ、舞花ちゃん……かわいそうに」

 かわいそうとか、お前に言われる筋合いはないんだよ。

「竣、舞花ちゃんのこと好きじゃないのか?」

 佐藤にしては珍しくニヤニヤを引っ込めて、さも不思議そうな顔をして聞いてくる。
 朝からこの事情聴取はなんなのだ。俺が佐藤に答える必要はないだろう。

「さぁな」
「はぁ? 俺はてっきり、舞花ちゃんを気に入ってるんだと思ってた」

 俺はうんざりだと言わんがばかりに仕事の資料を持って立ち上がり、佐藤から逃れた。
 
 昨日は一緒にラーメンを食べに行って、それがすごくうまくて……
 俺のとっておきの場所に舞花ちゃんを連れて行った。会話の雰囲気も悪くなかった。
 高台から見える景色も気に入ってもらえたみたいで、彼女はそれをスマホのカメラにおさめていた。
 そのあと、少し風が出てきて気温が下がって、舞花ちゃんが寒そうにしていて……
 透き通るような彼女の白い肌に思わず触れたくなったが、俺の理性がそれをグッと抑えた。

 でも、俺はあのとき、目が合った舞花ちゃんになにをしようとしていたのか。

 ―――あの雨が邪魔をしなければ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

夜の帝王の一途な愛

ラヴ KAZU
恋愛
彼氏ナシ・子供ナシ・仕事ナシ……、ないない尽くしで人生に焦りを感じているアラフォー女性の前に、ある日突然、白馬の王子様が現れた! ピュアな主人公が待ちに待った〝白馬の王子様"の正体は、若くしてホストクラブを経営するカリスマNO.1ホスト。「俺と一緒に暮らさないか」突然のプロポーズと思いきや、契約結婚の申し出だった。 ところが、イケメンホスト麻生凌はたっぷりの愛情を濯ぐ。 翻弄される結城あゆみ。 そんな凌には誰にも言えない秘密があった。 あゆみの運命は……

Marry Me?

美凪ましろ
恋愛
 ――あの日、王子様があたしの目の前に現れた。  仕事が忙しいアパレル店員の彼女と、王子系美青年の恋物語。  不定期更新。たぶん、全年齢でいけるはず。 ※ダイレクトな性描写はありませんが、ややそっち系のトークをする場面があります。 ※彼の過去だけ、ダークな描写があります。 ■画像は、イトノコさまの作品です。 https://www.pixiv.net/artworks/85809405

男に間違えられる私は女嫌いの冷徹若社長に溺愛される

山口三
恋愛
「俺と結婚してほしい」  出会ってまだ何時間も経っていない相手から沙耶(さや)は告白された・・・のでは無く契約結婚の提案だった。旅先で危ない所を助けられた沙耶は契約結婚を申し出られたのだ。相手は五瀬馨(いつせかおる)彼は国内でも有数の巨大企業、五瀬グループの若き社長だった。沙耶は自分の夢を追いかける資金を得る為、養女として窮屈な暮らしを強いられている今の家から脱出する為にもこの提案を受ける事にする。  冷酷で女嫌いの社長とお人好しの沙耶。二人の契約結婚の行方は?  

月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜

白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳 yayoi × 月城尊 29歳 takeru 母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司 彼は、母が持っていた指輪を探しているという。 指輪を巡る秘密を探し、 私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。

政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

美桜羅
恋愛
きみのことなんてしらないよ 関係ないし、興味もないな。 ただ一つ言えるのは 君と僕は一生一緒にいなくちゃならない事だけだ。

処理中です...