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◆交錯①
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***
『昨日はありがとうございました。風邪はひいてないので大丈夫です』
翌日の月曜の朝、会社で着信を告げたスマホを見ると、舞花ちゃんからメッセージが届いていた。
『風邪は大丈夫だった?』と俺が先にメッセージを送り、来た返事がそれだ。
雨に少し濡れただけだといっても、彼女はあのときすごく寒そうにしていたから、風邪をひいてなくて本当によかった。
「竣、朝から舞花ちゃんとやり取りか?」
スマホを見てホッとしていたところへ、佐藤から声をかけられて顔が引きつった。
後ろを振り返れば、佐藤がニヤニヤとした冷やかすような顔つきをしていた。予想したどおりだ。
「昨日デートだったんだろ?」
「お前、なんで知ってるんだよ」
俺は驚きを隠せず、それと同時に心底嫌そうな顔をした。俺の行動がバレていて、非常に気味が悪い。
「美里ちゃんからの情報だ」
佐藤ときたら、俺をあざけ笑うように顔の横でピースサインをしている。
そのふざけた顔を殴ってやりたい衝動にかられたが、大人なので当然我慢した。
俺は昨日のデートのことは、一切口にしていなかったが、佐藤は美里ちゃんから伝え聞いて知っていたようだ。
コイツはこういうことに関しては最大限エネルギーを使う男で、あちこち情報網も広い。
だけど俺と舞花ちゃんについては、面白がっているようにしか思えない。
「で、舞花ちゃんと、ついにどうにかなったのか?」
ニヤニヤした笑みを浮かべ、俺のデスクに張り付いて質問攻めにしようとする佐藤を軽く睨んだ。
課長か宇田さんから、カミナリでも落とされればいいのに。
「ラーメンを食いに行っただけだ」
「デートなのに、それだけ?」
「途中で雨が降ってきたからな。そのまま帰った」
「うわぁ、舞花ちゃん……かわいそうに」
かわいそうとか、お前に言われる筋合いはないんだよ。
「竣、舞花ちゃんのこと好きじゃないのか?」
佐藤にしては珍しくニヤニヤを引っ込めて、さも不思議そうな顔をして聞いてくる。
朝からこの事情聴取はなんなのだ。俺が佐藤に答える必要はないだろう。
「さぁな」
「はぁ? 俺はてっきり、舞花ちゃんを気に入ってるんだと思ってた」
俺はうんざりだと言わんがばかりに仕事の資料を持って立ち上がり、佐藤から逃れた。
昨日は一緒にラーメンを食べに行って、それがすごくうまくて……
俺のとっておきの場所に舞花ちゃんを連れて行った。会話の雰囲気も悪くなかった。
高台から見える景色も気に入ってもらえたみたいで、彼女はそれをスマホのカメラにおさめていた。
そのあと、少し風が出てきて気温が下がって、舞花ちゃんが寒そうにしていて……
透き通るような彼女の白い肌に思わず触れたくなったが、俺の理性がそれをグッと抑えた。
でも、俺はあのとき、目が合った舞花ちゃんになにをしようとしていたのか。
―――あの雨が邪魔をしなければ。
『昨日はありがとうございました。風邪はひいてないので大丈夫です』
翌日の月曜の朝、会社で着信を告げたスマホを見ると、舞花ちゃんからメッセージが届いていた。
『風邪は大丈夫だった?』と俺が先にメッセージを送り、来た返事がそれだ。
雨に少し濡れただけだといっても、彼女はあのときすごく寒そうにしていたから、風邪をひいてなくて本当によかった。
「竣、朝から舞花ちゃんとやり取りか?」
スマホを見てホッとしていたところへ、佐藤から声をかけられて顔が引きつった。
後ろを振り返れば、佐藤がニヤニヤとした冷やかすような顔つきをしていた。予想したどおりだ。
「昨日デートだったんだろ?」
「お前、なんで知ってるんだよ」
俺は驚きを隠せず、それと同時に心底嫌そうな顔をした。俺の行動がバレていて、非常に気味が悪い。
「美里ちゃんからの情報だ」
佐藤ときたら、俺をあざけ笑うように顔の横でピースサインをしている。
そのふざけた顔を殴ってやりたい衝動にかられたが、大人なので当然我慢した。
俺は昨日のデートのことは、一切口にしていなかったが、佐藤は美里ちゃんから伝え聞いて知っていたようだ。
コイツはこういうことに関しては最大限エネルギーを使う男で、あちこち情報網も広い。
だけど俺と舞花ちゃんについては、面白がっているようにしか思えない。
「で、舞花ちゃんと、ついにどうにかなったのか?」
ニヤニヤした笑みを浮かべ、俺のデスクに張り付いて質問攻めにしようとする佐藤を軽く睨んだ。
課長か宇田さんから、カミナリでも落とされればいいのに。
「ラーメンを食いに行っただけだ」
「デートなのに、それだけ?」
「途中で雨が降ってきたからな。そのまま帰った」
「うわぁ、舞花ちゃん……かわいそうに」
かわいそうとか、お前に言われる筋合いはないんだよ。
「竣、舞花ちゃんのこと好きじゃないのか?」
佐藤にしては珍しくニヤニヤを引っ込めて、さも不思議そうな顔をして聞いてくる。
朝からこの事情聴取はなんなのだ。俺が佐藤に答える必要はないだろう。
「さぁな」
「はぁ? 俺はてっきり、舞花ちゃんを気に入ってるんだと思ってた」
俺はうんざりだと言わんがばかりに仕事の資料を持って立ち上がり、佐藤から逃れた。
昨日は一緒にラーメンを食べに行って、それがすごくうまくて……
俺のとっておきの場所に舞花ちゃんを連れて行った。会話の雰囲気も悪くなかった。
高台から見える景色も気に入ってもらえたみたいで、彼女はそれをスマホのカメラにおさめていた。
そのあと、少し風が出てきて気温が下がって、舞花ちゃんが寒そうにしていて……
透き通るような彼女の白い肌に思わず触れたくなったが、俺の理性がそれをグッと抑えた。
でも、俺はあのとき、目が合った舞花ちゃんになにをしようとしていたのか。
―――あの雨が邪魔をしなければ。
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