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番外編②
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「私……すごく疲れちゃった」
舞花は舞花で、笑顔が消えてぐったりとしている。
「ふたりとも、俺の前で素に戻りすぎ」
俺がクスクス笑うと、ふたりも顔を見合わせて気が抜けたように笑う。
「和久井さん、実は心配だったでしょ? 私には見えてた。入って来たときの不機嫌そうな顔!」
美里ちゃんからは最初から俺が丸見えだったから、取り繕う前のイライラしたところもすべて見られていたらしい。
「自分の彼女が目の前で口説かれてたら、気分よくないよね」
「まぁね。でもあれ、誰かに注意してもらったら? どこの会社か知らないけど新人だろ?」
俺の言葉を聞き、ふたりが自然と顔を見合わせた。
「ああいうタイプは最初が肝心。上がきちんと教育しないと、自分のしでかしてることがわからないタイプなんだよ」
「それが……そういうわけにもいかなくて」
いつも物事をはっきり口にする美里ちゃんが、急に歯切れ悪く口ごもる。珍しい光景だ。
「なに? そんなにややこしい会社なの?」
彼女たちが働いている㈱大井コーポレーションはかなりの大手だ。
全部でいくつあったか忘れるほど、全国に支社もたくさんある。
そんな大手の会社が、小さなクレームも言えない相手とは、いったいどんな会社なんだ?
「そうじゃないの」
今度は舞花までボソリとつぶやいて困り顔になった。
「他社じゃなくて、うちの会社なの」
「はぁ?!」
アイツは大井コーポレーションの人間なのか?
だったらなおさら上司に言えばいい。立派なセクハラではないか。
「うちの社長のご長男なの」
「え?!」
社長の息子? だからあの程度のセクハラ被害だと抗議しにくい、というわけか。
「今年の春に大学を卒業して、最近うちに入社したみたい」
ちょっと待て。今はもう十月も終わりだ。三月に大学を出たのなら、この半年間はなにをしていたのか……。
「半年もズレて入社してくるのは変だな」
「なんか……社長のツテで、海外の会社で修行っていうか、研修を受けてたらしいよ」
ふぅ~ん。すねかじりのニートってわけでもなかったようだ。経歴だけ聞けば立派だな。俗に言う、御曹司だ。
だからか、と俺は点と点が線で繋がったように納得せざるをえなかった。
どうりで若いくせに高そうなスーツを着ていたわけだ。
チラリと見えた腕時計も、上等なものをつけていたような気がする。
そんな御曹司が会社の受付で自分好みのかわいい女性を見つけた。そんなところか?
舞花は見初められてるんだよな……
心配というより、俺の気持ちはけっこう沈んでいた。
舞花のことは信用している。すぐにほかに靡いたりしない、と。
だけど俺は会社の先輩である宇田さんのケースが頭に浮かんだのだ。
宇田さんは、同期入社で美人の佐那子さんという同僚の女性をずっと好きだった。
同期だから仲がいいだけ、などという言い訳は通用しないほど、誰から見ても佐那子さんに対する宇田さんの態度は特別だった。
それは俺が入社したときには既に、社員の誰もが知っていた。
単純に宇田さんの片思いだったのかもしれないが、いつ付き合ってもおかしくないくらい、会社でふたりは仲が良さそうに見えていたのに……
佐那子さんは突然、別の男を選んで結婚した。その選んだ男というのが、社長の息子だった。
どうやら美人の佐那子さんに一目惚れでもしたらしい。
要するに今の舞花と同じで、佐那子さんも見初められたのだ。……社長の息子に。
となると俺も宇田さんと同じ道を行く運命な気がして、俺らしくないが、大きな不安に襲われていた。
舞花は舞花で、笑顔が消えてぐったりとしている。
「ふたりとも、俺の前で素に戻りすぎ」
俺がクスクス笑うと、ふたりも顔を見合わせて気が抜けたように笑う。
「和久井さん、実は心配だったでしょ? 私には見えてた。入って来たときの不機嫌そうな顔!」
美里ちゃんからは最初から俺が丸見えだったから、取り繕う前のイライラしたところもすべて見られていたらしい。
「自分の彼女が目の前で口説かれてたら、気分よくないよね」
「まぁね。でもあれ、誰かに注意してもらったら? どこの会社か知らないけど新人だろ?」
俺の言葉を聞き、ふたりが自然と顔を見合わせた。
「ああいうタイプは最初が肝心。上がきちんと教育しないと、自分のしでかしてることがわからないタイプなんだよ」
「それが……そういうわけにもいかなくて」
いつも物事をはっきり口にする美里ちゃんが、急に歯切れ悪く口ごもる。珍しい光景だ。
「なに? そんなにややこしい会社なの?」
彼女たちが働いている㈱大井コーポレーションはかなりの大手だ。
全部でいくつあったか忘れるほど、全国に支社もたくさんある。
そんな大手の会社が、小さなクレームも言えない相手とは、いったいどんな会社なんだ?
「そうじゃないの」
今度は舞花までボソリとつぶやいて困り顔になった。
「他社じゃなくて、うちの会社なの」
「はぁ?!」
アイツは大井コーポレーションの人間なのか?
だったらなおさら上司に言えばいい。立派なセクハラではないか。
「うちの社長のご長男なの」
「え?!」
社長の息子? だからあの程度のセクハラ被害だと抗議しにくい、というわけか。
「今年の春に大学を卒業して、最近うちに入社したみたい」
ちょっと待て。今はもう十月も終わりだ。三月に大学を出たのなら、この半年間はなにをしていたのか……。
「半年もズレて入社してくるのは変だな」
「なんか……社長のツテで、海外の会社で修行っていうか、研修を受けてたらしいよ」
ふぅ~ん。すねかじりのニートってわけでもなかったようだ。経歴だけ聞けば立派だな。俗に言う、御曹司だ。
だからか、と俺は点と点が線で繋がったように納得せざるをえなかった。
どうりで若いくせに高そうなスーツを着ていたわけだ。
チラリと見えた腕時計も、上等なものをつけていたような気がする。
そんな御曹司が会社の受付で自分好みのかわいい女性を見つけた。そんなところか?
舞花は見初められてるんだよな……
心配というより、俺の気持ちはけっこう沈んでいた。
舞花のことは信用している。すぐにほかに靡いたりしない、と。
だけど俺は会社の先輩である宇田さんのケースが頭に浮かんだのだ。
宇田さんは、同期入社で美人の佐那子さんという同僚の女性をずっと好きだった。
同期だから仲がいいだけ、などという言い訳は通用しないほど、誰から見ても佐那子さんに対する宇田さんの態度は特別だった。
それは俺が入社したときには既に、社員の誰もが知っていた。
単純に宇田さんの片思いだったのかもしれないが、いつ付き合ってもおかしくないくらい、会社でふたりは仲が良さそうに見えていたのに……
佐那子さんは突然、別の男を選んで結婚した。その選んだ男というのが、社長の息子だった。
どうやら美人の佐那子さんに一目惚れでもしたらしい。
要するに今の舞花と同じで、佐那子さんも見初められたのだ。……社長の息子に。
となると俺も宇田さんと同じ道を行く運命な気がして、俺らしくないが、大きな不安に襲われていた。
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