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番外編①
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<番外編>
今日は大井コーポレーションへ訪問予定の日だった。
あそこの専務は変人というか……要するに、屁理屈ばかりで一筋縄ではいかないタイプだ。
だが俺が何度も根気よく通っている成果なのか、少しずつ打ち解けてきたように思う。
それに受付で舞花の顔が見られるから元気になれるし、専務とのアポも悪くない。
……俺はこんなに単純な性格だっただろうか。
舞花に教えてもらった専務の好物のどら焼きを買い、大井コーポレーションへと向かった。
うちの会社とは違って、ピカピカに磨かれているガラスの自動扉がブーンと音を立てて開く。
「いらっしゃいませ」
笑顔で俺に対応してくれたのは、美里ちゃんだった。
いつもふたり居る受付の右側に舞花が座っている。
だけど今日は、背の高いスーツ姿の男の後ろ姿で隠れていてよく見えない。
時折、舞花らしき女性がチラチラと見え隠れしている。
受付のカウンターに身を乗り出すようにして、男が舞花に親しげに話しかけている。
それを目にして余裕でいられるほど、俺は大人ではない。ムカムカとした感情がこみあげてきた。
こんなところで口説くなよ。
背が高いのをいいことにカウンターに肘をついて前傾姿勢になれば、舞花の顔とは至近距離だ。
その男はスラリとした体形を活かすかのように、細身のスーツを身に着けている。ブランドものだろうか、色もデザインも洒落ていて値段も高そうだ。
嫌味な感じだし、気に食わない。
俺は瞬間的にそう感じながらも、自然とできてしまっていた眉間のシワを元に戻し、受付へと静かに歩み寄る。
「いつもお世話になります。ケーピーエスの和久井です」
その男の左側に立ち、目の前の美里ちゃんへお決まりの挨拶をした。
「お世話になっております。少々お待ちください」
スーツの男がそばにいるため、美里ちゃんもいつもとは違ってワントーン高い声を出す。
お互いいつものようにフランクに話せないのは当然だ。
俺は美里ちゃんが内線電話で専務秘書に連絡を入れてくれている間、チラリと隣の男を盗み見た。
髪はワックスで毛先を無造作に遊ばせていて、ふわりと爽やかな香水の香りがした。
俺より年下だろう。まだ若いのでどこかの新人の営業かもしれない。
営業先の受付に肘をついて身を乗り出して女性社員を口説くなんて、どこの会社の人間だ?
どんな教育をしてるのだ、その会社は。
俺はムカムカしながらも、斜め前にいる舞花に視線を送った。
舞花はその男に対して愛想笑いの笑みを浮かべながらも、どうしていいかわからない表情になっていた。
相手は困っているんだよ、いい加減気づけ。
「……いらっしゃいませ」
舞花が俺の視線に気づき、その男から逃れたい気持ちからか、俺にわざわざ言葉をかけてきた。
それをきっかけに、男は舞花に「じゃあ、また」と親しげに言い残し、隣の俺に軽く会釈をして会社の外へ出て行った。
「はぁぁー」
舞花と美里ちゃんが同時にどんよりとした溜め息を吐く。
「もう、長いんだから! まさか和久井さんが来る時間までここにいるとは思わなかった!」
うんざり、という言葉がピッタリ当てはまるかのような表情を作り、美里ちゃんが愚痴を言う。
今日は大井コーポレーションへ訪問予定の日だった。
あそこの専務は変人というか……要するに、屁理屈ばかりで一筋縄ではいかないタイプだ。
だが俺が何度も根気よく通っている成果なのか、少しずつ打ち解けてきたように思う。
それに受付で舞花の顔が見られるから元気になれるし、専務とのアポも悪くない。
……俺はこんなに単純な性格だっただろうか。
舞花に教えてもらった専務の好物のどら焼きを買い、大井コーポレーションへと向かった。
うちの会社とは違って、ピカピカに磨かれているガラスの自動扉がブーンと音を立てて開く。
「いらっしゃいませ」
笑顔で俺に対応してくれたのは、美里ちゃんだった。
いつもふたり居る受付の右側に舞花が座っている。
だけど今日は、背の高いスーツ姿の男の後ろ姿で隠れていてよく見えない。
時折、舞花らしき女性がチラチラと見え隠れしている。
受付のカウンターに身を乗り出すようにして、男が舞花に親しげに話しかけている。
それを目にして余裕でいられるほど、俺は大人ではない。ムカムカとした感情がこみあげてきた。
こんなところで口説くなよ。
背が高いのをいいことにカウンターに肘をついて前傾姿勢になれば、舞花の顔とは至近距離だ。
その男はスラリとした体形を活かすかのように、細身のスーツを身に着けている。ブランドものだろうか、色もデザインも洒落ていて値段も高そうだ。
嫌味な感じだし、気に食わない。
俺は瞬間的にそう感じながらも、自然とできてしまっていた眉間のシワを元に戻し、受付へと静かに歩み寄る。
「いつもお世話になります。ケーピーエスの和久井です」
その男の左側に立ち、目の前の美里ちゃんへお決まりの挨拶をした。
「お世話になっております。少々お待ちください」
スーツの男がそばにいるため、美里ちゃんもいつもとは違ってワントーン高い声を出す。
お互いいつものようにフランクに話せないのは当然だ。
俺は美里ちゃんが内線電話で専務秘書に連絡を入れてくれている間、チラリと隣の男を盗み見た。
髪はワックスで毛先を無造作に遊ばせていて、ふわりと爽やかな香水の香りがした。
俺より年下だろう。まだ若いのでどこかの新人の営業かもしれない。
営業先の受付に肘をついて身を乗り出して女性社員を口説くなんて、どこの会社の人間だ?
どんな教育をしてるのだ、その会社は。
俺はムカムカしながらも、斜め前にいる舞花に視線を送った。
舞花はその男に対して愛想笑いの笑みを浮かべながらも、どうしていいかわからない表情になっていた。
相手は困っているんだよ、いい加減気づけ。
「……いらっしゃいませ」
舞花が俺の視線に気づき、その男から逃れたい気持ちからか、俺にわざわざ言葉をかけてきた。
それをきっかけに、男は舞花に「じゃあ、また」と親しげに言い残し、隣の俺に軽く会釈をして会社の外へ出て行った。
「はぁぁー」
舞花と美里ちゃんが同時にどんよりとした溜め息を吐く。
「もう、長いんだから! まさか和久井さんが来る時間までここにいるとは思わなかった!」
うんざり、という言葉がピッタリ当てはまるかのような表情を作り、美里ちゃんが愚痴を言う。
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