【完結】あなたに恋愛指南します

夏目若葉

文字の大きさ
47 / 57

番外編⑤

しおりを挟む
 明音とは同じ大学だった。
 最初にどこで俺を見つけたのかは知らないが、徐々に話しかけられることが増えたある日、明音のほうから付き合って欲しいと言ってきたのだ。
 その時点では断る理由も見つからなかったし、嫌いではなかったからOKしたのだが……

 しだいに明音はワガママな性格だとわかってしまった。
 そしてそれは、付き合っていくうちにどんどん度が過ぎるようになり、結局それが原因で連絡を取らなくなったような記憶がある。
 なんせ明音は強引なのだ。一度言い出したら、周りの意見など聞かない。
 今思えば、簡単に付き合うと決めたのは間違いだった。

「あ、そうそう! パパの会社ね、あれから大きくなったのよ。業績も好調で、横浜と名古屋に支社もできたの」
「へぇ、それはすごいな」

 たしかコンサルティング会社だったか?
 俺と付き合っていた五年前は細々と経営していた父親の会社が、そこまで大きくなっただなんて大したものだ。

「で、五年ぶりにいきなり連絡してきて、親父さんの会社の話か?」

 満足そうに霜降りの高級ロースステーキを口に運ぶ明音を前に、俺はすでに疲れていた。
 こんな店は滅多に来れるものじゃないが、目の前の相手がワガママな性格の明音なので、店の雰囲気すら味わう余裕はない。

「違うの。私の元カレの話」
「元カレ?」

 なんだ、恋愛相談か。

「最近彼氏と別れたの。だから……元カレ」

 それは五年ぶりに俺を呼び出してまでする話なのか? 身近な友達に話せばいいのに。
 女同士のほうが、そういう話は共感し合えたりするだろう。

「その別れた彼氏、パパの会社で働いてた人なの」
「……へぇ」

 働いてた……と過去形なのは、今は違うのか。

「パパに、すごく優秀な社員がいるって紹介されて知り合ったの。カッコいい人だったし付き合うことにした。どうやらパパは私とその人を結婚させて、後継者にって思ってたみたい」

 明音には兄弟はいない。一人娘だ。
 だから父親が自分の気に入った男と娘を結婚させて、跡を継がせたいと思っても不思議はない。

「でもダメだったのか? なにか気に入らないところでも?」

 明音のこの口ぶりと話し方からして、彼女からその男に別れを切り出したに違いない。なにか不足があったのだろう。

「気に入らないっていうか、やっちゃったのよねぇ……」
「なにを?……浮気か?」
「横領」
「お、横領?!」

 おいおい、横領は犯罪だぞ?!
 俺は思ってもみなかった話の展開に思わず目を見開いた。
 だけど明音は高そうな赤ワインをガブガブとなにくわぬ顔で飲んでいる。
 味はまぁまぁね、などと、またもや店に失礼なことを言いながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

夜の帝王の一途な愛

ラヴ KAZU
恋愛
彼氏ナシ・子供ナシ・仕事ナシ……、ないない尽くしで人生に焦りを感じているアラフォー女性の前に、ある日突然、白馬の王子様が現れた! ピュアな主人公が待ちに待った〝白馬の王子様"の正体は、若くしてホストクラブを経営するカリスマNO.1ホスト。「俺と一緒に暮らさないか」突然のプロポーズと思いきや、契約結婚の申し出だった。 ところが、イケメンホスト麻生凌はたっぷりの愛情を濯ぐ。 翻弄される結城あゆみ。 そんな凌には誰にも言えない秘密があった。 あゆみの運命は……

Marry Me?

美凪ましろ
恋愛
 ――あの日、王子様があたしの目の前に現れた。  仕事が忙しいアパレル店員の彼女と、王子系美青年の恋物語。  不定期更新。たぶん、全年齢でいけるはず。 ※ダイレクトな性描写はありませんが、ややそっち系のトークをする場面があります。 ※彼の過去だけ、ダークな描写があります。 ■画像は、イトノコさまの作品です。 https://www.pixiv.net/artworks/85809405

男に間違えられる私は女嫌いの冷徹若社長に溺愛される

山口三
恋愛
「俺と結婚してほしい」  出会ってまだ何時間も経っていない相手から沙耶(さや)は告白された・・・のでは無く契約結婚の提案だった。旅先で危ない所を助けられた沙耶は契約結婚を申し出られたのだ。相手は五瀬馨(いつせかおる)彼は国内でも有数の巨大企業、五瀬グループの若き社長だった。沙耶は自分の夢を追いかける資金を得る為、養女として窮屈な暮らしを強いられている今の家から脱出する為にもこの提案を受ける事にする。  冷酷で女嫌いの社長とお人好しの沙耶。二人の契約結婚の行方は?  

月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜

白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳 yayoi × 月城尊 29歳 takeru 母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司 彼は、母が持っていた指輪を探しているという。 指輪を巡る秘密を探し、 私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。

政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

美桜羅
恋愛
きみのことなんてしらないよ 関係ないし、興味もないな。 ただ一つ言えるのは 君と僕は一生一緒にいなくちゃならない事だけだ。

処理中です...