【完結】あなたに恋愛指南します

夏目若葉

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番外編⑫

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 俺は電車での移動中に、プレゼントが買えそうな店をスマホで検索した。
 とりあえず、他の店は見つけることができたが……。
 乗り換えのために電車を降りた瞬間、ふぅーっと盛大な溜め息を吐いた。
 なんだよ、これ。恋人の誕生日って、こんなにバタバタして祝うものか?
 俺が事前に彼女に聞けていなかったのが悪いのだけど。

 俺のせいか? 自業自得か?
 俺はこの日ずっと、苛立ちと焦りが入り混じった気持ちで、時間と格闘していた。

「お疲れさまでーす。お先に失礼しまーす」

 俺が会社の営業部に戻ってくると、入れ違いに女子社員が三人帰宅するところだった。
 明るく挨拶をされても、俺は軽く会釈することしかできずにいた。

「挨拶くらいしろよ。機嫌悪いなぁ。顔が怖いぞ?」

 俺が椅子に勢いよく座るのと同時に、佐藤が茶化した感じで声をかけてきた。

「残念ながら今の俺にはお前の相手をしてる暇はないんだよ」
「いや、俺はいいけど女性を敵にまわすとヤバいから」
「うるさい」

 たしかにさっきの社員には「お疲れ様」くらい言えばよかった。
 けど、俺も今すぐにでも帰りたいのにという気持ちが先立ってイラついたのだ。
 考えてみると完全に八つ当たりで、サイテーだ。
 俺は反省しながらも、ノートパソコンの電源を入れた。
 そして鞄から今日の訪問先の資料を雑に取り出して机に並べる。

「そんなんじゃ効率上がらないぞ?」

 俺の後ろから、今度は佐藤とは違う声で話しかけられた。
 ……宇田さんだ。

「俺の経験上、不機嫌そうにイライラしてるときに仕事しても、凡ミスが増えるだけだ」
「……」

「クライアントとなにか揉めたのか? お前、今すごい顔してるぞ?」

 すごい顔ってどんな顔なのか、事細かく言ってもらわないとわかりませんけど? なんて、今の俺が口を開いたらそんな暴言を吐きそうだ。
 だけどなんとか言葉を飲み込んで、冷静を装う。

「なにもありませんよ。仕事は順調です」
「……、か」

 忘れていた。宇田さんは佐藤以上におせっかいな人だった。

「なにがあったか知らないが、とりあえずコーヒーでも飲んで気持ちを落ち着かせてから仕事をしろ」
「申し訳ないですが、今日の俺にそんな時間はないんですよ。自分の仕事を片付けたら帰らせてもらいます」

 こういう返事の仕方をする後輩はかわいげがないと自分でもわかっている。
 だけど、気持ちが焦ってるのと苛立ちとで、いつも以上に不遜な態度を取ってしまった。
 宇田さんからそのことで説教されるかもしれないとわかっていても。

「和久井……今日はもう帰れ」

 想像とはまったく違う言葉が返ってきたせいで、俺は宇田さんを凝視する。
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