【R18】体に刻む恋のspell

神楽冬呼

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supplementary tuition番外編

初恋ほど無意識なものはない 04

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こんな場所で、人目がある中で、応じてはいけないと頭の中で考えはしても、拒む事ができない。
キスをしたいと、自分が思ってしまっている。
自分からキスの距離に踏み込んで、求める眼差しを向けているのだから。
引力みたいに唇が吸い寄せられ、夢月が目蓋を閉じたその瞬間、アナウンスが流れ館内の照明が落とされた。

唇に吐息がかかり、そっと重ねられる。

柔らかな感触に高揚する気持ちがどくんと跳ね身体に合図を送ると、うずうずとした熱が生まれる。
その感触を貪り、頭が芯から熱に浮かされ、有都しか見えなくなっていた。

「あのー、公共の場でヤメテ頂けます?」

現実から遠去かりかけた意識の中に突然声が割り込んで、夢月は急速に現実に引き戻された。
声の位置からして前方の座席、かなり近い。
慌てて視線を走らせると、見知った顔を見つけた。
ペアシートから通路を挟んで直ぐに下、スクリーンに背を向け座席に膝立ちした春香がいた。

「そー言うことは家でやってくださーい」

その隣でニシシ笑いの佐竹が手を振る。
ついさっきまで前方の席を気にかけていたと言うのに、直ぐ目の前がいつから埋まっていたのか皆目分からない。
いつから見られていたのかと思うと、恥ずかしさで顔が燃えるみたいに熱くなった。

「気のせいだな」

有都は一瞥すると恐ろしく無味乾燥な表情でドリンクを手にする。
見なかった事、いない者と無視を決め込むつもりだ。
そうしたい気持ちは痛い程に分かるが、二人の視線はそれ以上に痛過ぎる。
このまま知らないフリなどできる訳もなく…………

「春香ちゃんと佐竹くんもい、いたんだね」

笑顔も思わず引き攣る気まずさに、言葉がうまく出てこない。何げなく有都から身体の距離を離し、夢月は氷が溶けて薄まった烏龍茶を喉へと流し込んだ。
液体だと言うのに鉛の様に飲み込みにくい。

「すっかり二人だけの世界作っちゃってさ。見てて恥ずかしーたら」
「じゃー、見んな」

愉しそうに声を弾ませる春香に有都が冷ややかに言い放つ。

「真崎ってさ、夢月ちゃんがいると超デレだよな」
「あったり前じゃん、佐竹っち。初恋の相手だよ?4年間も女々しく片想いだよ?そんな人ゲットしたんだから、デレっデレに溶けてドロドロだよー」
「えっ?そーなの?!知らねーけど、オレ」

春香と佐竹が意外な近さで笑っている。
春香が佐竹を「佐竹っち」と呼んでいることは微笑ましいが、台詞にはちょっとした刺を感じてしまう。
有都の反応を覗き見ると、疎ましさを顔全体に貼り付かせている。

「言うワケねーだろ」
「え?女々しさ爆発してるから?」
「ちげーよ…………」

春香は有都の反応が面白がっている様だ。
ムスッとした顔で有都はシートに背持たれると、二人に向かってシッシ、と片手を払う。

「映画始まるぞ、前向けっ」

有都に睨まれ渋々二人はスクリーンへと顔を向けた。
知り合って間もないはずの春香と佐竹がいつの間にか打ち解けていた事には驚き以外何もない。
それが若さから為せるものか、二人の性格からかは夢月には測れないが、到底昔の自分には真似できない事だ。
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