私の片思いの相手は不思議な喫茶店で働いている猫さんでした。

*花*

文字の大きさ
29 / 45

4日目(木) 雨の日の再会、そして、波乱の予感5

しおりを挟む
「今日、いるかなぁ……?」

私は今日もあの猫と一緒に喫茶店『まりも』まで来た。今日は雨が降ってしまって、草木もびしょびしょに濡れてしまっていた。でも、不思議と、その草木達は雨を受け、きらきらと輝いているように見えた。まるで、壮絶な戦いを勝ち抜いた勇敢な戦士のように。植物も生きているというのが分かる。

私は今日もこのドアを開ける。そしたら、ベルがチリンと鳴って、始まるのだ。

私は喫茶店の中へと入って行った。やはりそこにはいつもの三人がいて、私を出迎えてくれるのだ。


「いらっしゃい、瀬良ちゃん」
「こんにちは、彗くん。今日は雨が凄かったよねぇ……」
「あぁ、そうだね。だから僕、てるてる坊主を作って、窓辺に吊るしておいたんだ。晴れないかなって。さぁ、今日はカウンター席とテーブル席どっちにする?」

彗くんはそう言った後、さらに笑みを深くした。昨日とは全然違う様子だ。あの不自然な顔なんてどこかに吹き飛んだように、今は人間そのものの自然な表情になっていた。私は表情に気になっていたが、それに加えて、カウンター席とテーブル席のどちらにするかという二択を出してきたのも気になっていた。
いつもは聞かないのに。

うーん……どっちにしようかな。

私は少し迷った結果、「カウンター席で」とお願いした。彗くんは「分かった。自由な席に座っていいよ」と言ってきたので、私は左隅っこに座った。

「あ、彗くん。今日って夕佳さんいる?ちょっと相談したいことがあって」
「うん。いるよ。今呼んでくるね」


少ししてから、「どうしたの~瀬良ちゃーん」
とゆるっとした雰囲気で私の方に向かって言ってきた。そして、私の隣に座った。

「何かしらあ~」

やたらとにんまりとした笑顔で、舐めるようなちょっとねっとりとした感じで聞いてきた。さっきの口調と同じく「もしかして、恋バナかしらあ~」と言ってきた。察しが良くて何より。私は浮かない顔で「はい……」とため息をつくように言った。すると、夕佳さんは はい と言う私の声掛けに反応して、「いいわよ~なんでも聞きなさい」と恍惚な笑みを浮かべて言ってきた。

「あ、零くん。コーヒー二つ」
「お前……客じゃねーだろ……」
「別にいいじゃない。今日は瀬良ちゃんの相談に乗るのよ」
「はいはい、分かりましたよ……はぁ……」

零さんは呆れた顔で何かぶつぶつと言いながらも、コーヒー豆から丁寧に作っていった。とても真剣な表情だ。私がまじまじと見ていると零さんは「見んな」と言って、そっぽを向いてしまった。
私は夕佳さんの方へ顔を向けた。夕佳さんは疲れたように微笑んで「いつものこと」とでも言うようにゆっくりと軽く頷いた。それから表情を切り替え、「それじゃ、どうぞ。お話をしてくれるかしら」とニコニコしながら聞いてきた。そんな夕佳さんに対して、私は恐る恐るさっきのことを話していった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

ガネット・フォルンは愛されたい

アズやっこ
恋愛
私はガネット・フォルンと申します。 子供も産めない役立たずの私は愛しておりました元旦那様の嫁を他の方へお譲りし、友との約束の為、辺境へ侍女としてやって参りました。 元旦那様と離縁し、傷物になった私が一人で生きていく為には侍女になるしかありませんでした。 それでも時々思うのです。私も愛されたかったと。私だけを愛してくれる男性が現れる事を夢に見るのです。 私も誰かに一途に愛されたかった。 ❈ 旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。の作品のガネットの話です。 ❈ ガネットにも幸せを…と、作者の自己満足作品です。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

処理中です...