37 / 45
6日目(土) ぶち猫
しおりを挟む昨日の夜は今後優斗とどうしていくか自分なりにしっかりと考えた。午前六時三十分。布団にうずくまっている私は手を伸ばし、スマホを取った。優斗との連絡先はもう交換してある。私はすいすいと文字を打っていった。
「今日の午前九時頃って空いてる? っと……」
思った以上に幼なじみの反応は早く、こんな文が ぽん と出た。
「空いてるよ。どうした?」
「あっ……とりあえず返してはくれた…… 九時頃までにあの公園に来て欲しい っと……」
これまたすぐに返信が来た。
「分かった」
「……おっ!分かっただって……!よし……ここで理由を話せば……」
あっ、待てよ……?私に好きな人がいるってことを隠しながら言っていかないと……
それとも素直に打ち明けるべきか……
考えていると、ピロンと着信音がなった。また優斗からだと思ったが、今度は違った。
美香ちゃんからだった。
「おはよう、瀬良ちゃん。昨日は大変だったね……私でよければ相談に乗るからね。頑張って」
「美香ちゃん……やっぱり、優しくて頼れる存在だよ……」
私はその文章を読み、うるっとした。こんな人と仲良くなれてよかった と心の底から強く思った。
私はまたスマホを元の位置に戻し、カーテンを開けた。今日も晴れている。太陽が眩しく輝いている。私は空に向かってくすっと笑った。
今日は何だかいい事がありそうな気がするなぁ。
階段を下り、台所にいる母、そして居間にいる父に「おはよう」と明るく挨拶をした。そして、朝食を済ませ、洗い物の手伝いをした。それにプラスして、天気がいいので外に洗濯物も干した。
それぞれのことが終わり、ふぅ と息をついた。そして、額を拭った。それから ぐっ と伸びをした。
「ふぅー、今日は何だか調子がいいなぁ。どうしたんだろ」
私は ぼーっ と空を見つめた。雲がゆっくりと動いていた。
「あ、あの雲の形、猫に見える」
あの雲が何だか猫の後ろ姿に見えた。それで私はあることを考えていた。
あのぶち猫ともあと少しでお別れかぁ……
私は明日の十二時頃には家を出るつもりだ。一週間当たり前のように会っていたあの猫と会えなくなるなんて悲しいし、寂しいなと思い始めていた。
そしてあの喫茶店のみんなとも……そして、優斗や美香ちゃんとも…………
いや、そんなこと今から考えるな。まだもう少し時間があるんだ。この短い時間でもありったけ思い出を作れるはずだ。
悲しくなんてない、寂しくなんてない。考えない、考えなければいいんだ。
私は首をぶんぶん横に振り、パシンと頬を叩いた。そして、ぐっと瞳に力を入れ、また空を見上げてから、家の中へ入った。親は今日も仕事でもうとっくに出かけていた。私は自分の部屋へ行き、いつもの様に公園へ行く準備をした。
準備の手を進めながら、考えてしまった。
やっぱり考えてしまう。この公園ともあと少しでお別れかって。でも、私、今は悲しいとか寂しいとか思わない。
ただただ色々な思い出を作ろうと前向きに考えているのだから。
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ガネット・フォルンは愛されたい
アズやっこ
恋愛
私はガネット・フォルンと申します。
子供も産めない役立たずの私は愛しておりました元旦那様の嫁を他の方へお譲りし、友との約束の為、辺境へ侍女としてやって参りました。
元旦那様と離縁し、傷物になった私が一人で生きていく為には侍女になるしかありませんでした。
それでも時々思うのです。私も愛されたかったと。私だけを愛してくれる男性が現れる事を夢に見るのです。
私も誰かに一途に愛されたかった。
❈ 旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。の作品のガネットの話です。
❈ ガネットにも幸せを…と、作者の自己満足作品です。
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる