私の片思いの相手は不思議な喫茶店で働いている猫さんでした。

*花*

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6日目(土) ぶち猫6

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私は落ち着いてきた頃、もう一回部屋のドアを開けて、囁くように「じゃあね」と言ってから、そっと厨房を出た。そこには床掃除をしている零さんの姿があった。

「あ、零さん」
「よぉ……瀬良」
「あれ?夕佳さんは?」
「あぁ……あいつ……?あいつならトイ……」
「あいつ、あいつ連呼しないでくれる?しかも、トイレじゃなくて、お手洗って言えばいいんじゃないのかしら……?」

と夕佳さんがふつふつと怒りを燃やしながらも、にこにこと笑顔で零さんの方へ行った。正直、怖い。夕佳さんはいつも優しくて、色々なことを相談しやすい人だが、今日この一面を見てしまい、怒ると怖い人だと分かった。私は「あ、あのぉ……」と少し震えた声が口から出た。すると夕佳さんは表情を一変させ、「あら?瀬良ちゃん。どうしたの?」と怒りが抜けた笑顔で聞いてきた。

「私、帰りますね。後、明日で会うのが最後かもしれません。午後には帰るので」
「えっ!?そうなの!?残念ねえ……もっと一緒にいたかったわ……あ、じゃあ明日お別れ会でも開きましょうよ」
「え……!!いいんですか……!!」
「もちろんよ!何時頃に来る予定?」
「えっと……九時ですかね」
「分かったわ。今日は彗くんの様子を見てくれてありがとね。じゃ、また明日。じゃあね~」

私は「はい」と言い、二人に向けて手を振った。そして、喫茶店を出た。風が さぁ と吹いてきた。空はオレンジ色に染まっていて、夕日の光が木々の隙間からピカピカと溢れ出ていた。

私は後ろに腕を組み、くるりと後ろを振り返った。

いつもなら、彗くんが外まで来てくれて、私のことを見送ってくれるのになぁ。

何だか悲しくて、寂しい気持ちになった。いつもは「じゃあね」って言って、手を振り合って別れているのに。笑顔で見送ってくれるのに。

彗くん……大丈夫かな……
早く治ってほしい。そしてまた、いつものように笑顔で私のことを迎えて欲しい。

私は喫茶店『まりも』を見つめながら、心の中で願った。それから前を向いた。すると足元から「にゃー」という声が聞こえた。私はふと足元を見てみると、そこには相変わらず、あの猫がいた。そう、あのぶち猫。ぶち猫は
夕日に照らされて、何だか今日は王を守る兵士のように、凛々しい感じがした。

「……それじゃ、行こっか」
「にゃー」

猫は今朝よりも少し軽い足取りで歩いていた。 

……もしかしたら…………

私は今頃になって気づいたことがあった。

「彗くん……」

私はもう一回後ろを振り返ったが、そこには喫茶店が跡形もなく消えていた。そして、いつの間にか公園に着いていた。
私はあの猫に「じゃあね、また明日も来るからね。もう最後になっちゃうかもだけど……」
と言葉をかけた。

私は明日もこの公園に訪れる。そして、あのぶち猫について行って、まりもに行くんだ。そして私は今までの気持ちを伝えるんだ。

ずっと今まであなたのことが好きでした。付き合ってください―
と。
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