眼ノ球

*花*

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六章 本当は……【後】

三.逃走

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落ちたのはほんの一瞬に過ぎなかった。俺は無意識に腕を力いっぱい上へ伸ばしていた。
俺の一番と言っても過言ではない、類似者、月琉。俺は君と話すことが出来て、本当に嬉しかった。『心配されたい』者同士、話せてちょっと楽になった気がするよ。

……あーあ、まだ話してたかったなぁー……

まだ会って一日も経ってないけど、この別れが何だか物凄く悲しかった。寂しくなった。打ち明ける人が急にぱっといなくなるのは、こんなにも辛いことだったのか。胸がぎゅっと締め付けられるようで、苦しい。
目から何かが流れ出てきそうになったのもつかの間。
俺は、ぼふんとぶにゅぶにゅしている物に自身の体が埋め込まれるように、やんわりと落ちた。ひた、と手で触ると、ちょっぴり冷たい。俺は起き上がって、ちらと下を見ると、そこには巨大な深紅の瞳が俺の事を見つめてきていた。その恐ろしさに「わっ!」と大声が出そうになるが、これがアイだと思うと、すっと喉の奥に引っ込んでいった。

作戦成功か……?
だってここ……アイ……目玉の上だよな?

俺はきょろきょろしながら当たりを見回していると、下から「重いぃ……」と低音で重苦しく唸る声が耳に入ってきた。

「あっ!ア、アイ、待たせてごめんな!重いよな!今すぐ降りるから……」
「イヤ、降リルナ。後ロ追ッカケテキテルゾ」

え?と思い、俺は後ろを見た。すると数メートル離れた場所から球体に乗っている人を見つけた。それも、すいすいと移動していて、気を抜けばすぐに追いつかれると思う。そして、何より特徴的だったのが、ツインテールの黒髪と、目玉の深い緑色の年老いた感じの瞳。
間違いない。あれは……

「アレ多分月琉達ダロ……モウ食イツイテ来タノカ。早イナ……トニカク説教ハ後ダ。今ハ撒クコトニ専念スルゾ」
「……おう、分かった。……それで、行く宛ては……」
「…………知ラン」


え……
それ一番……
ダメなやつじゃねぇかよ!!


俺とアイは、ただひたすら懸命に色んな道を右往左往しながら走っていった。圧倒的威圧感のある沢山の人混みをかき分け、細くて静寂な路地裏をくぐり抜け、何故かがらんとしているビル街を通って行った。暗くて不気味な雰囲気の都心で、ただ一心不乱に駆け巡っている俺達。そして、獲物を逃さない月琉達。

俺らは宛先も決めず、道をずんずんと突き進み、必死になって逃げ続けた。

ごめんな月琉……嘘ついてしまったな……今、めっちゃ怒ってるだろうな。殺したいくらいに。でも、俺はこんなところで死ぬ訳には行かないんだ。前までの俺なら、もうとっくに自殺して、月琉に眼をあげていた……死んでいただろう。
でも、今の俺は違う。違うんだ。生きようと頑張って心身を保っている。そして、アイも俺のことを支えてくれている。だからここまで来れた。

アイ、今となってはお前が重要なパートナーなんだからな。だからこそ、さっきの作戦も信じたんだ。ウザくてお節介だけど、信用出来るやつだから。こんなやつだからついて行ってやるんだ。仕方なくな。




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