どうやら私は破滅の悪女らしい

りらこ

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14話

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 黙々と山道を歩いていく。昨日と比べ明らかに斜面が多くなり、玲奈に喋る余裕はなかった。途中でテクの実を口にしつつ、何とか進めている状態だ。

「登り道は終わりだな……あとは下ってくだけだ」
「ハァ、ハァ……それは、朗報だ……」
「休むか」

 休むと聞いた途端に地面へ座り込んでいた。トキも隣に腰を降ろす。日差しは天辺を過ぎたところだ。木の葉から漏れ落ちる光が心地良い。穏やかな風が、汗で火照った体をクールダウンしてくれた。

「あ~~~……疲れた……」
「ずっと思ってたが……随分体力無いんだな」
「う……ここで帰宅部の弊害が出るとは」
「あ?」
「いや……もっと運動しておくんだったなって…」
「お前の世界じゃ皆そんななのか」
「うーん……飛び抜けて動けないってこともないけど、怠けてた方ではある……」
「どんなとこなんだ? レナの居た世界は」
「そうだなあ……外国じゃ戦争してるとこもあったけど、私の周りは平和だった。毎日学校行って、家帰ってネット見て、お母さんのご飯食べて……」

 言葉尻の声が震えた。思い出すと同時、不安と恋しさが募ってしまったのだ。瞳には、みるみる涙が溜まっていく。

「っ、ごめ」
「……いや。突然呼び寄せられて、国から追われてんだ。無理ねぇよ」
「……うん……っ」
「レナは頑張ってるよ」

 トキの手が、玲奈の頭にそっと乗った。温かな体温に、ぼとぼとと、大粒の涙が溢れ出す。

(お母さん、お父さん……っ、家に、帰りたいっ……!)

 家族の顔が浮かんだ。学校は憂鬱なこともあるが、だからってこんな所へ逃げたかったわけじゃない。気の許せる友達と話したい。家に帰って、親に甘えたい。次から次に、感情が溢れて涙になった。

 遂に、ひくひくとしゃくり上げ始めた玲奈。トキは少し考えた素振りを見せてから、その華奢な肩を優しく抱き寄せた。




「……、……」

(……顔が上げられない!) 

 十分程経っただろうか。泣き止んだ玲奈は、カチンと固まった。目前にはトキの胸元。トキが腕を回したのは感じていて、泣いて感情の昂っていた玲奈は迷わず、その体に飛び込んだ。

 涙が止まって、なんてことをと後悔する。嫌とかそんな訳では勿論なく、どうすればいいのか分からないのだ。

「落ち着いたか」
「ひゃっ!」
「……悪い、嫌だったか」
「っ、違くて! ちょっと……恥ずかしくて、どういう顔すればいいのか分からなく」
「……普通の顔してりゃいいんじゃねえの」
「……ハイ」

 二人して、少しギクシャクしつつ距離を取る。トキは気まずそうだったのは一瞬ですぐに切り替えたようで、すくっと立ち上がった。

「そろそろ行くぞ。下りは早い」
「うん!」

 玲奈も立ち上がった。赤く色付いた頬の色味はまだ引かないが、気持ちを切り替えて、トキについて行く。


 下りは大分楽で、玲奈の息も上がらない。三十分も歩くと、木が減っていき、草道になった。少し先に目を向けると、そこには街が広がっていた。

「あれがロメール!?」
「ああ。もうつくな」
「やっ~~……たぁ……!」

 両手を万歳と上に広げ、テンションを高くする玲奈とは反対に、トキは冷静なままだ。浮かれる玲奈に、呆れた視線を向ける。

「街は当然人がいる。国に追われてる身なら、危険は増すぞ」
「う、それはそうだけど」

(ちょっとくらい喜んだって良いじゃんね)

 それは口には出さず思うだけに留める。しかし、無情にも、そのトキの忠告は現実のものとなる。

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