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15話
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森を抜けると、ポツポツと人の住処が現れ始めた。更に進むと、ガヤガヤとしたざわめきと共に、人の波が大きく溢れてくるようになった。ロメールの中心地へ着いたのだ。
王都の市場の活気と比べると少し大人しく感じるが、人は十分通っており、穏やかながらもいい街だった。
(確かに、これだけ人がいると怖いかも……お城の兵はいなそうだけど)
玲奈の気も自然と引き締まった。トキは連立する店を見て、お眼鏡にかなった場所で立ち止まる。
「この酒場で聞く。レナは店の前で待ってろ」
「うん」
トキが店の中へ入るのを見送り、暫く立ち竦んで待つ。すると、いくつかの視線が向いてるのを感じた。そちらに目を向ければ、年配のご婦人二人がヒソヒソと囁きながら、玲奈を睨んでいた。
(っ、なに!? なんか怪しいとこがあるの?)
玲奈は刺激しないように自然と視線を外し、店の中へ体の向きを変える。見た目では判別できないと思っていたが、何かあるのだろうか。ぐるぐる悩んでいると、背後から、男の影がにゅっとさし、シルエットが視線の先に映る。
「お嬢さん、少しお話いいかい」
「っ……! なんでしょう」
動揺を隠せないまま、体を半分捻って、男と半身で向き合って、小声で返す。壮年の男は恰幅がよく、髭をたっぷり蓄えていた。
「私は役場の者でね。先ほど中央から罪人の逃亡あり、対象は十代の女、とお達しがあったんだ」
「はぁ」
「君がそうと言いたい訳じゃないんだが、見慣れない女の子がいたら確かめなくちゃいけなくてねぇ。君はどこから、何のためにこの街に来たのかな? 一人かい?」
(甘かった……! 情報はもう回ってる……)
最善を考える。連れがいると言って、トキを紹介すれば切り抜けられるだろうか。
(いや、目をつけられてなお、トキが助けてくれる確率は五分と考えるべき……)
ここは悪い方を想定して動かなければいけないと判断し、一人で役人へ向き合った。
「私は、王都の方から、知り合いを訪ねてここに来て」
「知り合いって?」
「ナウファルという酒場の店主に会いに」
「王都、……あそこは今、罪人探しに道を閉ざしてると聞いたが」
「身元を証明できる者がいれば、大丈夫でした」
「それは誰が証明してくれたのかな」
「家族です」
「ふむ……あちらに住んでるのかい?」
「ええ」
冷や汗を背中にかきながら、とにかくつっかえないように、返答していく。
「そうか、分かったよ。色々聞いて悪かったね。ナウファルなら、すぐこの先だ。道は分かってるかい?」
「いえ、この辺りで聞こうと思ってました」
「じゃあ私が案内しよう。念の為、店主にきみと顔見知りだと一言もらったら帰るから」
「……はい」
(目的地言ったらまずかったか……!? 分かんない、でも言わなきゃますます怪しまれたし)
頭を悩ませるも、あの一瞬で選べた最善はこれだった。ひとまず今は、後悔するよりもこれからどうするかだ。この役人は玲奈が具体的な名前を出したことで、一度警戒を解いたようだ。店まで着いていくのは念押しなのか、親切心なのか、微妙なところだ。
「いやあ、王都も物騒なもんだねぇ」
「そうですね、逃亡者とは……兵士たちが今追ってるんでしょうか」
「血眼で探してるようだよ。検問までして、王都は大混乱のようだ。家内は毎週決まった曜日に市場に行くんだけどね、今日は諦めたって愚痴ってたよ」
「へぇ、大変ですね」
「全く、早く収まってほしいもんだ」
「……この街には兵は来てないんですか?」
「ああ。王都から兵士を大量に動かすとなれば直ぐには決められないだろうし、今日明日くらいは徹底的に王都を探すはずだ。兵たちが地方に散らばれば、王都は必然手薄になる」
「ふーん」
(やばい、聞きすぎたかな? このおじさん全然警戒してないからつい)
玲奈は内心、冷や汗をかいた。
王都の市場の活気と比べると少し大人しく感じるが、人は十分通っており、穏やかながらもいい街だった。
(確かに、これだけ人がいると怖いかも……お城の兵はいなそうだけど)
玲奈の気も自然と引き締まった。トキは連立する店を見て、お眼鏡にかなった場所で立ち止まる。
「この酒場で聞く。レナは店の前で待ってろ」
「うん」
トキが店の中へ入るのを見送り、暫く立ち竦んで待つ。すると、いくつかの視線が向いてるのを感じた。そちらに目を向ければ、年配のご婦人二人がヒソヒソと囁きながら、玲奈を睨んでいた。
(っ、なに!? なんか怪しいとこがあるの?)
玲奈は刺激しないように自然と視線を外し、店の中へ体の向きを変える。見た目では判別できないと思っていたが、何かあるのだろうか。ぐるぐる悩んでいると、背後から、男の影がにゅっとさし、シルエットが視線の先に映る。
「お嬢さん、少しお話いいかい」
「っ……! なんでしょう」
動揺を隠せないまま、体を半分捻って、男と半身で向き合って、小声で返す。壮年の男は恰幅がよく、髭をたっぷり蓄えていた。
「私は役場の者でね。先ほど中央から罪人の逃亡あり、対象は十代の女、とお達しがあったんだ」
「はぁ」
「君がそうと言いたい訳じゃないんだが、見慣れない女の子がいたら確かめなくちゃいけなくてねぇ。君はどこから、何のためにこの街に来たのかな? 一人かい?」
(甘かった……! 情報はもう回ってる……)
最善を考える。連れがいると言って、トキを紹介すれば切り抜けられるだろうか。
(いや、目をつけられてなお、トキが助けてくれる確率は五分と考えるべき……)
ここは悪い方を想定して動かなければいけないと判断し、一人で役人へ向き合った。
「私は、王都の方から、知り合いを訪ねてここに来て」
「知り合いって?」
「ナウファルという酒場の店主に会いに」
「王都、……あそこは今、罪人探しに道を閉ざしてると聞いたが」
「身元を証明できる者がいれば、大丈夫でした」
「それは誰が証明してくれたのかな」
「家族です」
「ふむ……あちらに住んでるのかい?」
「ええ」
冷や汗を背中にかきながら、とにかくつっかえないように、返答していく。
「そうか、分かったよ。色々聞いて悪かったね。ナウファルなら、すぐこの先だ。道は分かってるかい?」
「いえ、この辺りで聞こうと思ってました」
「じゃあ私が案内しよう。念の為、店主にきみと顔見知りだと一言もらったら帰るから」
「……はい」
(目的地言ったらまずかったか……!? 分かんない、でも言わなきゃますます怪しまれたし)
頭を悩ませるも、あの一瞬で選べた最善はこれだった。ひとまず今は、後悔するよりもこれからどうするかだ。この役人は玲奈が具体的な名前を出したことで、一度警戒を解いたようだ。店まで着いていくのは念押しなのか、親切心なのか、微妙なところだ。
「いやあ、王都も物騒なもんだねぇ」
「そうですね、逃亡者とは……兵士たちが今追ってるんでしょうか」
「血眼で探してるようだよ。検問までして、王都は大混乱のようだ。家内は毎週決まった曜日に市場に行くんだけどね、今日は諦めたって愚痴ってたよ」
「へぇ、大変ですね」
「全く、早く収まってほしいもんだ」
「……この街には兵は来てないんですか?」
「ああ。王都から兵士を大量に動かすとなれば直ぐには決められないだろうし、今日明日くらいは徹底的に王都を探すはずだ。兵たちが地方に散らばれば、王都は必然手薄になる」
「ふーん」
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玲奈は内心、冷や汗をかいた。
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