どうやら私は破滅の悪女らしい

りらこ

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76話

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「なんて書いてんだ!」
「読める……けど、意味が全く分からない」
「はあ?」
「ただの数字なの! なんかの鍵かも」
「駄目! 土の壁がもうもたない! 火が来る!」

 ナシュカが金切り声を上げた。

「レナ! とりあえず読んでくれっ!」
「えっと、13・22・35・53……」
「暗号か! クソ、解いてる時間が」
「上の文字が手掛かりだろ!」
「これだけじゃ分かんねえ……」
「もう火が見えてる!」

 ナシュカの叫ぶような声に三人がバッと入口を見る。

「やべぇ……」
「俺もナシュカに加勢する!」
「無理よトキ!」

 玲奈は、迫る火を見て、呼吸が荒く上がってきてしまった。

「オイ、大丈夫か!」

 過去球を起こす玲奈に、リュウが声をかける。心配する声が鼓膜を通り抜けていく中、玲奈は時を巻き戻した。




「……扉よ」
「開けた瞬間、襲いかかってくる可能性もある」
「そうね。皆、気を付けて……レナ? 顔が真っ青よ」
「うわ、どうした急に」
「あ、ごめ……」
「何かあったか」

 急ピッチの鼓動を抑えるべく、深呼吸した。

「立ち眩みしちゃって……少し休憩してもいい?」
「それはいいけど、大丈夫?」
「うん、ごめん」

 火が迫っているのを見て、パニック状態のままに時を戻してしまった。落ち着いた所で反芻し始める。

(さっき、踏んでも何ともなかったタイルは覚えてる。あそこだけを辿れば、奥まで行けるはず)

「レナ、落ち着いた?」
「う、ん」
「何があるか分からない。あまり長居せず進もう」

(あの数字の暗号を解いてから入りたいとこだけど、これ以上ここに止まってる説明ができないし……もう、私謎解き苦手なんだよー)

 いったん暗号は忘れ、進む決意をする。

「開けるわよ」

 ナシュカに続いて入ると、先程と全く同じ景色が広がる。

「奥に扉がある」
「……ほんとだ。あそこまで行けってことね」
「さっきの例もある。また小石投げてみるか」
「分かった」
「……何もないようね」
「いや、待って。微妙に床が光って反応した……気がする」
「はあ? なんもなかったぞ。見間違いだろ」

(う)

 玲奈より動体視力の優れたリュウに言われてしまうと、まるで説得力がない。

「いや、私じゃなくてかみなりが」
「ン!」

 かみなりは玲奈に続くように鳴いて、さっきリュウが踏んだ張り付きポイントを前足で示した。

「あそこが特に危ないって!」
「マ! マ!」
「確かに何か言ってんな」
「……かみなりの勘は信じた方が良さそうね」
「何か感じ取ったか」
「踏む場所に気を付けて向こうまで行こう。私がかみなりに教えてもらって先頭歩くから、後ろ逸れないで付いてきて!」

 皆納得してくれ、玲奈が先頭を行く。歩きながら、ふと気付く。
 
(あれ、なんでかみなりはリュウがさっき踏んだとこ知って……)

 腕の中のかみなりを見ると、目が合った。

(……もしかして)

「ンナ」

 かみなりはその思考を肯定するように鳴いた。


 
 玲奈が最初に、無事に扉の前まで付いた。後ろを振り返ると、皆順調だ。一安心し、奥の扉を押す。

「あれ?」
「開かないの?」
「うん」

(さっきはすぐ開いたのに……)

「何か開くための鍵があるはず」
「よし、探すか」

 冷静な三人とは逆に、玲奈は一人険しい顔になった。

(さっきは……リュウとトキがタイルを踏んで、身動きが取れなくなってから扉を開けたんだ。もしかしてそうしないと開かない……? でも、それじゃ、)

 思考する間に、三人は部屋を探し始めた。かみなりに「ここは踏んでいいの?」と聞いている辺り抜かりない。

 そしてタイルを鳴らすこと無く、今度はナシュカが、あの暗号を見つけた。

「上側は分かるけど意味が分からないし、下は何て書いてあるか読めない……」
「……そうだ、もしかしてお前なら、また読めんじゃねえのか?」

 リュウが再び玲奈に暗号洋紙を持ってきた。

「……うん、読める」
「ほんと! 何て?」
「読めるんだけど、意味がある文章じゃない。私の世界の数字記号なの」
「暗号か……」
「まあ、そんな簡単には行かせてもらえねえか」

 暗号を取り出しても、火は上がらない。

(正解パターンを引いたかも……!)

 張り付くタイルを避けて、暗号を解いてドアを開ける……。これなら、ゆっくりと暗号に向かう時間も取れる。玲奈は改めて暗号に向き合った。

 その時、聞きたくなかった音が再び鳴った。

 ――ジリリリリリ!

 玲奈だけでなく、皆体を跳ねさせる。

「何の音?」
「……何か臭うぞ」
「何かって……」
「ックソ! 火だ! 火が迫ってる!」

(っ、そんな、タイルを踏んでなくても火が上がるの……)

 もう少しで手がかりを掴めそうだったという所で。まだ火は見えてなかったが、玲奈は早くも目を瞑った。

 * * *


 三度、扉の入口に立つ。

(駄目だ、火が来ると思うと冷静で居られない)

 過去に火事に遭ったとか、特別トラウマがあるとかいうわけではない。ただ、火と対峙した時にパニック状態になってしまうのを自覚する。あのベルが鳴ると、暗号を考えてる余裕など、飛んでいってしまう。

(そもそも、さっきはタイルは鳴ってなかった。一定時間で火は上がる……? じゃあ、タイルの足止めは何なんだろう……いや、それより暗号を解く方に集中しないと)

 今が勝負だと、頭を回転させる。少しの間、また仮病を使ってここに留めさせてもらった。心配の声を他所に、その場に体育座りして目を閉じ、暗号を思い出した
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