どうやら私は破滅の悪女らしい

りらこ

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81話

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「え……あっ!?」
「レナっ!」
「捕まってんのか!?」
「何だそいつら!」
「えええっ!?」

 玲奈の視界に映ってるのは、見慣れた人の姿のトキ、ナシュカ、リュウだった。言葉も分かる。

「え、っだって、この人たちが三人で」
「何言ってんだお前!」
「どう見ても怪しいじゃない、その鎧!」
「精神を操られてるのか?」
「ええっ」
「ンミャ!」
「あっかみなり!」

 かみなりまでいる。言葉も通じる。見た目も知ってるものだ。

(あっちの皆が本物で、じゃあこの人たちは……?)

 迷宮の魔術なのか。玲奈や皆の名前を知っていたのも、味方のふりをして、どこかへ誘い込むつもりだったのか。そう考える玲奈の肩を、ナシュカだと思っていた鎧ががしっと掴む。

「レナ! �医〓縺ョ縺ャ!」
「え、なに」
「惑わされないで! レナを騙そうとしてるのよ!」
「輔°繧�∪縺溘!」

 今度はトキの鎧が玲奈に詰め寄る。どうしたらいいか分からず、前方の良く知った形のトキに、助けを求めるように視線を向けた。

「そいつらから離れろ! 今に頭ぶっ飛ばされんぞ!」
「i縺ェ縺溘∪繧�↓縺ゅ!」
「痛っ」

 トキに言われるまま、鎧の手から抜け出そうとしたが、力を込められてそれは叶わなかった。

(どうしよう、どうやって向こうに逃げれば)

 玲奈の腕を掴む鎧を見返す。顔はないものの、必死の形相で何かを訴えている。玲奈に危害を加えるようには、見えない。

(でも、こっちが攻撃したら反撃するはず。いやでも、もし鎧が本物のナシュカたちなら、私に攻撃できない)

 むしろ、彼らの姿は、玲奈を守らんとするものだった。どっちが本物なのか。玲奈には分からなかった。

(……分からない、じゃない。自分で確かめないといけないんだ)

 玲奈は拳を握りしめた。 

 じっくりと、人の形をした三人を見回す。仮に偽物だとしたら、姿と形、記憶までも完璧に写しているということになる。そんなこと可能なのだろうか。

(迷宮の力ならできる……それならやっぱり、油断できない)

 固まった玲奈に、人形のリュウが苛立ちに声を上げた。

「何考えこんでんだレナ! さっさと腕取っ払え!」
「そうよレナ! 早くこっちに来て!」
「レナ! 来い!」
「縲後ヨ繧レナ!」
「ュ�√€€縺薙>!」
「レナ、�遺€ヲ窶!」

 四方八方から名前を呼ばれる。魔石が懐で温度を主張する感覚がした。

(……やっぱり)

 
「偽物は、あなた達」

 玲奈は人型の三人とかみなりへ、指指し突きつけた。

「あぁ!?」
「何でそうなる! その鎧のどこが本物に見えるんだ!?」
「リュウの偽物。あなたが原因」
「はあ!? ンっでだ!」
「さっき、あなたは私の名前を呼んだ。でも、本物のリュウには、一度だって呼ばれたことない」
「ああ!? そんなん、たまたまだろ!」
「やっぱり、レナは洗脳されてるんだわ」
 
 そうまくし立てられるも、玲奈は殆ど確信していた。

 出会ってから今に至るまで、リュウは決して三人の名前を呼ばないのだ。名前を呼ぶのが自然な場面でも頑なに呼ばないので、これまでずっと、違和感を覚えていた。 
 
「ヲ螟ァ荳亥、ォ縲√」

 リュウの鎧が静かに、玲奈に何か問いかけた。三人の言動から、玲奈が鎧の彼らを信じたと分かったのだろう。

「こうなったら、実力行使しかない」
「そうね。レナ、先に謝っとくわ」
「自己責任だな」

 三人は敵対姿勢を取る。玲奈は魔石を取り出した。鎧たちも槍を構えた。

 一時いっときの睨み合い……そして、最初に向こう側のリュウが飛び出した。腕を振り上げて襲いかかってくる。

「オラァッ!」

 カキン、と鳴ったのは鎧が拳を受け止めた金属音だ。鎧は無傷なようで、逆に拳を握り込み、リュウの足を払って押し倒した。  

「っ……」
「≠繧後�蛛ス迚」
「ぐあっ!」

 リュウが容赦なく、鎧に殴られる。

(……大丈夫、あれは偽物、偽物……)

 自分が確信した末の選択だが、いざ危害を加えられる所を見ると不安に襲われる。玲奈が動揺し、隙が出来た束の間、目前に人形のトキが現れた。玲奈の顔を掴もうと、トキの腕が伸ばされる。

「ひっ――」
「ゥ縲∝⊃迚ゥ窶!」

 護ってくれたのは、トキの鎧だった。槍で向こうのトキを突き返す。人型の方は素手で槍を弾いている。二人の応酬は激しく、玲奈が助太刀できそうにない。

 一方、二人のナシュカもまた、槍を交えていた。こちらも実力は均衡しているようだ。

 その中で、一つの闘いは早くも決着が着こうとしていた。

「うっ、ぅう……」

 ドゴッ、と鈍い音がして、人型のリュウが力尽きた。同時に、人型と鎧から、シュウ……と煙が上がる。

 煙が晴れると、鎧は消えていて、代わりに一人の男が立っていた。会いたかったその顔に、たまらず駆け寄った。

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