傀儡といしの蜃気楼 ~消えた王女を捜す旅から始まる、夢の世界のものがたり~

遠野月

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悪夢の回廊

鳥群からはじまる

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 それから三人は走りだした。

 どんなに走っても疲労だけはしないので、夢魔におそわれている時以外はずっと走っている。ペルゥは、メリーの肩に乗って休んでいた。別に重いわけでもないし、怖いものが嫌いだと言っていたメリーの気晴らしにもなるようだ。特に何も言わずに、そのまま休ませることにしていた。夢魔がおそってきそうな時だけは誰よりも早く感づくので、今はそれだけで十分だ。

 黒い石畳の道は、上下左右に曲がりくねっているが、急な斜面に見えるところでも、すべり落ちるようなことはなかった。まるで地面に足が吸い付くようで、壁のように垂直の道でも走ることができた。だが重力だけは、常に同じ方向に向いているらしい。壁のように垂直な道を走っている時は、身体全体が何となく下に押されるように感じた。長い髪は重力が向いているであろう方向に垂れ下がるので、気をぬくと滑落してしまうのではないかという恐怖におそわれる。

「こんなところで、夢魔が襲ってきたら嫌ですね」

 垂直の道を走りながら、メリーがこぼすように言った。

「縁起でもないことを……」
「……あ。来るよ」

 ラトスがメリーに返事をする声にかぶせるようにして、メリーの肩の上で休んでいたペルゥが顔をあげながら低い声で言った。
 少し遅れて、先頭を走っていたセウラザも何かに気付いたらしい。背中の大剣を引きぬくと、剣身をこまかく分裂させながら辺りを警戒しはじめた。ラトスも腰の短剣に手をかける。後ろから付いてきていた笑いつづける夢魔の笑い声が、静かな空間に異様なほどひびきわたった。

「上だよ!」

 ペルゥが叫んだ。

「上って、どっちだ!?」
「頭の上!」

 垂直の道を走っていたので、前後と上下の区別が分かりにくい。ペルゥの声を信じて、頭をあげる。そこには、大きな翼をもった鳥のような夢魔が何十も突進してきていた。
 ラトスは伸びる短剣をかまえて、できるかぎり剣身を伸ばした。頭の上からおそいかかってくる鳥のような夢魔の群れに向けて、一文字に薙ぐ。それを避けるようにして、夢魔の群れはふたつに分かれた。いきおいそのままに、石畳の道の下にもぐりこんでいく。

「メリーさん。道の下から顔を出した夢魔は、とにかく躊躇せず斬ってくれ」
「分かりました!」
「反対側は俺が見る。取りこぼしたやつは、セウラザが、たぶんやる」
「たぶんって」

 それで大丈夫ですかと叫びながら、メリーは石畳の道の端に駆けだしていった。
 頭上からおそいかかってきた夢魔は、石畳の道の下にもぐりこんだまま、しばらくでてこなかった。だが、カラスのような鳴き声だけは、無数に足元から聞こえてくる。知能があるのかどうかは知らないが、こちらの隙をうかがっているのかもしれない。
 ラトスはメリーが駆けだしていった方とは逆の、石畳の道の端に走り寄った。そっと、道の下をのぞきこむ。そこからは、夢魔の群れの一部が飛び回っているのが見えた。今にも、こちらに向けて飛びだしてきそうだ。

「来るぞ。セウラザ、行けるか?」
「問題ない」

 こまかく分けた無数の刃を身体の周りに走らせながら、セウラザも道の下をうかがっていた。まるで竜巻のようだと、ラトスは思った。

 三人が道の端で待ちかまえてしばらく後、カラスのような大きな鳴き声がひとつ、ひびきわたった。その鳴き声を合図に、無数の鳴き声が道の底からあがってきた。辺りの空気がふるえだす。

 ラトスは二振りの短剣をかまえて、道の下をのぞいた。数匹、同時に上がってくる。それを目でとらえながら、剣身が伸びる短剣に力を込めた。上がってくる数匹に向けて剣身を伸ばし、横に薙ぎ払う。

 空気を切り裂くような、鋭い音が鳴る。伸びていく剣身が横に払われると、二匹ほど翼が切り裂かれて、薄暗い空間の中で黒い塵になって霧散した。何とか刃を逃れて上がってきた夢魔は、ラトスの姿をとらえて一直線に飛んでくる。それを待ちかまえるようにして、ラトスは黒い短剣を夢魔の頭に突き立てた。

 剣でつらぬかれて動かなくなった鳥のような夢魔の頭は、蝙蝠に似ていた。ラトスは大きな蝙蝠の頭から黒い短剣を引きぬくと、夢魔の身体ははじけるようにして黒い塵となり、霧散した。

 霧散した黒い塵の向こう側から、さらに何匹も夢魔が飛びだしてくるのが見える。そこに向かって、ラトスは何度も伸びる短剣をふった。最初のうちは、単調に払うだけでいくつかの夢魔が切り裂かれていった。しかし、何度も繰り返すうちに、夢魔はラトスの短剣から距離を取りはじめた。それぞれ互いに距離を取り、広範囲からラトスをにらみつけるように飛びはじめる。

「少しはやるようだな」

 広範囲に散った夢魔は、二十はいた。これならば、メリーやセウラザのほうには全体の半数もおそいかかっていないだろう。いつもどおり、夢魔の群れはラトスに釘付けになったようだった。

「多いな……」

 息を大きく、長く吐きだす。
 ラトスは短剣を強くにぎりしめた。黒い短剣が、チリチリと音を鳴らす。にぎる手に、熱が伝わってくる。

 また、カラスのような大きな鳴き声がひとつ、ひびきわたった。
 直後、無数の鳴き声がラトスの周囲で鳴りひびき、耳を押さえたくなるほど空気がふるえた。

 鳴き声と共に、広範囲から同時に夢魔が飛びこんできた。
 ラトスの後ろでは、メリーが道の反対側の夢魔を相手にしている。後ろからおそいかかって来ることはないはずだ。だが、ラトスの真正面から来る夢魔の群れを避けてしまうと、メリーが背後からおそわれる形になってしまう。それだけは避けなければならない。ラトスは正面に向かって短剣の剣身を伸ばし、二度、三度と上下に薙ぎ払った。すると、ラトスの正面からおそいかかってきていた夢魔は、幾匹か切り裂かれて黒い塵と化しながらも、左右に分かれて飛びはじめた。

 幾匹か減っても、右に十、左に十の夢魔がラトスをはさみこむようにして飛びこんでくる。
 ラトスは左右を交互に見ながら、黒い石畳の道に添ってならんでいる柱に走り寄った。左肩を柱に付ける。これで左側からの直撃は避けられる。あとの右側はと思って、ラトスは右からおそいかかってくる夢魔の群れに目をやると、それらはすぐそばにまで飛んできていた。

 ラトスは急いで、伸びる短剣の柄頭側を下に向ける。短剣の柄を一気に伸ばし、黒い石畳に柄頭を打ち付けた。そしてそのまま短剣の柄を伸ばしつづけると、ラトスの身体はいきおいよく飛びあがった。その直後、飛びあがったラトスの足の下に、飛びこんできた夢魔の群れが柱に激突した。激突したいきおいで、幾匹かは黒い塵になった。

 上に飛びあがったラトスは、左肩を軽く柱にこすらせながら上昇し、柱の上に飛び乗った。
 柱の上は、人一人は寝転がれるくらいの広さがあった。そこから下をのぞきこむと、攻撃の対象を見失った左側の夢魔の群れと、柱に激突して統率をみだした右側の夢魔の群れが見えた。

 攻撃の対象を見失っていた左側の夢魔の群れが、先に、柱の上に立つラトスを見つけた。それらは鳴き声をあげながら、バラバラと飛びあがりはじめる。ラトスは柱の上から何度も剣身を伸ばして、薙ぎ払いつづけた。十はいた夢魔が、半数以下まで数が減る。そこまで斬ってから、ラトスは柱の反対側の下をのぞきこんだ。

 右側からおそいかかってきていた夢魔は、いきおいを取りもどして上昇をはじめていた。ラトスは急いで剣身を伸ばすと、飛びあがってくる数匹を同時に切り裂いた。そして右側の夢魔の群れに向かって、柱から飛び降りた。落下しながら、伸びた刃をかろうじて避けた一匹の夢魔の胴を、黒い短剣でつらぬいた。着地する直前、周囲をバタバタと無秩序に飛び出した夢魔を追い払うようにして、伸びた剣身を横に薙ぐ。

 ラトスが黒い石畳に着地すると、ただよっていた黒い塵が舞いあがった。
 頭の高さまで舞いあがった黒い塵の中で、ラトスは短剣をかまえなおした。ぐるりと見回す。右側からおそいかかってきていた夢魔の群れは、三匹ほどになっていた。
 ラトスはそのうちの一匹に狙いを定めて、剣身を伸ばし、夢魔の胴をつらぬいた。つらぬくと同時に、少しはなれたところで体勢を立てなおそうと飛びはじめていた夢魔に飛び掛かる。黒い短剣を下から上へ切りあげ、鳥のような胴から蝙蝠のような頭まで縦に切り裂いた。
 二匹の夢魔が、黒い塵になる。ラトスはいきおいを落とさずに、ぐるりと柱を回った。左側からおそってきていた夢魔の群れを急襲する。

 左側の夢魔の群れは、まだ体勢を立てなおしていなかった。それを見て、ラトスは予想通りだと、内心ニヤリとした。立てなおすにはまだ時間がかかるだろうとふんで、急いで柱の反対側に回ってきたのだ。

 夢魔の群れが同時におそいかかってくるとき、カラスのような大きな鳴き声がひとつ、先にひびいていた。それを合図に群れが動いているようだと、ラトスは気付いていた。

 おそらく群れを統率している強い夢魔がいる。
 そいつがもう一度大きな鳴き声をはなつ前に、搔きみだしきって、できるだけ数を減らす。

 体勢を立てなおしていない夢魔の群れに、ラトスは飛びこんだ。
 剣身を伸ばして、上から二度、素早くふり下ろす。単調な攻撃だったが、一匹の夢魔が逃げ遅れて、黒い塵になった。

 横に飛んで逃げた夢魔を追って、ラトスは伸びた剣身をさらに伸ばしながら横に薙ぎ払った。大きな翼がふたつ切り裂かれて、ふたつの影が黒い塵になって霧散した。

 直後、カラスのような大きな鳴き声がひびきわたった。
 何とか体勢を立てなおそうとバラバラに飛び回っていた夢魔は、カラスのような鳴き声に向かって一斉に頭をあげる。今までのバラバラな動きは何だったのかと思うほどに、同時に上空へ飛びあがった。

 それを目で追いながら、ラトスは顔をあげる。メリーとセウラザが戦っているであろう方向からも数匹、上空に向かって夢魔が飛びあがっていた。

「親玉登場かな」

 見あげながらラトスはそう言うと、道の反対側で戦っていたメリーのところまで走っていった。少しはなれたところにいたセウラザも同じように走ってくる。

「いやー。大健闘だったね!」

 メリーの肩の上で、楽しそうにペルゥが言った。

「まだ終わってないぞ」
「まあねー。でも、何とかなるんじゃない?」

 そう言ってペルゥは、小さな前足を上に向かって伸ばした。その先には、上空に集まった数匹の夢魔と、他よりも二倍ほど身体が大きい鳥のような夢魔がいた。

「あのデカいのさえ叩き落せば、たぶん終わりだ」

 ラトスは他よりも大きい鳥のような夢魔を指差すと、伸びる短剣の剣先を上に向けた。剣身を伸ばしても避けられるかもしれないが、まずは近くまで誘い込まないと戦えない。
 隣に立っていたセウラザはラトスの意図を汲み取ったのか、こまかく分かれた刃をすべて頭上に移動させた。

「行くぞ!」

 ラトスは声を上げると、一気に短剣の剣先を伸ばした。

 できることならば、このまま、あの大きな夢魔をつらぬいてしまいたい。
 鋭い音を辺りにひびかせながら、ラトスの手から剣身が飛ぶように伸びていく。それと同時に、上空からカラスのような大きな鳴き声がひびきわたった。

 大きな夢魔の周りを飛んでいた数匹が、これまでにない速度で三人に向かって飛んでくる。それに合わせるように、セウラザの頭上で待機していた無数のこまかい刃が、上空に向けて広範囲に発射された。

 いきおいをつけて飛んできた夢魔は、セウラザがはなったこまかい刃を避けることができなかった。全身を引き裂かれるようにして千切れ、あっという間に黒い塵となった。

 残された大きな夢魔は、伸びてきたラトスの剣身をすんでのところで避けた。大きく迂回して、ラトスの背後に回りこんでくる。いきおいをつけて飛びだしながら、辺りの空気をふるわせるような鳴き声をはなった。

 上空に向けて短剣を伸ばしたままだったラトスは、突然の空気の振動によってわずかに身体が硬直した。ふり返るのが、少し遅れる。背中からおそわれそうになっているのは分かっていたが、身体が付いてこない。セウラザは、すべての刃を上空に向けてはなっていたはずだ。こちらへの対処は期待できないだろう。

 一か八か。
 狙いを定めずに、背後からおそいかかる夢魔に黒い短剣を突き立てるべきか。そう考えているうちに、ラトスの背後から強い光がはなたれた。

 メリーの剣だ。

 彼女の反撃を、ラトスは計算に入れていなかった。自分の身体より大きい夢魔に対して、メリーが素早く行動できるか分からなかったからだ。まさか盾になるような形で飛びだしてくるとは、思ってもいなかった。

「はああああああ!!」

 メリーが叫ぶ。
 銀色の細剣が、いきおいよく飛んでくる大きな夢魔に向かって伸びた。同時に、強い光が剣身からあふれる。

 もし、すんでのところで避けられたら?  と、メリーは一瞬ひるんだ。
 だが、腕は伸ばしつづけた。

 メリーの身体は、夢魔の体当たりによって吹き飛ばされるかもしれない。だが、ラトスは助かるかもしれない。それに、それ以上、多く、深く考えている時間はなかった。メリーは叫びながら、力いっぱい夢魔に向かって剣を伸ばした。

 次の瞬間、メリーの剣の先に強い手応えを感じた。
 当たったとメリーは一瞬喜んだが、それは束の間だった。剣の先から伝わってくる圧力は、メリーのほそい腕では耐えきれないものになった。

「ああっ! だ、め……」

 光に飲みこまれているはずの夢魔の突進は、止まらない。メリーの腕と肩は、悲鳴をあげた。千切れて、潰れてしまうのではないかと思うほどだった。
 だが、まだ後ろにラトスがいる。避けるわけにはいかなかった。

「ご……めんな……さい、ラ……トスさん! 早く、逃げて!」

 腕と肩が吹き飛ばされそうだと感じて、メリーは泣くような声をこぼしながら最後の力を振り絞ろうとした。
 直後、急に身体が軽くなった。
 ああ吹き飛ばされたんだなとメリーは諦めた気持ちになって、目を閉じようとした。

「待たせたな!」

 ラトスの声が、彼女の耳元でひびいた。
 驚いて、メリーは目を見開いた。すると、自分の腕はまだ前に伸びていた。銀色の細剣をしっかりとにぎっている。剣の光はまだ放たれていて、剣の先にはわずかに圧力がある。

 メリーは声がした方向に、瞳だけを向けた。

 ラトスがいた。
 彼は光に向かって腕を伸ばしていて、その先にいるであろう夢魔に黒い短剣を突き立てていた。

「そろそろ落ちろ!」

 ラトスが叫ぶと同時に、メリーの銀色の細剣から、光があふれた。
 二人が光につつまれると、剣先から伝わってくる夢魔の圧力は徐々に収まっていった。

 ラトスの腕は、メリーが突き立てた細剣のそばに向かって伸びていた。きっとそれが止めになったのだろうと思って、メリーは大きく息を吐きだした。それによって身体の力がぬけたのか、肩と腕に強い痛みを感じた。

「痛っ……くぅ……」

 銀色の細剣から手をはなす。メリーは自分の肩に手を伸ばそうとしたが、腕は動かなかった。まるで人形の腕のようにだらりと垂れ下がっていて、かろうじて指先が少し動く程度となっていた。

「大丈夫か」

 隣にいたラトスがメリーの両肩を支えて、声をかけた。
 ラトスの手が肩に触れた瞬間、強い痛みがメリーの全身を巡った。メリーは歯を食いしばって耐え、顔をゆがませながらラトスに向かってうなずいた。
 そうしてから、メリーは前を見た。そこには、大きな鳥のような夢魔の、姿かたちは残っていなかった。

 メリーの銀色の細剣は、夢魔の背中の一部に突き刺さっていた。そのすぐ隣に、ラトスの黒い短剣も刺さっている。
 夢魔の頭と、背中と翼の一部は、消滅していた。おそらく、身体を失いつつもいきおいに乗せて突進してきていたのだ。黒い塵におおわれはじめている夢魔の残骸は、無残なものだった。

「生きてました……。死んだかと、思いました」
「メリーさん。あんた、あまり無茶するなよな……」

 長く息を吐きだすメリーを見て、ラトスは困った顔を見せながら声をこぼした。そして、いきおいよく突進してきた相手は、横から衝撃を与えると軌道が変えられるのだと教えた。

「なるほど。そうですね……!」
「いや、しかし、無事で良かった」

 そう言って、動けるかとラトスは言い足した。メリーは少し考えてから自分の腕を見て、ダメそうですとラトスに伝えた。メリーの言葉を受けて、ラトスは彼女の身体をしばらくじっと見る。そのようだなと言って、彼女の身体を両腕で抱きあげた。

「うわ……! ちょっと……!?」
「動けるようになったら、自分で走ってくれよ」

 突然抱きあげられてあわてるメリーに、ラトスはため息混じりに言った。少しはなれたところに立っていたセウラザのもとまで走っていく。そこにはペルゥもいて、すでに周囲を警戒してくれているようだった。

「もう夢魔はいないか?」
「うーん。まあ、大丈夫かなー?」
「近くにはいないようだ。今のうちに移動しよう」
「メリーは? 大丈夫ー?」

 ペルゥはラトスに抱きかかえられたメリーの顔をのぞきこむと、心配したように小さく声をかけた。

「だ、大丈夫……です。ラトスさんも、えっと、ちょっと。これは、ちょっと……!」

 ラトスの両腕の上で、メリーは身体を何度もくねらせた。
 腕と足が動かないようなので、思うように暴れられないらしい。その姿は子供のようで、見ていて少し面白かった。

「そうだな。これだと走りづらい」

 身体をくねらせるメリーの身体を見ながら、ラトスは少し考えると、彼女を一度黒い石畳の上に下ろした。それからセウラザに声をかけて手伝わせ、メリーを背中に背負った。腕に力が入らないようなので、セウラザは、メリーのマントを使って、メリーとラトスの身体を縛って簡単に固定した。

「これなら行けるだろう?」
「いいなー。メリー! ボクも乗っても良い?」
「いや。お前は飛べよ」
「そんなー」

 がっかりしたような仕草をして、ペルゥはふらふらと宙に浮く。それを横目に、ラトスはメリーを背負ったまま走りだした。それを見て、セウラザもカチャカチャと甲冑の音を鳴らしながら走りだす。

「あ! 待ってよー!」

 あわててペルゥも二人を追いかけた。
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