13年ぶりに再会したら、元幼馴染に抱かれ、異国の王子に狙われています

雑草

文字の大きさ
19 / 70
第1章 青春期

ヴィクトルの変化

しおりを挟む
 ヴィクトルがそう言い残して去ってから、数日が経った。

カトリーナは、ヴィクトルが自分に絡んでこなくなったことを意識しないふりをしながら、日々の仕事や学園での活動に集中していた。

——それでいい。

ヴィクトルが誰と婚約しようが、何をしようが、もう私には関係ない。
そう言い続けることで、自分に言い聞かせていた。

しかし——ヴィクトルの様子が、あまりにもおかしかった。

ヴィクトル・フォン・ヴァイスハウゼンは、突如として社交界でも学園でも”完璧な公爵令息”を演じ始めた。

今まで、興味がなさそうにしていた社交界の舞踏会にも顔を出し、婚約者と噂される侯爵令嬢と一緒にいる姿を何度も見せつけるように振る舞っている。
学園では、以前のようにカトリーナに絡むこともなく、他の貴族たちとの交流を増やし、冷静に振る舞っていた。

「ヴィクトル様、最近なんだか雰囲気が変わられましたね」
「ええ、以前よりも”公爵家の後継者”としての振る舞いが完璧になったというか……」

学園の貴族たちがそんな噂をする中、カトリーナはただ静かに聞いていた。

(……ヴィクトルが、“完璧な後継者”?)

それが妙に引っかかる。

ヴィクトルは、社交界や学園で「理想的な貴族令息」を演じてはいるものの、どこか違和感があった。

以前は、どれだけ飄々としていても、その内側には“本音”が隠れていた。
けれど、今のヴィクトルは、まるで——

「何も感じていない”ふり”をしている」ようだった。

カトリーナは、それでも気にしないように振る舞い続けた。

彼が誰と婚約しようが、何をしようが、もう自分には関係ないのだから。

——でも。

以前のヴィクトルなら、ここまで”完璧な貴族”を演じることはなかった。
むしろ、そういうものを嫌っていたはず。

それなのに、今のヴィクトルは、まるで”何か”を隠すように、完璧な振る舞いを続けている。

(……何を考えているの?)

自分がヴィクトルを突き放したせい?
私が”どうでもいい”と言ったから?

そんなことを考えてしまう自分が、ひどく嫌だった。

——だって、私はもうヴィクトルに振り回されるつもりなんてなかったはずだから。

カトリーナが、ある日、学園の廊下を歩いていると——

「ああ、ヴィクトル様と侯爵令嬢、本当にお似合いよね」
「ええ、まさに理想の婚約者同士だわ」

そんな噂話が耳に入った。

カトリーナは、それを聞いても表情を変えなかった。

——だけど、心が僅かにざわついた。

(どうでもいい。私は関係ない。)

そう思いながら廊下を進んでいた、その時——

「……お前、まだそんな顔するんだな」

不意に、聞き慣れた声が響いた。

カトリーナが顔を上げると、そこにはヴィクトルが立っていた。

以前のようにからかうような笑みではなく、ただ静かに、淡々と彼女を見つめていた。

「……何のこと?」

カトリーナは、あくまで冷静を装う。

ヴィクトルは、ゆっくりと歩み寄ってくる。

「お前、俺が誰と婚約しようが関係ないって言ってたよな?」

カトリーナは、表情を変えないまま答える。

「ええ」

「なら、なんで今そんな顔してる?」

「……」

カトリーナは何も言わない。

ヴィクトルは、低く笑った。

「お前、本当に何も感じてねぇの?」

「……当然よ」

カトリーナは、淡々と答えた。

ヴィクトルは、それを聞いて目を細めた。

「そうか」

「ええ」

「——だったら、俺が本当に侯爵令嬢と寝たとしても、なんとも思わねぇんだな?」

心臓が、ギュッと痛む。

それでも、カトリーナは微動だにせず答える。

「……ええ、思わないわ」

ヴィクトルは、僅かに息を吐いた。

「……お前、ほんとに頑固だな」

「事実を言っているだけよ」

ヴィクトルは、カトリーナの目をじっと見つめながら——

「——俺、あの女とは何もしてねぇよ」

静かに言った。

カトリーナの表情が、一瞬だけ揺らぐ。

「……何の話?」

「お前、侯爵令嬢に何か言われたんだろ?」

カトリーナは、僅かに眉を寄せる。

ヴィクトルは、薄く笑いながら続けた。

「“もう、キスも性交渉もした”みたいなこと、言われたんだろ?」

カトリーナの指先が、僅かに震えた。

ヴィクトルは、それを見逃さずに目を細める。

「お前、それを信じたのか?」

カトリーナは、僅かに唇を噛む。

——信じた? 信じてない? そんなの、どうでもいいはずだったのに。

「……あんたのことなんて、もう関係ないわ」

ヴィクトルは、少し目を伏せて笑う。

そして、カトリーナの耳元で静かに囁く。

「——お前、俺に嘘つくの下手すぎんだよ」

カトリーナは、それ以上何も言えなかった。

そして、ヴィクトルはゆっくりと背を向け、歩き去っていった。

残されたカトリーナは、ただ静かに、その背中を見つめることしかできなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる

ラム猫
恋愛
 王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています ※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

処理中です...