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第4章 恋と権力の果てに
13年越しの恋の確信
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——夜の静寂が、2人の間に落ちていた。
静かな夜、ヴィクトルの寝室。
窓の外には月が淡く輝き、室内にはかすかな呼吸音だけが漂っていた。
カトリーナは、ベッドの上でシーツを軽く握りながら、ぼんやりと天井を見つめていた。
隣ではヴィクトルが枕に腕を乗せたまま横になり、じっと彼女を見ている。
数時間前まで互いの体温を確かめ合っていた空間は、
今は妙に静かで、落ち着かない。
「……お前、そんな風に無防備にしてると、襲われるぞ?」
低く掠れた声が、背後から響いた。
カトリーナは振り向かずに答える。
「……何度も言ってるけど、あんたにだけは襲われても驚かないわ」
その言葉に、ヴィクトルは微かに口角を上げた。
「ふぅん……つまり、俺が今ここでお前を押し倒しても、文句はないと?」
「……言ってない」
カトリーナが溜め息をつく間に、
ヴィクトルは背後からそっと腕を回した。
「——っ」
腰を引き寄せられ、背中にヴィクトルの体温が伝わる。
彼の吐息が、耳元に落ちた。
「……じゃあ、嫌か?」
「……」
カトリーナは即答できなかった。
嫌か、と問われれば、違うと分かっている。
けれど、「好き」と言葉にするのは、13年前の自分を思い出してしまいそうで、怖かった。
それを察したように、ヴィクトルはゆっくりと腕の力を緩める。
「……本当に、昔から頑固だよな、お前」
「……そんなの、あんたもでしょう」
「まぁな」
ヴィクトルはくつくつと笑う。
そして、カトリーナの顎をそっと持ち上げた。
「じゃあ、これならどうだ?」
そう言った瞬間——
唇が、重なった。
深く、長く、まるで溶け合うような口付け。
初めてではない。
けれど、この13年間の距離を埋めるように、じっくりと確かめ合うようなキスだった。
(……ああ、もう逃げられない)
カトリーナは、自然とヴィクトルのシャツの裾を掴んでいた。
それを感じ取ったヴィクトルが、笑う。
「お前、こういう時だけ素直だよな」
「……うるさい」
「まだ足りないだろ?」
そう言って、再び唇を塞がれる。
ヴィクトルの手が、カトリーナの髪を優しく梳きながら、
背中に沿ってゆっくりと降りていく。
「……13年前、お前に言ったよな?」
「……何を?」
「"お前は、俺のものだ" って」
「……覚えてるわ」
「じゃあ、13年経っても変わらないってこと、そろそろ理解しろ」
「……っ」
カトリーナの胸が、静かに震えた。
「……ねえ」
「ん?」
ヴィクトルの低い声が返る。
彼女は、視線を合わせずに聞いた。
「……じゃあ、私たちって……恋人ってこと?」
その言葉が落ちた瞬間——
ヴィクトルが一瞬だけ、眉を上げた。
次の瞬間、くつくつと低く笑う。
「今さらか?」
「……っ、今さらって何よ」
カトリーナは思わず顔を逸らす。
ヴィクトルは、カトリーナの頬に指を這わせながら、
悪戯っぽく囁いた。
「散々俺に抱かれといて、"恋人"じゃなかったら、どういう関係だと思ってたんだ?」
「……そんなの、わからないから聞いたのよ」
「バカだな、お前。」
ヴィクトルは、カトリーナの顎を軽く持ち上げ、ゆっくりと唇を落とした。
「当たり前だろ」
そう言いながら、もう一度、深く口づける。
「お前は、俺の女だ」
その言葉に、カトリーナは胸が高鳴るのを感じた。
13年前に聞いた言葉。
でも、今はもう疑う余地がない。
「……なら、あんたも私の男ってことでいいわよね」
ふっと笑いながら言うと、
ヴィクトルは少しだけ目を細めた。
「お前、たまに可愛いこと言うよな」
「うるさい」
「でも、そういうとこも好きだ」
「……っ」
またからかわれるのかと思ったが、
ヴィクトルは真剣な眼差しで彼女を見つめていた。
恋人——。
それは、13年前には言えなかった関係。
でも、今度は絶対に離さないと誓える関係。
カトリーナは、ヴィクトルの胸に額を預けながら、
小さく呟いた。
「……私も、好きよ」
ヴィクトルは、一瞬だけ驚いたように目を見開いた。
そして、苦笑しながらカトリーナの腰を引き寄せ、
もう一度唇を重ねた。
「そう言うの、もっと早く言えよ」
「……今言ったでしょ」
「足りねぇ」
ヴィクトルはそう言いながら、
もう一度カトリーナを抱きしめ、深く甘い夜が再び始まる——。
静かな夜、ヴィクトルの寝室。
窓の外には月が淡く輝き、室内にはかすかな呼吸音だけが漂っていた。
カトリーナは、ベッドの上でシーツを軽く握りながら、ぼんやりと天井を見つめていた。
隣ではヴィクトルが枕に腕を乗せたまま横になり、じっと彼女を見ている。
数時間前まで互いの体温を確かめ合っていた空間は、
今は妙に静かで、落ち着かない。
「……お前、そんな風に無防備にしてると、襲われるぞ?」
低く掠れた声が、背後から響いた。
カトリーナは振り向かずに答える。
「……何度も言ってるけど、あんたにだけは襲われても驚かないわ」
その言葉に、ヴィクトルは微かに口角を上げた。
「ふぅん……つまり、俺が今ここでお前を押し倒しても、文句はないと?」
「……言ってない」
カトリーナが溜め息をつく間に、
ヴィクトルは背後からそっと腕を回した。
「——っ」
腰を引き寄せられ、背中にヴィクトルの体温が伝わる。
彼の吐息が、耳元に落ちた。
「……じゃあ、嫌か?」
「……」
カトリーナは即答できなかった。
嫌か、と問われれば、違うと分かっている。
けれど、「好き」と言葉にするのは、13年前の自分を思い出してしまいそうで、怖かった。
それを察したように、ヴィクトルはゆっくりと腕の力を緩める。
「……本当に、昔から頑固だよな、お前」
「……そんなの、あんたもでしょう」
「まぁな」
ヴィクトルはくつくつと笑う。
そして、カトリーナの顎をそっと持ち上げた。
「じゃあ、これならどうだ?」
そう言った瞬間——
唇が、重なった。
深く、長く、まるで溶け合うような口付け。
初めてではない。
けれど、この13年間の距離を埋めるように、じっくりと確かめ合うようなキスだった。
(……ああ、もう逃げられない)
カトリーナは、自然とヴィクトルのシャツの裾を掴んでいた。
それを感じ取ったヴィクトルが、笑う。
「お前、こういう時だけ素直だよな」
「……うるさい」
「まだ足りないだろ?」
そう言って、再び唇を塞がれる。
ヴィクトルの手が、カトリーナの髪を優しく梳きながら、
背中に沿ってゆっくりと降りていく。
「……13年前、お前に言ったよな?」
「……何を?」
「"お前は、俺のものだ" って」
「……覚えてるわ」
「じゃあ、13年経っても変わらないってこと、そろそろ理解しろ」
「……っ」
カトリーナの胸が、静かに震えた。
「……ねえ」
「ん?」
ヴィクトルの低い声が返る。
彼女は、視線を合わせずに聞いた。
「……じゃあ、私たちって……恋人ってこと?」
その言葉が落ちた瞬間——
ヴィクトルが一瞬だけ、眉を上げた。
次の瞬間、くつくつと低く笑う。
「今さらか?」
「……っ、今さらって何よ」
カトリーナは思わず顔を逸らす。
ヴィクトルは、カトリーナの頬に指を這わせながら、
悪戯っぽく囁いた。
「散々俺に抱かれといて、"恋人"じゃなかったら、どういう関係だと思ってたんだ?」
「……そんなの、わからないから聞いたのよ」
「バカだな、お前。」
ヴィクトルは、カトリーナの顎を軽く持ち上げ、ゆっくりと唇を落とした。
「当たり前だろ」
そう言いながら、もう一度、深く口づける。
「お前は、俺の女だ」
その言葉に、カトリーナは胸が高鳴るのを感じた。
13年前に聞いた言葉。
でも、今はもう疑う余地がない。
「……なら、あんたも私の男ってことでいいわよね」
ふっと笑いながら言うと、
ヴィクトルは少しだけ目を細めた。
「お前、たまに可愛いこと言うよな」
「うるさい」
「でも、そういうとこも好きだ」
「……っ」
またからかわれるのかと思ったが、
ヴィクトルは真剣な眼差しで彼女を見つめていた。
恋人——。
それは、13年前には言えなかった関係。
でも、今度は絶対に離さないと誓える関係。
カトリーナは、ヴィクトルの胸に額を預けながら、
小さく呟いた。
「……私も、好きよ」
ヴィクトルは、一瞬だけ驚いたように目を見開いた。
そして、苦笑しながらカトリーナの腰を引き寄せ、
もう一度唇を重ねた。
「そう言うの、もっと早く言えよ」
「……今言ったでしょ」
「足りねぇ」
ヴィクトルはそう言いながら、
もう一度カトリーナを抱きしめ、深く甘い夜が再び始まる——。
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