13年ぶりに再会したら、元幼馴染に抱かれ、異国の王子に狙われています

第4章 恋と権力の果てに

永遠の誓い

——公爵家の庭園に、優しい風が吹き抜ける。  

青々とした木々が揺れ、陽光がカトリーナの黒髪を照らす。  
彼女は、咲き誇る花々の間をゆっくりと歩きながら、  
隣を歩くヴィクトルを一瞥した。  

「……結婚式なんて、本当に必要？」  

「必要に決まってるだろ」  

ヴィクトルは、面倒そうに言いながらも、  
どこか嬉しそうに微笑んでいた。  

「貴族の婚姻は、形を整えるのが大事なんだよ」  

「そんなの、あんたらしくないわね」  

「お前も、俺の"公爵夫人"になるんだから、  
　それなりの覚悟はしとけよ？」  

カトリーナはため息をつきながら、  
ふと、空を見上げた。  

（——思えば、遠回りしたわね）

13年前、沈没した船から異国へ流れ着き、  
そこで生き抜くために商売で成り上がって爵位を得た。  

王子ルイの庇護を受けながらも、  
決して彼に心を許すことはなく——  

そして、再び本国に戻ったとき、  
ヴィクトルと再会した。  

思い出が蘇る。  
学園時代、彼とは常に競い合い、  
時には憎まれ口を叩き合いながらも、  
どこか特別な感情を抱いていた。  

（私はずっと、ゼノンが好きだった）  

その気持ちを自覚するのが遅すぎただけ。

ヴィクトルの方が、ずっと昔から、  
彼女を"自分のもの"だと決めていたのだから。  

「……お前、何考えてる？」
  
ヴィクトルが、隣でじっと彼女を見つめている。  

カトリーナは、少し微笑んだ。  

「あなたのことよ」  

ヴィクトルは、一瞬だけ目を細め、  
そしてふっと笑った。  

「なら、これからもずっと考えてろ」  

そう言って、彼はカトリーナの手を取り、  
指先にそっと口づけを落とした。  

「……誓えよ。これからの人生、俺と共に生きるって」  

カトリーナは、ヴィクトルの琥珀色の瞳を見つめながら、  
ゆっくりと頷いた。  

「……誓うわ」  

彼の手を、しっかりと握る。  

「私は、あなたの妻として、あなたの隣にいる」  

ヴィクトルの目が、微かに揺れた。  

そして、静かに囁いた。  

「……俺も誓う」  

「？」  

「何があっても、お前を守る」  

ヴィクトルの手が、彼女の頬に触れる。  

「——そして、お前を二度と失わない」  

カトリーナは、驚いたように目を瞬かせた。  

（ヴィクトルも、私を失うのが怖かったのね……。）

彼は、13年間ずっと彼女を待っていた。  
そして、今こうして結ばれた。  

だから——  

「ええ」  

カトリーナは、ヴィクトルの首に腕を回し、  
そっと唇を重ねた。  

「——私は、"あんたの女"よ」  

ヴィクトルは目を細め、彼女を強く抱きしめた。  

その夜、公爵家では盛大な婚礼が執り行われる。  
王族すら招かれたその場で、  
ヴィクトルとカトリーナは正式に"夫婦"としての誓いを交わす。  

この瞬間——  

すべての策略、妨害、執着の鎖が解かれ、  
彼らは完全に自由になった。  

——そして、永遠に結ばれた。  

END.










最後まで読んでくださりありがとうございました！