【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

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 新薬の治験は今のところ順調に進んでおります。保存期間はだいたい半年くらいと、既存の回復薬と変わりありません。私の造った物は永久に劣化しませんが。

 薬草の品種改良の結果、環境に左右されない強い薬草が造れました。なので、冬でも育てる事が出来るようになりました。これは、既存のジャガイモとダイコンから『シード継承』させた冬でも、土地を選ばない強い種です。

 量産体制ですが、季節を問わずに収穫できますし、1株から種が最低1つは採れるので、薬草の生育をきちんと管理していれば、あまり減ることは無いという結論に達しました。従来の種より強いので、数日雨が降らなくてもそうそうに枯れる事はありませんよ。

 まぁ、種がなる前に台風や大量発生の魔物の被害など起きてしまっては意味は在りませんが。

 あとは、土地の栄養を沢山消耗するので、畑を休ませ無ければ、他の植物などが影響を受けてしまいます。同じ畑で別の植物を植えては駄目ですね。

 私のこの頑張りで、1年間収穫できる薬草として注目を浴びておりますね。あとグリード第二王子の名声も上がったようですわ。私が婚約者として居られる時間は限られておりますので、せめて私が居なくなっても困らないように、グリード第二王子の名前だけでも売り込みましょう。

 安定供給とまでは行きませんが、既存の回復薬をポーション小と名付けて、今回の新薬をポーション中と名付けて販売する事になりました。私が記憶を取り戻してから、7年が経ちましたので、順調と言えば順調なのでしょう。普通、新薬の開発には十数年かかるらしいので。

 あとは、『シード継承』と『シード改変』を使いこなし研究を重ねる中で、少し特殊な種が出来上がったりもしました。植えて植物にするとちょっと危険な粉が作り出せそうな植物ですが、種のまま口にすると、何でもペラペラと秘密を喋ってしまう、いわゆる自白薬が出来上がってしまいました。魔樹の種ですので、取り扱い注意の植物の種として、叔父様に使用説明書つきで贈りましたよ。先日ドレスを贈って貰いましたので、そのお礼です。貴族社会は闇が深いと言いますし、上手く役立てて頂きましょう。

 さらに月日がすぎ、私が公爵家に帰る回数も少なくなりました。グリード王子の名声が上がったので、王子が我が家に行く必要は無くなった事を告げましたが、グリード王子は『植物魔法』で公爵家のゴーレムメイドのメンテナンスをしているらしいので、定期的にメンテナンスしに行っておられます。

 まぁ、将来私の夫として公爵家に住む予定でしたので間違ってはいませんね。その調子で他家の貴族家のゴーレム達のメンテナンスをして回れば良いのに。グリード王子は何故かそれを嫌がります。

 王族の稼ぎとしては、『植物魔法』持ちは王族のみですので、すべてのゴーレムのメンテナンスを国王陛下と第一王子のアルフォンス様が公務として行っておられます。

 現在、貴族家でゴーレムの居ない家はほとんど在りません。金がないのか? と侮られますから、男爵家でも1本はゴーレムを持っています。

 ゴーレムの維持費として貴族は国にお金を払い、王族はメンテナンスを行うのが先王の時代から取り入れられた集金システムです。もちろんゴーレムの作製も集金システムを考案したのもお母様ですよ。

 私も研究は好きですが、そろそろ本格的に
ゲーム開始に向けて準備をしなければいけません。私が自由になれるまで、あと2年ですからね。

 6年間、研究所で学んだ知識は無駄にはしていません。私はゴーレムの種をも改良に改良を重ねました。ついでに言うと、ゲーム終盤で手に入っていたスキル『キメラシード』を手に入れましたわ。これはお母様も持っていたスキルのようですね。

 このスキルの凄い所は、植物に行動性を持たせる事が出来るようになりますのよ。このスキルのおかげでお母様はゴーレムに詳細な動きを設定できたのです! スキルの性能がスゴすぎます。

 と言うわけで、私が造ったゴーレムさんは、テーブル程の大きさの箱形の蜘蛛さんです。箱に荷物を収納し、それを運んで貰うためのゴーレムさんですよ。ちなみに箱の部分は取り外し可能で、蜘蛛らしい足の生えた部分が本体です。箱は別に用意しております。

 私は、新薬の共同開発者の一覧に名前をつらねておりますので、定期的にお金が入るようになりました。そのお金で、地下で役に立ちそうな魔法具などを買い込みました。なんだか引っ越しの準備をしているようでとても楽しいですね。

 時期は速いですが、SS級ダンジョンに繋がる渓谷へ下見に行きました。もちろん護衛騎士を叔父様にお借りしております。
 渓谷には、鉄製のつり橋が亀裂を横断する形で張られています。

 大きな亀裂を横断する手すりなしの鉄橋ですよ。前世で見かけたバンジージャンプが出来そうですね。下が見えない恐怖がありますよ。アトラクションとして考案されたとしても、私は絶対にしませんけどね。

 何代か前の王政では、ここで大罪人の処刑を行っていたという記述が看板には書かれておりますね。もちろん橋の中央へは立ち入り禁止のロープが張ってありますので行くことは出来ませんよ。

 私は、献花を行う様に、即席の花束を造り出して渓谷に投げ入れました。ひっそり花束に仕込んだ種は見つからない様に、祈りを捧げます。この行動を、私は計30回ほど繰り返しました。しばらくして、渓谷の花姫という異名が私についておりました。

 渓谷で亡くなった者達に祈りを捧げる私の姿が絵画になって市場で出回っていたりと、不思議な事が起こっています。こんな骨女の姿絵、誰が喜ぶというのでしょうね。幼少期の栄養失調は、なかなか私を本来の年齢へと成長させてはくれません。食べ物に困らなくなりましたが、量が入らないので、体型はガリガリ気味ですハイ。

 話が脱線しましたが、渓谷でのそんな私の作戦が項を成し、渓谷の絶壁の所々には花が咲き乱れ、観光客の人数も増えたようですね。

 ある日、私は蜘蛛ゴーレムと一緒に渓谷へと向かいました。その数は4本です。新しい荷物運び用のゴーレムとして貴族への売り込みついでに、私の地下で使う道具の入った箱を運ばせます。渓谷には貴族の観光客も一般の観光客も多く居るので、怪しい動きは出来ません……が、ここに来ている観光客のほとんどは、私の恒例の行動を見に来ているのですよ。

 私は持ち前の主人公スキルを駆使して、いつもの献花のあと、祈りのポーズを行います。美しく見える演出の『風魔法』で花束と花弁を飛ばし、民衆の注目を集めている隙に、1本の蜘蛛ゴーレムを地下へと向かわせます。地下へと到着したら、そのまま待機を命じますよ。箱の護衛にもなりますからね。

 さらに別日に2本の蜘蛛ゴーレムを地下へと送ったら、私の目的はほぼ完了したと言っても良いでしょうね!



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