【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

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※とある護衛騎士フレデリックのお話・続。


 国王陛下が、テュティリア様を守る手段として家庭教師と共に取っていた手段は第二王子の婚約者にする事でした。

 第二王子グリード様は、王家の色を持たぬどころか、王家しか使えない筈の『植物魔法』を扱えませんでした。

 王家の魔法は特別で、王家がその地位に居るにたる魔法とでも言いましょうか。

 『植物魔法』は、フィアレス建国時に大地の神ガイアとの契約の証しと言われております。この話は平民でも庶民向けの絵本や小説にもなっている有名な話ですが、陛下は国の危機が迫った時に、ガイアの遺産と呼ばれる王家しか扱えない古代魔法具を扱うのに、『植物魔法』が必要なのだと仰いましたので、ほぼ実話なのだと言っておられました。

 もちろん王家の色をもつアルフォンス様も、テュティリア様も『植物魔法』を扱えます。しかし、王族で在りながらも、『植物魔法』を扱えないグリード様のお立場はとても不安定なものでした。

 王家の公務には、シルヴィア様が残した植物ゴーレムのメンテナンスに加え、古代遺産の魔法具に魔力を注ぐ物も在りましたから、王家の血を引いておられないグリード様には任せられない仕事でした。

 そんなグリード様は、もともとの荒い性格を利用し、様に周囲には思われていました。

 血が繋がっていなくとも、陛下はグリード様を7年も息子として育て、グリード様も陛下を父と慕っていましたので、情はもちろん在りましょう。

 そんなグリード様の不安定な立場を安定させるため、陛下はテュティリア様との婚約を結ばせました。グリード様との月1の茶会で親睦を深めさせる名目で、王宮へとテュティリア様を招待し、テュティリア様の様子や成長具合を陛下は見守っておられました。

 私はこの頃から、勅命としてテュティリア様の王都と公爵領との護衛騎士としてテュティリア様を陰ながら守らせて頂いておりました。

 正直に申しますと、最初のテュティリア様の印象は子供らしくない大人しい方でした。 青白い顔色に、無理やり化粧で大人びせ、痩せ細った体型をふんわりとしたドレスでカバーしている印象でした。毎月のドレスも全く同じデザインのもので、こだわりが無い方なのだと最初は勘違いしておりました。

 実際には、ホーエンハーム公爵家に嫁ぎ、仮の公爵位を手に入れたあの男は、公邸の離宮にテュティリア様を閉じ込め、育児放棄をし、十分な食事さえも与えては居ませんでしたし、それだけではなく、テュティリア様に当てられていた時期公女への配当金は王族に当てられるお金も含まれていましたが、それらは全て、あの男が着服し、あろうことか公女に贈られた装飾までも愛人とその子供が身に付けていました。

 毎年の誕生日にテュティリア様へと贈られていた陛下のプレゼントさえも、愛人の子供が我が物顔で受け取っていたのです。

 これらの実証を陛下は確実に集め、テュティリア様が18歳になられたさいに、元男爵の男とその愛人、その娘に着服の証拠を叩き付けて、捕らえる算段でした。

 すぐにでも証拠を突き付けて捕まえても良いと思われていましたが、テュティリア様が自由にできる時間は結局18歳までですので、それまでは陛下はテュティリア様の自由な姿を見ていたいのだと申されました。

 月日は流れ、テュティリア様が7歳になられてからは、薬草管理センターへと出向くようになり、テュティリア様の顔色も明るく、なりました。

 最近では、王族の色と血を強く受け継ぐテュティリア様がグリード様の変わりに王族の課題をこなし、グリード様の王族としての評価も安定しておられました。

 テュティリア様が何事もなく18歳の時を迎えれば、大公女としてテュティリア様が公爵家を継ぎ、グリード様をテュティリア様の元に婿入りさせて、あとはテュティリア様の名前だけの父親とその愛人と子供を追い出すだけでした。


 ーーしかし、私の目の前で、お守りするべきお方は空中に投げ出され、全てを受け入れた様な顔で、穏やかに落ちて行かれます。

 私は必死に手を伸ばし、テュティリア様を追いかけようとしましたが、仲間であるもう一人の騎士に止められてしまいました。

「テュティリア様ーーー!!」






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