【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。

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「おかしいだと!? 学園に関係ない部外者が知ったような口をきくな! そもそも貴様は何者だ!?」

 両陛下と一緒に中央へと近づく魔王デルタロスと天ノ川に指を突き付けるバルトラに、両陛下は顔を赤くした。

「バルトラ! 賓客になんて口をきくのですか!」

 王妃様の言葉に、一瞬キョトンとした表情のバルトラは、外交パーティーでも見覚えのあったであろう魔王デルタロスの顔を食い入る様に見てから青ざめた。

「ま、まさか……魔王陛下……」

「なんだ。俺の顔を覚えてるくらいの記憶力はあるんだな」

 屈辱的な言葉を言われたバルトラは顔を赤くしたが、それよりも速く自分の腕から滑り抜けたミュトに唖然とした。

「あ~ん! デルタさまぁ~! 私を迎えに来て下さったんですかぁ~」

 媚びた声で魔王デルタロスへとすり寄るミュトの奇っ怪な行動に、会場にいた人間の全ての注目を集めた。

「ミュト……?」

 しかし、スルリとミュトを避ける魔王デルタロス。

「触るな。殺すぞ……」

「え……」

 魔王デルタロスの殺気を受けて、ミュトは固まり、そんなミュトを素早くバルトラは引き寄せた。

「わたくしの旦那様に色目を使わないでくださる?」

 天ノ川がデルタロスの腕に絡まる姿に、ミュトは大きく目を見開いた。

「なっ……う、嘘よ! 今のデルタさまには奥さんは居ないはずよ!」

 いろいろとボロが出始めたミュトを無視して、デルタロスと天ノ川は、王子バルトラへと視線を向けて口を開いた。

「さて、王子バルトラよ。今さっき君達がアーリア嬢が学園で行ったと言う悪行について反論させてもらいたい」

「なっ……何故、他国の王であるデルタロス陛下が、アーリアの肩を持つと言うのですか!?」

「それは、我が愛する妻が、アーリア嬢に世話になったからだ」

 魔王デルタロスの紹介で挨拶を交わした天ノ川は、アーリアとジルベルトを自分の近くへと呼んで、並ばせた。見る目がある者ならばアーリアと天ノ川のお揃いのドレスに察しはつく事だった。

「ここからは、わたくしが説明させて頂くわねーー」

 天ノ川は、王子達が言ったアーリアの悪行の数々を、王妃様を交えて全て論破した。

「ーーさらに、わたくしとアーリアちゃんが身に付けているこの髪飾りは一緒に摘みに魔王城に行ったりもしたわ」

「嘘よ!」

「嘘では無いわ。何なら、記憶を覗く魔道具でも使う? この国にもあるでしょう? もしくは、そちらが既に用意しているのでは無いかしら?」

 この天ノ川の言葉に、顔色を悪くしたのはミュトのみで、王子バルトラと騎士家子息レナードと侯爵家子息マティウスは頷いた。

 本来は、ミュトの記憶を証明するための物で、アーリアに使う予定では無かったが、アーリアの記憶に学園でミュトを虐める記憶が有ると信じる3人は、笑みを浮かべた。

「や、やめてっ! 止めてよ! 3人とも!」

 止める様に告げるミュトを抑え、マティウスに差し出された水晶に手を差し出すアーリア。水晶から浮かび上がる光が、空中に巨大なスクリーン画面を浮かび上がらせた。

 360度、全方位から映し出された映像には、アーリアの入学式からの映像が映されていた。初日は、3年間の登校免除を学園長と話し合う場面と、執務机での過酷な労働風景。
 入学式以降、王宮と寮部屋を往復する日々が映されており、3年生までは代わり映えのしない映像のみで、ミュトが編入してくる3年生になって直ぐには、学園早期卒業試験を受ける場面に、過労で体調を崩す様子や、さらに公爵領にて静養する姿。(※プライバシーを侵害する映像は意図的に外されている)

 さらに公爵領での静養中に、温泉旅行と称してやって来ていた魔王夫妻を公爵邸にて、もてなす場面がほとんどであった。
 魔王夫妻を公爵領でのもてなしのお礼にと、魔王国の城に10日間の滞在映像と花を摘む姿も、もちろん含まれていた。帰国後、バルトラの母である王妃との週3日のお茶会も映されていた。

「ね?」

「そんなの偽造よ!」

「「「えっ!?」」」

 ミュトの言葉に、声が揃ったバルトラ達。その表情は何を言い出すのかという困惑の表情であった。何せ、この魔道具を用意したのはミュト本人だったからだ。

「偽造と言うのは、あなた自身の事でしょう?」

 ニッコリと微笑む天ノ川に、ミュトは視線を鋭くした。

「なっ……ふ、ふざけないで! デルタさまに色目使っておいて、何様のつもりよ! こんな展開じゃなかったのに、バグってる原因はあんたね! 消えなさい!」

 ミュトが向けた手のひらから、眩い赤い魔力の渦が、天ノ川へと放たれたーーー

 ーーーが、天ノ川はそれを掲げた手でくるくると纏め上げて、そのままミュトへと放し返した。

「なっ……!? ぎゃばばばばばば!!」

 女性としては、出してはいけない声をあげて、ミュトは魔力の渦に囚われた。近衛兵がミュトを取り囲み、国王と王妃を守る様に動く。

 魔力の渦が収まり、その余波は以外にも周囲には何も影響は無かったが、バルトラもレナードもマティウスも、顔色悪くミュトから後ずさった。

 ミュトが助けを求める様に3人の方へ伸ばしたその手は、枯れ枝のように細りシワだらけで、さらにシミが斑点の様に広がっていた。

「ミュ……ミュト……?」

 バルトラの声に、勢いよく顔を上げたミュトは、骨と皮のみの顔から、ギョロリとした今にも零れ落ちそうな瞳でバルトラに詰め寄った。

「な゛ん゛で   よ゛ぉ! 庇っで、ぐ れ゛ な゛ がっ だ の゛ぉ!」

「ヒィイィイ!! 離れろ化け物め!!」

 バルトラは豹変したミュトの姿に恐怖し、ミュトを突き飛ばした。老婆の姿へと変貌したミュトは、軽すぎる体重のせいで、滑るように転がった。

「ぎゃあ゛ぁ!」

 ミュトの異常な姿に、会場にいた貴族達全員が恐怖した。近衛兵達も、誰一人、声すら出せずにいた。

 そんな沈黙を破ったのは、魔王デルタロスだけだった。

「醜いな……。俺はこんな奴に人生を玩ばれてたんだな」

「ご ん゛な゛……は ず じゃ……」

 倒れたミュトに、天ノ川は近づいた。

「もうここまでよ。貴女は干渉し過ぎたの。その報いを受ける時が来たのよ」

「な゛に゛をぉ……」

「まだ解らない? 貴女の見守神としての役目は、もうここで終了よ」

 天ノ川の言葉で、ミュトは零れ落ちそうな程に目を見開いた。

「い゛や だ! い゛や だ! い゛や だ! い゛や だ あ゛あぁああぁぁ!!」

 天ノ川が指を軽く鳴らすと、ミュトから眩しい程の虹色の魔力の靄が噴き出した。それと同時にミュトはますます老け込んで行く。最後にミュトが蹲っていた場所が、強く光ると、バルトラがミュトに贈ったパーティドレスだけが、その場に残されていた。





 アーリアは、あっけなくヒロイン見守神の撃退が成された事に、安心感や驚きや拍子抜けやらと様々な感情が涙となって零れ落ちた。
 精神的にも疲れていたのであろう、緊張していた体から力が抜けてへにゃりとヨロめいた。
 すかさず、側に寄り添っていたジルベルトがその体を支える。

「終わった……の、ですね……」

 ジルベルトにのみ聞き取れたアーリアの声は、感無量の想いさえ滲み出ていた。

 破滅を避ける為、国から脱出し、家族を捨てる覚悟すら一時期は抱いていたアーリア。 しかし、逃げられないと理解し、何をしても無駄なのだと全てを諦め、それでも破滅するその時までは、素直になろうと自分の気持ちをジルベルトへと、告げていた。

 今や、婚約が破棄されたアーリアに、この国での社交界に居場所はない。例え、王子バルトラの浮気気の迷いであっても、浮気相手であるミュトが化け物で、その存在に惑わされただけだったとしても、貴族が大勢いる場所で宣言してしまった言葉は取り消せない。

 この後、張り摘めていた気が途切れたアーリアは気を失った。

 パーティーはもちろん中止になった。取り仕切っていたのは魔王デルタロスで、ピタリンド国王との間で密談が設けられていた。

 バルトラ達3人は化け物に魅了された挙げ句、公爵令嬢に冤罪をかけたことにより、近衛兵にその場で取り押さえられた。

 アーリアが目覚めたのは、卒業式から2日後の事であった。

 目覚めたアーリアに、告げられたのは、全てが終わった後の話で、告げられた内容は、バルトラは王位継承権の剥奪に咎棟への幽閉。現在は、7歳のバルトラの従兄弟レイバスを時期王太子として教育中との事。他2人のレナード、マティウスは廃嫡の末、修道僧送りになったという事だった。



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