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6、終わり

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ーー3年後。


 『乙女ゲーム』から解放されたアーリアは、ジルベルトとの約束通りに比較的安全な周辺諸国を観光していた。

 アーリアの目の前には辺り一面が透き通ったアクアマリンの湖。太陽の光が湖面を照らした、まるで星の川のような光景が広がっている。穏やかな流れに乗って観光遊覧船の姿がちらほら浮かんでいた。

 湖を見つめながらも、アーリアは隣で同じく湖を見つめるへ視線を向けた。

(ジルが隣にいる……。私、幸せすぎてバチが当たりそう)

 そんな事を考えていたアーリアの視線に気づいたジルベルトは、銀色の目元を細めてアーリアの頬に触れた。

「幸せ過ぎて、神の怒りに触れそうだ」

「天ノ川様は応援して下さいましたわ」

「……ふっ……そうでしたね」

 同じことを考えていたのだと、嬉しくなったアーリアは、ジルベルトの手に自分の左手を重ねた。左手の薬指には、ジルベルトとお揃いの指輪が輝いている。

 アーリアがジルベルトとの婚姻に漕ぎ着けられたのは、卒業式の日に大勢の貴族の前で放映されたアーリアの記憶のおかげとも言えた。

 王子の婚約者とは言え、立太子していないバルトラの婚約者という立場のアーリアは、ただの公爵令嬢であり、携わらせても良い書類は少ない筈だった。
 つまり、王太子妃になっていないアーリアが本来ならば、しなくても良い政務内容を、アーリアは一人でこなしていた。それは、あまりに多すぎる量であった。

 睡眠時間を削ってのバルトラ王子の領の嘆願書の精査に、王子領の収支計算書類に必要経費や備品、備蓄に至るまで、これらは本来ならば王子とその側近が手分けして行うべき書類を、アーリアは婚約者というだけで、王妃とバルトラに強制されていた。王宮に勤める文官ですら、アーリアの3分の1程度の仕事量だというのに。

 ずっと一人で全てやっていたとしたら、1日で終わる訳がない。嘆願書は日に日に増えるし、問題も日を追う毎に増えるものだからだ。これでは体調を壊すのも当たり前であった。

 ピタリンドの国王は、これらの指摘を他国の王族である魔王デルタロスに弱味として握られ、さらに卒業式での事件も天ノ川の活躍で解決したのだからと、アーリアが目覚めた後、アーリアを利用されないように、アーリアの後ろ楯になった。

 そして、アーリアが目覚めたのち、今までの重労働の見返りとして、叶えられる範囲でのアーリアの願いをきくという破格の条件を手に入れたのだ。

 もちろん、アーリアの両親、テンバーン公爵夫妻以外は必死に引き留めたが、アーリアはジルベルトと共にピタリンド国を出ることを決意した瞬間でもあった。

「次は俺の故郷の国ですね」

「魔王様と天ノ川様に会うのが、楽しみだわ」

「そうですね」

 アーリアは、急に真剣な表情になったジルベルトに視線を向ける。

「……アーリア、一生あなただけを愛します」

「ふふっ……わたくしも、ジルを愛し続けるわ……ぁっ……」

 アーリアは重なった手を引き寄せられた。あっという間にジルベルトに横抱きにされる。腕をジルベルトの首に回したアーリア。お互いに見つめ会い、近づき、重なる唇。

 甘い口づけを交わし、微笑み会う。

「そろそろ向かいましょう」

「ええ!」

 この幸せが、永遠に続くのを願ってーーー。


END

◆ーーーーーーーーーーー◆


お読み下さりありがとうございました。

次の作品で、また会いましょう!




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