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第一章

1の14 不思議な事態

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「スメルト、今、ブルーフィンの第二王子殿下を『イケメンでカッコイイ』って言ったよね?
何で?」

「はぁ!?
何でって、イケメンでカッコイイじゃない!
アンタ、頭と顔とスタイルと性格だけじゃなくて目も悪いワケ!?」

「殿下はあなたの美意識から完全にアウトよね?
10年以上も私にガアガア言い続けて来た美醜の判断基準はどうしたの?
金色メッシュが入った美しいオレンジ色の真っ直ぐな髪!
チョコレート色の瞳!
男女ともにガッシリとした骨太の体躯!
金色の輝くような美しい肌!
それが普通で美しくて、そこから外れていれば『醜い』んでしょう?
殿下は筋肉質の様だけど、ガッシリ系じゃなくてスラリとした長身。
アイスグリーンの髪にミントグリーンの瞳。
肌は私と同じ様な白。
――何で?
私はバケモノなのに、何で殿下はイケメンてなるの?」

「そッ、ソレはッ!
え~と、え~と、え?
だって‥‥ブツブツ
い、いいのよ!
男はいいのッ!
だってカッコイイって思うもん!」

「うわー、最低‥‥」



こんな場だけど思った事を思ったまま言ってしまった。

と、近付いて来ていたスメルトの護衛騎士が憤怒の表情で私を睨み剣に手をかけ、



「貴様ッ!
我が姫を侮辱するとは許せん!」



そう叫んで剣を抜――


ザザザッ!
ビュビュビュッ!


――抜けなかった。



6人のブルーフィンの騎士達が目にもとまらぬ速さで駆け寄り剣を抜き、

スメルトの護衛騎士を取り囲んでビュビュビュッ!とその刃を向けたのだ。



何という、不思議な。



自国の騎士から剣を抜かれそうになり。

他国の騎士に守られている。



「ぐっ、ぐぅっ!?」



剣に手を掛けたまま抜く事の出来ないスメルトの護衛騎士。

明らかに自分とは次元の違う鍛え上げられた真の騎士6人にグルリと囲まれヒタリと刃を向けられて身動きが出来ない様子。


‥‥軽く言っとくか。



「あら。
スメルトご自慢の護衛騎士は案外なのね。
威勢がいいのは武器を持たない子供わたくしに対してだけだなんて」

「ぐっ!
な、何をッ
バケモノのクセに‥‥
《ザッ!》
ヒッ!?」



私を睨みつけながら低い声で怒鳴るスメルトの護衛騎士が高音の悲鳴を上げる。

ブルーフィンの騎士達がさらに一歩詰め寄ると同時に刃もその分近付いたのだ。

ほんの少しの身じろぎで流血必至の位置まで。



「‥あ‥‥あ‥‥」

【我が想い人シレーヌ姫に危害を加える者は即刻首を刎ねる。
暴言も同様だ。
王家の騎士であろうが、王家そのものであろうが、だ。
例外は無い。
心せよ!】
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