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第二章

2の01 三年後 1

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シレーヌがブルーフィン王国の離宮に拉‥‥

‥‥連れて来られてから約3年。


シレーヌはもうすぐ16才の15才。


(よくも発狂もせずに生きてこれたものだと感心して欲しい‥‥
何とこの約3年の間、一度もこの離宮から出してもらえなかった。
『宮殿敷地内を散歩するだけでいいから』と頼んでも、許可が出なかった。
もう、コレって虐待って言っていいんじゃないの?
しかもバカみたいに孤独!)


知り合いが一人もいない国へ来たのだから孤独は当たり前?

いやいや、約3年も過ごせば親友とは言わなくても、例えば侍女でも気心が知れた関係になるものだが‥‥

シレーヌに異常に執着する第二王子フラットがシレーヌの孤独を小まめにアップデートしているのだ。


シレーヌを独占する為に。


シレーヌを孤独にしたいわけではなく、他の誰にも見つけられたくないのだ。

特に最高権力者であり病的女好きの父、国王陛下には。


フラット自身、まだシレーヌの心を手に入れていない事を考えれば、シレーヌをガチガチに囲い込むのは悪手でしかないが、それでもフラットは止まれなかった。


まず、シレーヌが一度でも顔を合わせた事のある男は全て地方へ飛ばされた。

例外は第二王子の側近であるが、彼もいつ飛ばされるか分からない。

そういえば、シレーヌが知る最初の側近――

ラメール王国に随行していた側近はいつの間にかどこかへ飛ばされた様だ。

理由はシレーヌの足を見て赤面していただの何のと言っていた様な気がする‥‥

‥‥え!?

何のこっちゃかシレーヌは覚えていないが、足!?

うん、覚えていないが、離宮で暮らし始めて一月もしない内に別の――今の側近になっていたっけ。

第二王子は側近の数を増やし、今の側近もいつでも飛ばせる状態を作っている。

彼以外の新側近はシレーヌに会わせていない。


次に、シレーヌが侍女と仲良くなると、侍女総入れ替えを実施した。

最近では仲良くなる前に総入れ替えする。

侍女だけでなく、離宮で働く者全員、3ヶ月ごとに総入れ替えするのである。


シレーヌが交流を求めた第二王子の従姉のモーレイ嬢は完全に出禁となった。


そしてシレーヌを訪ねるのは第二王子のみ。
(側近は居ても居ないものとする)


いや、最初の数か月は家庭教師(もちろん女性)が来ていた。

だが、『優秀な姫にはもう御教え出来る事はございません』

と言ったとか言わされたかで、来なくなってしまった。


ラメール王国との手紙のやり取りも出来ていない。

国王、王太子、義妹スメルトにはもう用は無い。

だが、もう一人の妹と弟二人は可愛かった。

元気でやっているのか心配だ。

良くしてくれた侍女や友達とも交流を続けたい。

最初の頃は熱心に手紙を出していたシレーヌだが、一通も返事が来ないので、


『これはおかしい。
自分が書いた手紙は届けられていないし、島からの手紙は隠されている』


と気付き、それからは手紙を書くのをやめた。


(くッ‥‥小さい妹や弟たち、それに侍女や友達に会いたい。
‥‥会えないのは分かってるけど、話したい。
手紙でのやり取りも許されないなんて)



挫けそうになると鏡を見る。
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